カラスの「かあ」
「かあ かあ かあ かあ カア・・・」とでも表記するのでしょうか。裏庭兼用の裏山で一羽のカラスが鳴きました。「かあ」と区切りよく明瞭に発音し、「かあ」の度に声色、音の強弱と調べ、声色等を変化させて表現が多彩です。「一羽のカラスがこんなに多様に『かあ』を発声するものだ」と感心しました。
梅雨の末期で、連日豪雨が続いて小降りになった時に、裏山で一羽のカラスが大きな声で「かあ かあ かあ かあ カア・・・」と鳴きました。家の中で聞いていて、「面白い鳴き方」と興味を持ち、二回鳴いた後で「かあ かあ かあ かあ かあ」と私から声を発しました。するとカラスが前回とは異なる発声で「かあ かあ かあ かあ カア・・・」と応じます。私が「かあ かあ かあ かっか かかあ!」と返しましたら、カラスは更に声色を変えて、しかし頑固に「かあ かあ かあ かあ カア・・・」と返事します。妻が聞きつけて「とっても、面白い」と楽しみました。都合10回ぐらいカラスとやり取りして、私の方が根負けし、カラスは最後に勝ち誇りの「カア!」と鳴きました。
我が家の裏山にはヤマモモの大木があり、果実は空高く摘果できる限界を超えています。梅雨の頃には、熟したヤマモモの実が雨に濡れてぼたぼた落ち、スモモや梅の実も熟します。更には、冬から収穫しないブンタンやハッサク等の柑橘も文字通り夏みかんと化して鳥を招きます。下に落ちたブンタンを夜の間にイノシシが食し、柑橘の食べ糟や根茎を掘り返した跡があります。サクランボも植えてありますが、春先に「そろそろ食べ頃かな」と思った頃には小鳥に食べられて後の祭りです。豪雨が続いてお腹をすかせたカラスは、雨が小降りになったあいまに、ヤマモモや柑橘やスモモを食事するのでしょう。
カラスの鳴き声の変化と繰り返しから「カラスには言葉がある」と推察しました。犬のワンワンは同一個体では発生と声色が変わりません。我が家の犬は「わん」「きゃん」「くん」等を発しますが「わん」は威嚇と呼びかけで強弱以外では言い換えず、意思伝達は接近状態で「くん」と身体表現です。猫も視覚的確認と「ニャ」及び身体表現が中心です。野生のカラスが意図的に違えて発声する連続音声を聞きながら、人間には「かあ」としか聞こえないが、カラス同士では高周波等の音声を組み合わせて「異なる言葉(単語・熟語)としている」のではないかと推理しました。また「もしかしたら『かあ』の声音は、強弱と間合いの組み合わせで、言語的な意思伝達が可能になっているのではないか」とも考えました。「カラスには、視覚に頼らない独立した意思伝達手段としての、言語がある!」。カラスは遠く離れて表情や動作の差異を観察できない相手とも、声で連絡を取り合っているに違いない。だから「私という人間と、お互いに姿を見ないままで、異種間で、声のやり取りを可能とする、素晴らしい能力!」と推理した次第です。
あのカラスは「毎日、空から私を観察し、私を個体認識して、声かけした」のではないだろうか? カラスには「明瞭な自我」と「五線譜の言葉」があるようです。
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