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猫と犬の散歩


平成22年5月23日
矢野啓司

5才の雄の黒猫を飼っています。私たち夫婦はこれまで雄猫・雌猫・雌猫と飼ってきましたが、今の猫を雄にした理由は「お散歩猫」を目指したからです。ずいぶん前になりますが、西日本最高峰の石鎚山に上ったとき、紐につながれてない猫が飼い主と一緒に登山をしている姿を見て、私たちも「猫に散歩をさせてみよう・・かわいいに違いない」と思い立ったのでした。

私たちの散歩は夜8時から9時までの1時間です。理由は、夕食後で寝る前の時間だし、何よりも、散歩の途中に他の犬に出会わないので、犬をストラップから外して自由に走らせてやれるのです。我が家から約300mの用水路までの第1エリアでは犬は自由です。それから約1km先の鏡川の堤防までの第2エリアでは交通量があり他人との出会いも多いので犬を紐に付けます。高知市内を流れる鏡川の堤防に出ると、犬を自由に走らせ、堤防の上を往復2km以上歩きます。夕方の明るい時間帯では堤防は犬の散歩のラッシュアワーで、とても犬を自由にして走らせることはできないのです。

今の季節は夜の堤防は蛍が飛び交っています。この堤防では、3月の中旬から蛍の幼虫が見えますし、蛍の最盛期を過ぎても、草むらに蛍は生息していて8月の末まで蛍観察が可能で、都合5ヶ月も続く私たち夫婦の楽しみです。

「しっぽの長い雄猫を世話して下さい」とお願いしてあった犬猫クリニックから「門前に捨てられていた子猫」が紹介されました。私たちは「この猫をお散歩猫ちゃんに教育する」と決めて、早速夜の散歩で「手乗り猫」として連れ歩きました。1ヶ月もすると手の上では大きすぎて重くなり、上空きの肩掛け袋に入れて出歩くようになりました。そして3ヶ月頃から堤防の上では、ストラップを付けて歩かせました。ところが、紐につながれた猫は思うように歩いてくれません。紐につながないと迷い猫になりそうで不安でした。半年ぐらい猫に散歩させるべく努力しましたが、歩きません。また、猫の体重も増えて、途中の道を抱え歩くにも重くなって私たちの方で、「猫に散歩は無理」と諦めてしまいました。

雌猫を飼っていた頃は、第1エリアの境界まで猫は散歩に付いてきていました。猫は「私は、ここまでよ」と用水路脇の塀の上から見送り、私たちが帰ってくると声をかけて塀からおりて自宅まで私たちの前や後ろを走り回っておりました。我が家の雄猫は、散歩はしなくなりましたが、私たちが門を出るときに庭石の上から見送り帰り着くと私たちに声をかけて、一緒に家に入るようになりました。私たち夫婦は「散歩をしなくても、それでも良いとしよう」また「それにしても猫とは律儀な動物だ」と感心したほどです。

雄猫の世界は雄猫同士の縄張り争いが激しいようです。若猫の頃には、家の周りでも野良猫に追い立てられて怪我をすることもしばしばでした。「家の敷地はお前の人間が与えたお前専用の縄張りだよ」と言っても猫には解りません。ところが5才になった最近では我が家の猫の行動が変わりました。夜は出歩いてばかりで、帰ってきません。それで「お前、夜の女遊びは、いい加減にしなさい」と言い聞かせても本猫には通じません。どうやら我が家の猫も一人前の雄の成猫になり、近隣ではボス的な存在に昇格したようです。

1ヶ月ほど前から、散歩の帰り道の堤防で猫が私たちを待つようになりました。「子猫の時の散歩道を記憶しているのだ」と感心しましたが、飼い猫と出会うのは嬉しいものです。第2エリアの間を抱えて帰り道につき、第1エリアに入ると猫は下ろしてくれと要求し、出会った近隣の雌猫と走り去ってゆき、私たちが帰宅した後から満足そうな表情で帰宅するようになりました。しかし雄の成猫としては、第2エリアを抱かれることにもすぐに厭いたようで、帰り道で私たちを待ち伏せしないようになりました。「猫の散歩は終わったか?」と少し気落ちしました。

昨夜、猫は再び私たちを驚かせました。第1エリアを出たところで、私たちに声をかけて、同行し始めました。見ていると車が来れば、近隣の家の庭に入っています。堤防手前の県道はさすがに抱えて渡りましたが、堤防の上では二人と二匹の散歩になりました。ほのぼのとして飼い主の心をくすぐり大変嬉しいものです。我が家の雌犬と雄猫はお互いに舐めあいはしませんが、庭で1〜2mの距離でそれぞれお腹を上向けて日向ぼっこをする仲です。二匹が歩く姿には楽しさがありました。

しかし猫はちゃっかりしており、帰り道の第2エリアの一軒の家の庭に入り、私たちとは別れ、朝帰りをしました。ちなみに、我が家の犬の名前は「くー」猫の名前は「ルー」 人間も呼び間違えますし、犬も猫も聞き間違えます。



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