高松高等裁判所平成25年(ネ)第175号損害賠償請求事件
いわき病院の精神科医療の過失
1、いわき病院が野津純一氏に行った精神科開放医療
4. 風邪症状の診察と離脱症状の見逃し
渡邊朋之医師が人証で発言すれば、それが事実となるのではない。裏付けが必要である。
1)、MO医師は患者の病状に関心がなくチーム医療に参加してない
内科医のMO医師は平成17年2月18日から23日までの主治医交代後の患者野津純一氏の病状が悪化した際に、病状の本質を見極めた対応を行っていない。MO医師は野津純一氏の頓服処方でしばしばカルテに登場するが、基本的に、患者の求めに応じて看護師が与薬した後で行う、約束処方のレセプト処理であり、野津純一氏の病状を診察した医療行為ではない(なお、約束処方とは、各医療機関で配合薬剤と用法用量を決めてある、よく使われる薬の組み合わせをいう。風邪薬や鎮痛剤など)。
MO医師は2月の野津純一氏病状が悪化した際には、症状が胃腸症状という内科分野であったにもかかわらず、渡邊朋之医師により抗精神病薬の処方変更が行われた後で統合失調症薬の副作用及び目の前の症状との関係を疑わなかった。この患者の病状を医師として確認しないMO医師の姿勢は、12月5日の野津純一氏の風邪症状の診察が適切に行われたか否かの問題とも関連する。MO医師は患者の病状の変化を観察して、精神科医療チームの一員として処方を行うものではなく事後にレセプト承認した診療録記載である。MO医師は「風邪症状」という看護師からの報告に接して、医師としてSSRI抗うつ薬パキシルの突然中止と関連づけた確認診察を行う義務が生じていた。MO医師は渡邊朋之医師の処方変更で発生した患者の病状悪化を一貫して見逃した。MO医師は精神科専門病院であるいわき病院の内科勤務医であるが患者の精神病状に関心を持たず、野津純一氏の精神症状の動向を診察していない。
2)、MO医師の12月5日の風邪症状記載
12月5日にMO医師は風邪症状と記載しているが、同頁右側の指示及び処置の欄には12月3日の生食20ml1A、4日の生食20ml1A、5日のペレックス3.0、3×N 3日分のレセプト承認まで、が記載されている。しかしながら、診療録の記載は左側の記載は「病状及び経過」欄は12月5日であるのに、同列の右側「指示及び処置」欄は12月3日と4日である。更に、12月6日の横に12月5日の処置が記載されており、左右でちぐはぐである。また耳鼻科通院中と記載があるが、耳鼻科通院を行った外出許可の記載は見当たらない。MO医師の診療録記載は、生食1mlの筋注ではなく、野津純一氏を治療した事実を記載してない。医師として患者の診察と治療を行った事実を証明できない。MO医師の診療録記載には看護記録の裏付けがない。
野津純一氏に対する風邪薬の与薬は5日朝10時のON看護師であり、MO医師の診察と処置ではない。診療録にMO医師は「薬剤包」と記述してあるが、右頁のいわき病院による清書(赤字)では「薬処方」となっており、改変である。「薬剤包」と「薬処方」では意味が異なる。いわき病院は診療録の記録を、悪筆であることを幸いにして、清書翻訳で改竄を行った。いわき病院は薬のレセプト承認を行っただけの作業を、あたかも、診察をして薬処方を行ったかのように記録を読む者が誤解するように事実の捏造を意図した。
3)、ON看護師が与薬した風邪薬
風邪薬としてON看護師が与薬したペレックスは1回分ずつ透明パッケージに入った個包装の顆粒で、内容的に市販の風邪薬と同じであり、風邪気味の患者に看護師の判断で投与されるが、レセプト請求には医師のサインが必要である。このため、患者がペレックスを服用した後で、診療録に医師が追認のサインをするのが常である。MO医師は12月5日に野津純一氏を投薬前に診察しなかったのである。そして野津純一氏の病状(喉痛、頭痛、振戦、不安焦燥、等)はペレックスでは改善されなかった。
ON看護師が風邪薬を処方した後でレセプト承認をしたMO医師は、レセプト承認時に患者の様子確認をしていない。MO医師は内科であるが、精神科病院勤務医であり、野津純一氏の風邪症状の程度、及び基本的な行動として、抗精神病薬(プロピタン)とSSRI抗うつ薬パキシルを同時に突然中止していた患者の治療課題のアカシジアが亢進していたか否かを確認する必要があった。医師としての見識に基づいた義務である。
4)、IG鑑定人は地裁裁判官の誤判断を誘導した
IG鑑定人は、いわき病院の清書による改竄を疑うことなく、12月5日MO医師診察と鑑定意見書に記載したため、地裁判決(P.115)は、「12月5日に内科医が診察を行った」と断定し、経過観察をした証拠とした。MO医師の治療事実と異なるカルテ記載を元にして、「MO医師が診察した事実」と認定したことは、IG鑑定人の錯誤である。
内科医のMO医師が野津純一氏を12月5日に診察していたら、内科医として当然の医療行為として、喉の図を画き、喉のどのあたりが赤いか、痰がからむ咳か乾いた咳か、鼻水が濃いか、水のような鼻水か、頭のどのあたりがどのように痛いか等を問診し、見たこと聞いたことを診療録に書き込んだはずである。そして、喉や鼻を詳しく見る時、左頬を見ないと言うことはあり得ず、「左頬に根性焼きがあった」または「左頬に根性焼きは無かった」のうち、必ずどちらかの証言をこれまでの裁判の過程で自信を持って行っていたはずである。MO医師が本当に5日に診察したのであれば、いわき病院は最初の地裁答弁書からMO医師の名前を出して回答するのが常識である。しかしながら、事件後9年を経た現在に至るまで、MO医師は根性焼きの有無に関する発言を一切していない。今日に至って、たとえ「12月5日に診察しました」と文書を提出することがあっても、それはいわき病院に強制に近い要請を受けたからと推察される行為であり、信用に値しない。MO医師から文書が提出される場合には、控訴人は改めて記述内容を詳細に検討し反論する用意があり、場合によっては、人証で本人他を証人喚問する必要がある。
5)、医師法違反の主張
被控訴人以和貴会の主張と、看護師の筋注を医師の経過観察とした地裁判決は、医師法17条【非医師の医業禁止】違反、第19条【診療義務等】違反、第20条【無診察治療等の禁止】違反、第24条【診療録】違反である。
特に、医師法第17条違反に関連して、非医師が限定的な医療行為を行うことの前提として「5 (2) 副作用の危険性や投薬量の調整等のため、医師又は看護職員による連続的な容態の経過観察が必要である場合ではないこと」が明記されている(医師法17条、歯科医師方第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について、厚生労働省医政局長通達:医政発第0726005号、平成17年7月26日:参考資料添付)。本件では、平成17年11月23日に実行した複数の向精神薬(パキシル、プロピタン他)の同時かつ突然の中止で「副作用の危険性や投薬量の調整等のため、医師又は看護職員による連続的な容態の経過観察が必要である場合」に該当する。
6)、風邪症状が風邪であったか否かは本質的な問題ではない
平成26年12月5日の法廷で、裁判官は「平成17年12月5日の風邪症状の説明」を被控訴人側に求めた。これは、控訴人側が刑事裁判SG鑑定に基づいて野津純一氏の症状は「根性焼きでも消えないイライラの亢進」が殺人事件を引き起すに至った主症状としていることに関する裁判官の疑問と思われる。
いわき病院は「野津純一は風邪だった」として、「風邪だったので、主治医が診察する必然性はなかった」と主張してきた。いわき病院が「風邪の患者が殺人することは予想できない」と自己弁護しても、いわき病院の論理に眩惑されて、「風邪の可能性があるので、複数の向精神薬突然中止による中断症状は決定的と言い切れない」と本質を見誤った判断を行ってはならない。そもそも風邪で殺人する人間はいない。
野津純一氏が、仮に風邪(インフルエンザを含む)であったとしても、SSRI抗うつ薬パキシルを突然中止した後であり、SSRIを中止にした後で発現する可能性がある離脱症状のインフルエンザ様症状等に留意する必要があり、主治医は自ら診察する義務があった。主治医には、看護師からの報告で風邪症状と離脱症状の発現を示すインフルエンザ様症状の確認を自らの眼で診察して見極める責任がある。渡邊朋之医師が、SSRI抗うつ薬パキシルを突然中止した後で、患者観察を綿密に行う特別な時期という認識を持たず、一般の平常時という認識でいたことが過失である。添付文書に記載された重要な情報を読まない主治医渡邊朋之医師の不勉強による錯誤した医療を免責理由としてはならない。添付文書の重要事項を読まないことや理解しないことが重大事故に繋がれば主治医に過失がある。また同時に行った抗精神病薬プロピタン中止により抗妄想幻覚作用が失われた事による再燃や中断症状である可能性を、主治医自ら確認する義務は失われない。
渡邊朋之医師が、風邪症状という看護師からの報告に基づいて、主治医の精神科医として、離脱症状の発現を示すインフルエンザ様症状の可能性を疑わず、向精神薬中止による中断症状の可能性を考えず、自ら診察を行わなかったことが、決定的な過失である。主治医が経過観察を行わない怠慢と医療放棄が医療過失である。
|