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第3回勉強会では、参議院議員の江口克彦氏(みんなの党最高顧問)のもとをたずね、江口氏が提唱する「地域主権型道州制」についてお話をうかがってきました。江口氏は、松下幸之助氏の側近で、松下氏が提唱した「廃県置州論」を引き継ぎ、長年「地域主権型道州制」についての研究をされています。
  道州制についての内容は、後日アップいたしますが、ちょうど取材当日は小沢一郎議員が民主党を離党した日で、江口氏は取材の最後に政局についての見通しも語ってくださいました。タイムリーな話題だったので、その部分だけ先に公開します。政策シンクタンク、PHP総合研究所の前社長だけあって、予想は非常に具体的で客観的でした。
  また、江口氏は松下政経塾で教えていた経験もあることから、松下政経塾出身の政治家についての評価も聞いてみました。野田佳彦総理大臣をはじめ、玄葉光一郎外務大臣、前原誠司議員(民主党政調会長)など、松下政経塾出身者はいまや国会で何十議席も占めている一大勢力。が、元恩師の江口氏の評価は、かなり手厳しいものでした。

(ロゼッタストーン編集部:弘中百合子)

第3回 「理想国会」勉強会 〜余談「今後の政局はどうなる?」〜
江口克彦氏(参議院議員・みんなの党最高顧問)が語る
今後の政局予想と、松下政経塾出身の政治家への苦言


●小沢一郎氏らが民主党を離党したが、これからの政局はどうなっていくと思うか?

小沢さんが離党したのは、もう織り込み済み。小沢さんとしては民主党のなかにいても、優遇されないし、あの人は、常に主役でいないと気がすまない人だから。鳩山さんが総理で、小沢さんが幹事長のときはよかったが、その後、「政治とカネ」の問題で、どんどん疎まれるようになっていった。それがやっぱり腹立たしいという気持ちがあったんだと思う。そういうことからすると、いつか反旗を翻して、民主党と対立するような形になるだろうなと、みんな思っていたんじゃないか。ただ、何人ついて出るかというところだけが関心があった。だから、党を出てもさほど驚かないが、あまり政局は変わらないだろうと思う。
  ただ、解散の時期は、遅くとも年内、はやければ9月ごろの可能性が濃厚になってきた。政局ということからするならば、選挙前の問題は、維新の会の動きがどうなるのかということだと思う。政局という観点からしたら、政界再編のきっかけになるのは、小沢さんではなくて、維新の会ではないだろうか。
  解散総選挙になったら、自民党は180議席ぐらい、民主党は110議席ぐらい、公明党は指定席で30議席ぐらいだろう。過半数の240にはあと30足りない。ここで維新の会が40議席、みんなの党が40議席取るということになれば、「自民・公明・維新」と連立をするか、「自民・公明・みんな」という組み合わせになるか。あるいは「自民、公明、維新、みんな」という連立になるか。そういう動きになってくるだろう。
  そのあたりは、はっきり申し上げることはできないが、維新が40議席でも取れば、私は「自民、公明、維新」の連立ができるんじゃないかと思う。「自民、維新、みんな」はどちらかというと、できにくいんじゃないか。みんなの党がよほど「アジェンダ」というものを妥協するならば、「自民、公明、維新、みんな」という4党連立、あるいは、「自民、公明、みんな」という3党連立はありうると思うが、いまのように「アジェンダ」という孤高を保っているような「みんなの党」ということからすると、少し組み合わせは複雑になるんじゃないかと思う。
  ただ、維新の会がみんなの党と一緒になって、「みんなの維新」というようなことになれば、自民党は、「自民、公明、みんなの維新」というように組まざるをえなくなる。これは、選挙結果をみないとわからない。しかし、言えることは、比較第一党には自民党がなるだろう。そして自公で過半数を取れば、自公で政権を取っていくし、足りなければ「みんなの党」か「維新」のどっちかを取るという形。そうなってくれば、政界再編で、民主党が分裂する可能性が出てくる。野田グループと、それから労働組合グループと。小沢グループはもう分かれたから。そういうふうに分かれれば、今度は野田民主党グループが自民党とくっつく可能性も出てくる。いろんな組み合わせが考えられるから、選挙結果、あるいは選挙の動きを見てみないと、政界再編の動きは予測することができない。いろんな可能性があるとしか言えない状況だ。


●松下政経塾出身の政治家についてどう思うか?

松下政経塾出身の議員たちは、いま100点満点で平均30点ぐらいの点数しかあげられない。松下政経塾の出発点は「人間大事」、「国民大事」。松下幸之助は、政経塾をつくったときに、「人間が大事だ。国民が大事だ。政治は人間から出発しなきゃいけない」ということを繰り返し、繰り返し、叩き込んで、それが、身体にしみついた政治家を育てようとした。しかし、残念ながら松下幸之助は85歳から始めて、5年間ぐらいは一生懸命できたが、90歳になってからがくんと身体が衰え、政経塾に通うのもままならなくなってしまった。そういうことで、松下幸之助の思いが中途半端になってしまったというきらいがある。
  彼らが政治家を志したころは、まだ松下幸之助の思いを頭で理解することができていた。だが、身体には浸み込んでいない。頭で覚えているだけでは、月日が経つにつれて、だんだんと薄れていってしまう。そうすると、松下幸之助の政治の原点を忘れてしまい、大企業、「自民党株式会社」、「民主党株式会社」のなかで、出世争いにうつつを抜かすようになってしまい、国民のことを忘れてしまっている。人間のほうが大事だということを忘れてしまっている。
  だから年金も中途半端になってしまう。財務省のほうを向く、あるいは自分の都合、あるいは党内のことばかり考えるようになるから、中途半端な政策しか出さない。不退転の決意というが、何のための不退転の決意か。国民の幸せのために不退転の決意でないといけないのに、不退転の決意が自分の政党を守るための不退転の決意であり、自分の身を守るための不退転の決意になってしまっている。
  政治生命をかけるって、そんな中途半端なことを言ってもらったら困る。政治生命をかけるとは何か? 首相をやめるということか? そんな簡単なことはない。 「政治生命ってなんだ。本当にきみ、切腹して死ぬ覚悟があるのか」と、松下幸之助が生きていたら、問うてるんじゃないかと思う。
  言葉はきれい。話術は巧み。けれども本当に国民のことを思っていない。人間のことを思っていない。そういうところが私は政経塾出身の政治家の限界ではないだろうかと思う。いついかなるときも、国民から出発する、必ず人間から出発するということを考えたら、消費税増税なんて簡単に言えることだろうか。
  政治家としてやるべきことをやる。官僚にやるべきことをやらせる。そして天下りもいま13兆円も使ってるのを極端に減らす。議員宿舎とか公務員宿舎も廃止する。政府保有株も売却する。絞って絞って絞って絞って、節約をして、雑巾をしぼったけれども、水一滴も出ない。そこで初めて、それでもなおかつ、国民に頭を下げて、「どうぞ、増税をさせてください」っていうのが政治家だ。
  それを雑巾をしぼりもせず、まだしぼれば水がジャージャー出る状態で、頭も下げず、エラそうに「あんたがた、将来、困りますよ」「こんなことやってたら、日本の国はだめになりますよ」と。だめにしたのは、誰なのか。
  「増税しなかったら足りなくなりますよ。年金が足りなくなりますよ。将来あんたがた、どうするんですか」ってエラそうに国民に向かって脅迫するが、それを政治家に言われたくないと、国民のみなさんは思うんじゃないか。国民のこと、人間のことがどっかに行ってしまって、自分の出世のことしか考えていない。そういうふうに思えてならない。だから平均点30点ぐらいじゃないかと、私は思っている。
  政経塾をつくってきた私としては、非常に忸怩たる思いがある。政経塾出身の人には、もう一度思いを新たにして、政治家のいろはから学んでほしいし、松下幸之助の勉強をもう一度一からし直してほしい。



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