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偏差値27男MIZKの全ての孤独な友たちへ-流浪の青春記-

Vol.1 - 中2の憂鬱


中2くらいからなんだ。
僕が孤独というものを意識しだしたのは。

それまでは意外と順風満帆でさして悩みもなく生きてこれたのに、中2を境に少しずつ少しずつ何かが変わっていった気がする。
少しずつ少しずつ僕は友達を失っていった気がする。
一体、何があったんだろう。
それは実は今でも理解していない。
だけれども。
だけれども中2から僕が大切な友達を失っていったのは確かなんだ。
そしてそこから十何年にも及ぶ孤独感が始まったんだ。

その頃を思い出してみると確かチェッカーズ全盛の頃で、同時に一世風靡セピアなんかがすげー流行ってた。(※古くてごめんなさい。。)
あと洋楽では何と言ってもDURAN DURAN。小林克也のベストヒットUSAが毎週楽しみでよくレンタルレコード屋に走ってた。(その頃はレコードを貸してくれてたんだ。今思うと面白い。)
そして色気づき始めていた僕はそんな彼らのファションを真似してゲームセンターやなんかに行っていきがっていた。

通っていた中学校のクラスというのは40人くらいで男女半々くらい。
今でもきっとそうだと思うんだけど、学校のクラスって派閥みたいなのあるよね。
ピラミッドみたいに。
一番上は明るくていつもはしゃいでいるやつら。
スポーツとかも上手くてさ。
いわゆる人気者集団。かっこもいいんだ。もてるしさ。
その次が何かこういまいちパワー不足なんだけど、その頂点のやつらにくっついてどうにか仲間に入れて欲しいと思っているやつら。
いわゆる太鼓持ちか。
そして3番目はおとなしめで普通にしている少年少女。
最後は独自な世界観を数人で共有している子たち。
まあ、いわゆるオタクと呼ばれてしまうタイプの子たちかな。

極論すれば

イケテル奴ら>普通のやつら>イケテナイ奴ら

ということさ。

そんで僕はどこに属していたかというと、もともとは最後のイケテナイ奴らなんだ。
僕は小学生の頃からその当時流行っていたパソコンが大好きでパソコンは買えないもののポケットコンピューターというやつを手に入れて毎日遊んでた。だからパソコンおたくみたいなものだった。

でもそんな僕を"中2の色気づく季節"というやつが見事にぶっこわした。
ものの見事に"女の子にもてたい!"という性衝動がぶっ壊してくれた。

コンピューターなんかもう完全にどうでもよくなった。
興味は全て女の子。
興味をひくためにまず服を買った。
今まで着ていた親に買ってもらった服を全部否定し、親に無理を言ってかっこいい服を売っている"DAN"とかいう店に毎週行くのが楽しみになった。

次は髪型だ。
それまではスポーツ刈りとかで何の問題もなかったのに"中2の色気づく季節"はそれを完全否定した。
脳の奥から僕に本能で指令してくる。

ピピ-----
"床屋はダメだ!美容院に行け!"
"ドライヤーを使え!セットに命をかけろ!"
"整髪料を使え!そうすればもてるぞ!"

僕はこの指令に逆らえず、毎朝、毎晩、鏡に向かい合うようになった。
そして"チック"と呼ばれていた何かベタベタする変な匂いのする整髪料で変な髪型をセットしていた。
セットした髪型を崩さないように変な姿勢で寝る僕のことを親は冷めた目で見ていた。

そんな季節を迎えて僕の中にはもう一つ変化が生じていた。
それはその頃の友達に対する態度の変化だ。
パソコンとかアニメ(その頃はうる星やつらというアニメが大好きだった。)でつながっていた彼らのことを僕はだんだん敬遠するようになっていった。
そして僕はどうにかしてクラスのピラミッドの頂点。
明るくてイケテル奴らの仲間にしてもらいたいと思い始めていた。

毎日研究した。
そして実践した。
ファッションを変え、髪型を今風にして、毎日、夕焼けニャンニャンをチェックし、無理に真似したとんねるずのギャグを披露する。
学校で休み時間に、時に授業時間に。
先生に怒られながらも行うその、おちゃらけ行為は意外なほどヒットした。
そして僕は意外なほどあっけなくイケテル奴らへの仲間入りを許された。

天国のような気分だった。
僕は実は今でもそうなんだけど権威とか有名とかいうものに実は大変弱い。
ストレートに言ってしまうと自分より強いものに弱い。
恥ずかしくて仕方がないんだけど、コレは事実。
今はそういう自分を恥ずかしく唾棄すべきものと言えるんだけど、中2の僕にはそれはまだなかった。
とにかく毎日ハッピーだった。
クラスの中で女の子にもて、スポーツも万能なやつらのグループの一員。
これは甘美だった。
冗談じゃなく僕はもう今年の夏に死んでもいいなと思うほどはしゃいでいた。

そしてそのはしゃぎっぷりはエスカレートしてゆく。
端的に言うと調子に乗ってゆく。
ファッションに対してあのブランドはさ〜とか、あれはダサイよな〜とかうっとしいことを公言するようになる。
イケテル奴らの笑いをとるために平気で人を傷つけるようなことを口に出すようになる。
その対象は昔の僕の友達。
一緒にコンピューターやアニメのことで遊んだ友達。
僕のことを調子に乗るなよという目で見ていた僕の友達。
そんな友達たちを平然とあざ笑う。
「あいつら、ダセーよなーって」・・・
image

だが、夏が終わる頃、状況は一変する。
簡単に手に入った人気は簡単に消えうせる。
ある事件をきっかけに人気というプラスのエネルギーは一気に180度転回してマイナスのエネルギーとなる。
そして僕は嫌われ者となる。
調子がいいだけのダメなやつというレッテルを全身に貼られ、後には何も残らない。

ある事件というのはこういう事件だ。 ある日、僕らイケテル奴らグループはいつものように自慢のチャリに乗って盛り場のゲームセンターへと向かう。
得意気に中へと入る。
調子に乗っている僕らは中のいつもとは違う雰囲気に気づかない。
僕らはいつものゲーム、ゼビウスへと腰をおろす。
そして事件は起こった。
かつあげだ。
その日はどこからか不良の高校生グループが来ていて僕らはあっという間に標的にされた。
でもまあ、かつあげだけならいい。
さほど珍しくない。
問題なのは僕の行動だ。
結果から言うと僕はイケテル奴らを幻滅させた。
日頃調子に乗ってかつあげなんかにはびびらないぜと大ボラを吹いていた僕だったが、現実にかつあげにあうと怖くて怖くてただ震えているだけだった。
あげくの果てにあまりの恐怖に耐え切れなかった僕はかつあげをされているにもかかわらず愛想笑いまで作った。
金をまきあげる高校生たちに、金を差し出しながら愛想笑う。
プライドのかけらも無い光景だった。


翌日複雑な面持ちで学校へ行った。
かつあげの件はすでにクラス全員が知っていた。
こういう話は一瞬で広まる。
そしてそのことは当然先生へと報告された。
僕は事実関係を確かめるために職員室に呼び出された。

職員室には当然ゲームセンターに行った皆がいた。
もう僕の仲間ではない皆がいた。
ダメな奴が来たという目で彼らは僕のことを見た。
そしてその目で僕には嫌われ者の刻印が押されていた。

そこから僕には友達がいなくなった。
見事なまでにいなくなった。
誰も僕を信用しなくなった。

そして学校という場所に居場所がなくなった。

いまだから笑えるがその時は笑えない中2の憂鬱だった。


2005/4/30 MIZK
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