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Vol.6 - 孤独というチャンス


最近、喧嘩することが多い。
子供を持った男というのは丸くなるものというのが定説だが、僕はまったく逆。
怒る。
爆発的に怒る。
街で。
酒場で。
本当につかみかからんが如く怒る。

何故なんだろう?とよく考える。
そしてこういう結論を出した。

"子供を持つことによって人生に対してようやく本気で真面目になったから"

最近、こんなことがあった。
ある日の夜中2時くらい。
酒を飲んだ帰り道、僕はタクシーを探しさまよっていた。
そして見かけた光景。
ギターを持った若者二人。
傍らには倒れるようにしてダンボール上で寝ている浮浪者たち。
若者二人はその暑さにやられて死にそうな顔をして倒れている浮浪者のそばで、平気でギターをかき鳴らす。
浮浪者という人間の存在をまったく無視してかき鳴らす。
お前なんか眠れようと眠れまいと俺達には関係ねえよとかき鳴らす。
そしてこう歌う。
「僕は人に優しくなりたいから〜」

僕はその歌詞に脱力するとともに怒りを覚えた。
そのあまりの未熟ぶりに、そして浮浪者という人間のことを思いやることのできない、そのあまりの無感覚ぶりに。
僕も同じストリートで音楽をやる立場としてそのあまりのマナー違反に絶句した。
僕は素直にこの若者たちは間違っていると思った。
だからその思いをぶつけた。
その怒りをぶつけた。
言葉でお前達は間違っていると若者二人に近づき真剣に告げた。

最初、若者たちはキョトンとしていた。
でも次第に僕の怒りが伝わったようで、次第に青ざめた顔になっていった。
そして意味を理解したようだった。
そして演奏をやめて去っていった。

僕の怒りや行動が正しいかどうかなんてどうでもいい。
ただ大事なことは怒り、そして声に出すことだと思う。
それは全ての生活において。
真剣に生きるために。



****************



17歳の頃、僕は孤独という病に冒されていた気がする。
そしてこの病のやっかいなところは、本当は孤独で無いのに自分は孤独だと思いこむこと。
これは相当にやっかいだ。
僕は風が吹いても自分は孤独。
他人が僕を見る目が今日は変だったから自分は孤独。
バイト先で何かうまく話せなかったから孤独。
そんな具合に世の中すべてのものに孤独のエッセンスを見出していた。

そしてそんな思いに夜中チューハイかなんかを飲みながら浸り、好きなミュージシャンの音やインタビュー記事に救いを求め、泣いていたりした。

この頃のことは本当によく覚えていて、また本当に辛かったのを覚えている。
こういう思いをしている子っていつの時代にも必ずいると思う。
流行廃りは関係なくて必ず存在するものだと思う。
今でも街を歩くとき、あの頃の僕と同じ瞳の色をしている子を見つけるときがある。
恐ろしいまでにストイックで透明な瞳をしている。
そしてささくれだった繊細な神経をあらわす荒れた肌。
孤独病で食事もろくに取れず、酒やシンナーに溺れたがゆえの血色の悪さ。
目つき。

よく「俺って孤独だからさー、とか私って孤独―!」
みたいなことを暇さえあればいう子がいる。
でも、こういう子は本当は孤独なんかじゃない。
(※だいいち自分って孤独―!って友達に言うのってその時点で孤独でもなんでもないじゃん。)
本当に孤独を感じている子は自分のことを孤独とは言わない。
なぜなら言ってしまったら最後、自分の存在が終わってしまうような気がするから。
自分の孤独が真実になって死ぬしかないような気がしてしまうから。
だから誰にも言わない。
親なんかには当たり前で言わない。
そして一人で泣きながら空を見上げる。

孤独病にかかっていた時、僕はよく深夜のラジオを聞いていた。
(※その頃のおかげで深夜ラジオは今でも大好き。週に3回くらいは必ず聞く。)
その深夜ラジオ番組の中の一つに"ビートたけしのオールナイトニッポン"があった。
そしてこの番組上のビートたけしの言葉に救われたことがあった。
それはこういう内容のもの、

「孤独を感じるということ、友達がいないということには、理由がある。それは感受性が人より強いということだし、想像力が豊かだということもできる。そしてそれは将来的に必ずチャンスに変わる」

この言葉に僕は本当に救われた。
そして35になった今、この言葉は本当に真実だと思う。

孤独を知った人間は人に優しくなれる。
死にたいと思った人間は、生を理解できる。
だから現在進行形で孤独を感じている友たちよ。
君たちは得していると思って欲しい。
まわりのヘラヘラと要領よく生きることの出来る者たちよりも、君たちのほうが必ず10年後にステージがあがる。

きっと。


(2005-7-18 MIZK)
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