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パリへの旅 第4回
久しぶりのパリ、ヴェルサイユとサンジェルマン・アン・レイ

昔の私は勿論ヴェルサイユを何度も訪れているので、今回はお庭の見学に的を絞りました。何度も来ていながら、お庭をじっくりと見る機会がありませんでした。  午前中は団体客が混みあうと聞いて、朝早く出かけたため、正面から見る宮殿は茜色に染まっていました。
 このお城は東に向かって建っています。朝「鏡の間」の外に立って庭を見わたすと、背後から日を受けて前方に水路がどこまでも伸びていました。
 ヴェルサイユの庭園は大きすぎるためか、一言で言えば大味でした。
 花壇ごとに色調を変えるなど、それなりの工夫は凝らしていますが、前日に見たモネの屋敷の庭ほどひどくはないにしても、草茫々の一歩手前という印象を受けました。

 それに比べるとマリー・アントワネットのプティ・トリアノンは小さいだけになかなかバランスのよいお庭でした。ただ現在改装中で、彼女の時代の本来のイギリス風庭園の図と比べると、長い年月で随分変わっていました。

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愛の神殿

彼女が愛人との逢引の場所に使ったと言い伝えられる「愛の神殿」は周りを掘り返していて遠くから眺めただけでした。
 このお庭はもし元通りに復元できれば、素晴らしいものになるでしょう。
 それにつけても、後年シシ—(ハプスブルクのエリザベート皇后)が愛したラクセンブルク宮をマリー・アントワネットが知っていたかどうか、気になります。
 ひょっとすると、プティ・トリアノンはラクセンブルクのイメージを投影したお庭だったのではないでしょうか。

翌日はサンジェルマン・アン・レイのお城です。
 ここはルイ十四世が生まれた場所です。彼はヴェルサイユの建設と並行してこのお城の改築にも取り組みました。このお城の庭園と有名なテラスは、ヴェルサイユの庭園設計者であるル・ノートルの手で造られました。
 テラスからはセーヌ川の遥か向こうにパリの街が望まれます。
 また、テラスのお城と隣接した場所に建つ建物は今も高級レストランとして使われていますが、その昔わが国の岩倉ミッションが訪れたところです。  『米欧回覧実記』にはこの時の様子が次のように記されています。

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サンジェルマン・アン・レイの王宮

(明治六年一月)五日 晴
 「サンゼルマン」ニ遊フ、此ハ府ノ西方ナル一邑ニテ地形岡ヲ負フ、路易第十四世ノ宮アリ、前ニ広林ヲウエ、井井法アリ、 樹樹ミナ同則ニ枝ヲ展ヘ、樹陰ヲ掃ヒテ、一塵ヲノコサス、・・・大野目下ニ開キ、「モンワレヤン」ノ砲台、突(コツ)トシテ前ニ横フ、 車烟ヲ噴キ、遊牧草ニ嘶キ、遥ニ巴(里)ノ烟霞ヲ簇ラスヲ望ム、旗亭アリ、食スヘシ、飲スヘシ、路易第十四世ノ遺跡、此亭中ニモアリ、 葡萄酒ノ美、激賞ヲウク、此宮ハ路易十四世誕生ノ地ナリト云、

岩倉ミッションはここで遥かにパリを眺めながら、大いにワインを飲みました。

 

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