WEB連載

出版物の案内

会社案内

ドロミテの旅

2012年8、9月
ドロミテの旅(その3) ゾッペ・ディ・カドーレ

photo
ゾッペの入口で見上げたモンテ・ペルモ

ゾッペ・ディ・カドーレ(1444m)に行くには、車を除けば、交通手段はフォルノ・ディ・ゾルド(843m)から出ている一日二便のバスしかありません。朝早くと昼過ぎなので、ホテルの主人が手伝いの小父さんに私をゾッペまで車で送るように頼んでくれました。彼は親切な人で、村の入口でモンテ・ペルモの写真を撮らせてくれ、村を通り過ぎた駐車場からジャンピエトロ・タラミーナ小屋(Rifugi Gianpietro Talamini)とヴェネチア小屋(Rifugi Venezia)に行く分かれ道のところまで一緒に歩いてくれました。

モンテ・ペルモを間近に見るにはヴェネチア小屋に行かねばなりませんが、片道二、三時間もかかるので、ゾッペに泊まる必要があります。それで今回はあきらめました。昔佐貫先生が訪れられた時には宿が二軒あったそうですが、今では一軒です。車を持っている客は素通りしてしまうのでしょうか。ジャンピエトロ・タラミーナ小屋(1582m)までは四、五十分で、正面にアンテラウ(Antelau)を望み、左にモンテ・ペルモの前山になるペンナが見えます。この山の陰になってモンテ・ペルモは見えません。さらにその左にチヴェッタ(Civetta)山系が広がっていますが頂きだけが見えていました。

南チロル・ドロミテ地方

村から駐車場まではかなりのきつい上りですが、分かれ道からはフラットな道でゆったりとトレッキングが楽しめます。前日の雨で少し水溜りもありましたが、気になるほどではありませんでした。フォルノの観光案内所で「日帰りなら」とジャンピエトロ・タラミーナ小屋に行くことを勧められたのですが、ここに来てモンテ・ペルモが見えないのはがっかりです。村からは見えるので昼食は村でとることにして、早めに帰途につきました。

村は朝通った時にはほとんど人を見かけず、死んだような静けさでしたが、さすがに昼近くなるとちらほらと人影を見かけました。そろそろシーズンも終わりなのでしょうか。

ドロミテの旅

▲ボタンをクリックすると写真が切り替わります。

珍しい山奥に来たので郵便局で絵葉書と切手を買って子供たちに出すことにしました。ここの職員さんは親切で、多分村で一つのレストラン・ペルモを教えてくれ、食後に私がぶらぶらしていると、「フォルノまで送って行こう」と声をかけてくれました。お蔭でどんなバスが走っているのか分からなくなってしまいました。とにかく親切な人たちです。

昼食はスパゲッティに四分の一の赤ワインに席料込みで12.50ユーロでした。チロルに行けばもう少し安くなりますが、まあこんなものでしょう。ワインも美味しかったしスパゲッティも最近流行の味付けでした。

村から見上げるモンテ・ペルモは佐貫先生の表現では「椅子の山」、私が聞いたのは「神の御座」本当に人工の城跡のように見えます。

photo
村の中から見上げたモンテ・ペルモ

ここで少し蛇足を。
  『佐貫亦男のアルプ日記』には「ゾッペの宿」と「モンテ・ペルモ」の二箇所にゾッペのことが書かれています。その中に「・・・裏の山に散歩に出た。西にチベッタ、東にアンテラオが見えた。・・・」という文章があります。
  私はアンテラウ(Antelau)と書きましたが、実はUの発音はオに聞こえることがあります。皆さんの知っている例を挙げると、Donau、これはドナウでなくてドナオに近い発音です。先生の耳の確かさに感心した次第です。


2012.11.1 掲載


著者プロフィールバックナンバー
上に戻る