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Vol.5 - 童貞とモデルガン


思春期の少年少女による事件があとをたたない。

原因は色々あると思う。
本当に言い出したらきりがないと思う。
でも僕はあえて断言する。
原因は大人だ。

それを証拠に老人を狙った悪質リフォーム会社の事件とか、振り込め詐欺での仲間割れの殺人事件とか、大人たちによるうんざりするような事件が続く。
女子高生も未だなお、この瞬間に援所交際とかで大人たちに買われたりしているんだろう。
全て大人がひき起こしている事象。

photo尊敬できない大人たちを見て子供たちは歪んでゆく。
ただそれだけのこと。

本当に恥ずべき大人たちが平気な顔をして今日も街をえらそうな顔をして歩く。
かっこだけはいっちょ前で歩く。

僕は自分がその中に入っていないことを祈る。
今日も日差しが焼けるように熱い。


************


学校にもなじめない。
日常にもなじめない。

そんな17歳の頃の僕は童貞だった。
しかし学校の知り合いや、バイト先の人たちなんかには、僕はNOTチェリー!!と声高らかに宣言していた。
(※チェリーって20年前くらいの童貞の略称ね。だから僕は"俺は童貞じゃない!"て嘘ついてたんだよね。)

理由は簡単。
童貞はかっこ悪いから。
童貞は子供みたいで恥ずかしいから。
この感覚って現在思春期まっただ中の人には痛いほどわかると思う。
そして凄く焦ったりしてるんじゃないのかな。
でもまあ、こればっかりはなるようにしかならない。
気楽にいって欲しい。
水の流れは上から下へ。
ほっとけばそのうち何とかなる。

かくいう僕はその頃、思いっきり嘘をつきまくっていた。
童貞喪失は中2の時、学校の先輩に誘われて…
などとそのまんまアクションカメラというエロ本にでも載ってそうなストーリーを大胆にも皆に話していた。
そしてあろうことかそれを皆は信じたりしていた。
そして嘘をつき続ける僕をよそに他の子たちはみんな本当に童貞を脱出していった。
そしてどんどん大人になっていった。
それはもの凄くショックで辛いことだった。
僕だけがずっと子供のような気がして。


僕は正直、童貞を早く脱出したかった。
でもそんなに思う通りにいくわけもない。
当たり前だよね。
つきあってくれる彼女どころか、心をさらけ出せる友達すらいない始末なんだから。
でも、自分なりにあがいたりはした。
その頃は夜、"村さ来"という居酒屋で皿洗いのバイトをしてたんだけど、そこに年上の専門学校生が二人いた。
もちろん二人とも女性。
一人は凄い美人で店のアイドルみたいで、お客からもよく口説かれていた。
もう一人の子はその人気者の友達で、まあ、美人か美人じゃないかと問われれば美人ではない。
僕はその二人のどちらかと何とかなれないだろうかとあらぬ妄想を抱いた。
そしてどうしたらいいだろうか色々考えた。
まずはどちらかをデートに誘おう。
どちらを?
ここで僕はいかにもその頃の僕らしい選択をする。
"美人は無理だよな… なので美人でないほうを…"
とにかく自信のない男にとって美人である、もてそうである、というのは恐怖の対象だ。
(実は今でもその兆候は僕の中には存在して、実は、活発で社交的な感じの女性を僕は実は敬遠していたりする。困ったもんだ。)

そしてその選択の結果、美人でないほうを現実にデートに誘い出すことに成功する。
確か、おごるからさーとか行ってどこかに飲みにいったんだよね。
でもあれだね。
本当、女の人ってわかりやすいよね。
目を見ればわかるんだよね。
自分をどういう対象として捕らえているかが。
残念ながら、その子の目は僕のことをまったく男として見てなかったね。
だから、こっちはこれからどうにかなってやろうと画策しているのに、その子と来たら、まったく色気もなくひたすら食い、ひたすら飲み、あげくに今好きな男がいるんだけど、どうしたらいいのかしらねぇなどとフランクに話してくる。
ああ。ダメだ。
完全に失敗だ。
僕の童貞脱出作戦は完璧に失敗だ。
奢らされるだけ奢らされて、その夜は家に帰った。

photo家に帰ると母親がお帰りと言った。
冷めた唐揚げかなんかが用意されていた。
食べなさいという。

17歳の頃の僕にとって母親に何か干渉されるというのは、この世で一番嫌なことだった。
特にその晩は童貞脱出というデリケートな作戦が失敗したばかり。
僕は無視した。
そして何とか一人になりたかった。
だけど残念なことにその頃の僕に自分の部屋はなかった。
(まあ、早い話が貧乏だったってことだね。)

僕の苛立ちはマックスを迎えた。
そして鼻につく唐揚げの油くさい匂い。
貧乏くさい団地の部屋。
瞬間、何かものすごい暴力衝動に駆られた気がする。
そして僕はおもむろに机の中にあったモデルガンを取り出し、家をとび出た。
(その頃モデルガンが流行っていて、たいがいの人はみんな持っていた。)
そして夜の街をモデルガン片手にあてどなく歩いた。
何か気にいらない物があるとモデルガンでやたらめったら撃ったりして。
電灯とか月に向かって照準を向けたりして。
今思えば警察に捕まってもまったくおかしくない、そんな光景。
童貞の衝動とモデルガン。
何か印象的で今でも覚えている光景。

そんな17歳の夜の出来事。

2005/7/2 MIZK
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