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偏差値27男MIZKの全ての孤独な友たちへ-流浪の青春記-
Vol.3 - 歪んでゆく日々
僕は35になって現在は一児の父親だ。
でも人の親になった今でも恥ずかしながら、街中でうまい具合に調子よく生きていそうな学生のグループとかを見ると、自動的に敵意みたいな感情が芽生えることがある。
(でも、まあこれはきっと敵意ではなくて満たされなかった日々への羨望みたいなものだと自分では解釈しているんだけど・・・いわゆるジェラシー)
とにかくうまく仲間を作れなかった、うまく恋愛をすることが出来なかった思春期を過ごした僕にとっては今でも何か心にひっかかるものがある。
これは一生変わらないことなのかも知れない。
最近の僕はようやく自分らしいライフスタイルと言うのを手に入れ始めていて本当に嬉しいんだけど(※でも手に入り始めるまでになんと33年間もかかった!)
そのライフスタイルの中の一つに音楽というのがある。
20代の頃は生活に追われて諦めてしまって、ギターとかもろもろの楽器を一度捨ててしまったんだけど、最近また向き合うようになり、街中とかでいわゆるストリートミュージシャンと呼ばれるやつをやってみたりしている。
これがやってみると実にハード。
そして孤独。
まあ、よっぽどのレベルでないと誰も聞いてくれない。
そして突然、街中で歌いだすという勇気。
これ半端じゃないです。覚悟がいる。
そして酔っ払いや浮浪者、はては警察ともめることもある。
しかし、そんなこんなでやってみたらやってみたで色々と発見があるなーと楽しんでいたりする自分がいる。
だけど、一つだけ自分にルールを課していることがある。
それは"一人でやること"
これが一番大事なことだと思っていて、同じストリートミュージシャンでも二人組みでやっていたり、何か仲間うちで固まってやっている人のことは僕は認めていない。
あくまで一人。
たった一人でこの世界に向き合う。
この冷たい現実に向き合う。
そんな姿を僕は実は、昔の僕に見せたいのかも知れない。
もしくは、昔の僕のような子たちに。
大丈夫!一人でも大丈夫!きっと笑える日が来る!って伝えるために
そんな思いを胸に今日も僕は夜の街に出かける。
*******
(長いイントロでしたが・・・)
高校生にはなってみたものの僕の冴えない日々は続いた。
身長も低かったし、だいいちこうなんていうか華がない。
中学生での悲劇をひきずってどこか暗い。
すなわち人気がない。
そしてあい変らず教室の隅でひとりぼっち。
高校に入れば中学の時の人間関係とはおさらば!
すわ、いわゆる高校デビューってやつが出来るか!
とも思ったが現実はそう甘くはない。
同じ中学のやつも当然入学してきている。
そして僕の風評が流れる。
寒々と流れる。
人間っていうのは基本的に自分のことをダメだとは思っていない存在だと思う。
自分はダメであると少しづつ認識してゆくことが大人になるということであって、子供というのは基本的に自分のことを肯定しているものだと思う。
そんな肯定している自分という存在のことを、周囲は徹底的にお前はダメであると否定する。
極論で言えば僕の苦しみの全てはココにあったと思う。
そして僕は必死に周りに
"僕はダメじゃないよ!"
"僕は君達と同じだよ!"
と訴える。
でも認められない。
いつまでもいつまでも雑魚として、一段低い者として扱われる。
下手したらパシリとして僕を利用しようとするものまで現われる。
そんな空虚な日々。
僕はあるものと出会う。
それは世の中でロックミュージックと呼ばれていた。
その頃はバンドブームというものが始まる寸前で、TVのブラウン管で見たロックスターたちに僕は釘付けになった。
そして急いで家に帰って聞く。
近所迷惑おかまいなしで爆音で聞く。
聞き終わると今度はそれをカセットテープにダビングして起きている間中ひたすら聞く。
そして僕は一瞬だけ強くなった気がする。
そんな感覚に僕は心酔した。
そして次第にこんなことを考えていった。
周囲が僕を受け入れてくれないのは僕のせいではなく、感性の鈍いまわりの人間たちのせいなんだ。ならば自分の感性を理解してくれる世界だけで生きればいい。
僕はこの危険な理論でロックミュージックという世界に浸っていった。
しかも、とんでもなく間違った理解の仕方で浸っていった。
浸ると言うより逃避と言ったほうが正解なのかも知れない。
たまたまラジオで、TVで聞いた絶望的な歌詞を歌うロックミュージシャンの世界観への逃避。
間違いなく現実逃避。
その証拠にその頃の僕はロックが好きなのではなく、ロックが好きな自分が好きなだけだった。
"どうだい、みんな!ロックを聞いている僕は感性の鋭いイケてるヤツなんだよ!!"
って。
間違ったロック観と、憧れのロックスターに少しでも近づきたいために日々茶色くしてゆく髪の毛。
自己流で細くしてゆく眉毛。
オキシドール脱色のしすぎで真っ白になった指先。
覚え始めた酒とタバコ。
栄養失調のような痩せた体。
そして毎夜、泣きながら一人ヘッドフォンで聞く音楽。
それらすべてが今となっては愛おしく思えるが、その時はかなり歪み始めていた。
でもその歪みも序章に過ぎなかったのかもしれない。
そんな16才くらいの日々。
2005-6-1 MIZK
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