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深田明子の母の意見陳述
心神喪失と知的障害を演じる殺人者に


平成21年6月6日
矢野啓司


以下は平成21年6月4日の松山地方裁判所における被告人加茂広正の殺人事件に関する刑事裁判の公判で、被害者深田明子さんの母親深田時子さんが行った意見陳述の報告です。この意見陳述書が朗読される間、法廷内では各所からすすり泣きの声がしておりました。


まえがき

学校の先生になる前の社会経験として深田明子(享年23才)さんは松山市内のショットバーで店長をしていました。平成20年1月12日に常連客の加茂広正(当時49才)に店の外に連れだされて刺身包丁で刺し殺されました。加茂広正は誰かまわず若い娘に「俺の女になれ」と強要する嫌われ者でした。不幸にも明子さんは逆恨みされて刺殺されてしまったのです。

犯人は自宅から刺身包丁を持ちだし、明子さんを刺殺した直後に警察に自首して犯行の状況を詳しく説明しました。それでも、裁判では「犯行は覚えていない、取り調べ時の自供は警察に強要されて言わされたものだ」などと主張しました。また拘置所内では心神喪失を装っていました。加茂広正は統合失調症と知的障害を理由にして生活保護を受けて、その金で毎夜のように飲食街に出歩き手当たり次第に女性を口説いていました。

刑事裁判で姿を現した加茂広正は、法廷に入出するたびに裁判官や傍聴者に丁寧な挨拶をして、一生懸命に好人物である姿を見せていました。裁判は毎回午前と午後におよび長時間かかりました。加茂広正は自分の席にきちんと座り、両手をひざの上で握り、眼をしっかり開けて微動だにせずに法廷の議論に集中していました。そして全ての問題点をしっかり理解している様子で、議論に対応した表情の変化を見せていました。法廷で観察された加茂広正の様子からは、知的障害も精神障害も全く感じ取れませんでした。加茂広正は法廷の議論にしっかりと参加して、「殺意はありません」および「殺害時の記憶はありません」と詭弁と思われる論理を駆使して自己弁護をしました。

加茂広正に対する検察官の求刑は懲役20年でした。この報告を書いている時点では未だ判決は下されていません。加茂広正は49才で深田明子さんを殺人しましたので、懲役20年の判決でも69才で満期釈放されます。法律的には懲役者は刑期の3分の1の期間で保釈が可能で、通常の場合は刑期の3分の2を経過して保釈されることが多いようです。加茂広正の場合、56才で保釈対象となり62才になれば先ず間違いなく再び社会で自由な生活を再開する可能性が高いと推察されます。加茂広正は裁判の期間中強い意思で裁判官や傍聴人から好印象を勝ち取る努力を行い得る姿を見せていました。彼は、必ず最短期間で釈放されるべく、刑務所から好評価されるように頑張るでしょう。刑事裁判では強い意思の力で知的障害と精神障害を主張した加茂広正は、同じ強い意思で、刑期の短縮をめざした努力をするはずです。そして短期釈放をきっと勝ち取るでしょう。

加茂広正が50代や60代の前半で再び社会で自由な活動が許されることは、第2の深田明子さんの悲劇の発生を手をこまねいて放置することと同じです。私たちは若い女性の命を粗末にしてはなりません。健全な社会をつくるには、若い女性が安心して働き、結婚して子育てをできる社会の安全が確保されなければなりません。加茂広正から未来永劫社会生活を再開する可能性を剥奪するのは重すぎる刑罰であるという見方もあるでしょう。しかし、加茂広正のような人間が再び若い女性を牙にかけ、命をもてあそぶような可能性を与えてはなりません。何が私たちの社会の公序良俗であるかを考えれば、加茂広正は70才を超えるまでは自由が与えられてはならないと考えます。(矢野啓司筆)

殺される前日の写真。
左側は母親の時子さん。

深田時子さんの意見陳述書
ああ、明子に「悪い人はいない」と教えてしまった

私、深田時子は、故人深田明子の母親として、日本で正義が実現され、日本がよりよい社会になることを願い、本日の意見陳述をいたします。


1、アキちゃんゴメン

私達家族の人生の全てが、深田明子でした。昭和59年10月23日、世の中に生を受け、家族の一員になった時から、「5人家族」という幸せな形を丁寧に感謝しながら一生懸命に生きてきました。

この形を崩された日から、私達の苦しみが始まりました。命ってこんなに簡単ですか?殺していい理由、殺されても仕方ない理由ってありますか? 前の夜、「又、帰るから。」と約束して別れました。「酢レンコンとハンバーグ食べたいから。」って笑顔で見送ってくれました。命って何なんでしょう?

明子は初めての女の子で、家の中が一段と明るくなり、保育園・小学校・中学校・高校・大学と努力を惜しまず、成長を重ねてきました。保育園の時「お昼寝の時間、早く寝ると先生が褒めてくれて、それが嬉しくて寝たふりをした。」と笑いながら話してくれました。お迎えに行った時、ホントに嬉しそうに私の所にとんできました。がんばりやさんの一面は、もうこの頃にはみえていました。その光景を思い出すたび、明子の幼い時のしぐさが愛しくて、胸が痛みます。

小・中・高・大と、お友達も沢山出来ました。ほとんど勉強と部活動で過ごした学生時代は、明子の青春そのものでした。決して人の悪口を言うこともなく、むしろ淋しそうな子に声をかけるやさしい子でした。やさしい子だからいけなかったのでしょうか?

学校の先生になることを夢見て、明子は大学に進学しました。「命の尊さを学び、どんな状況の中にいようと、がんばれば幸福になれる。そういった経験を自分自身でたくさん体験して子供達に伝えたい。子供達と一緒になって学び、一緒に走り、一緒に泣いたり笑ったりできる先生になりたい。」と話をしてくれたことがありました。洋服店でバイトをすれば洋服店、豆腐屋のバイトをすれば豆腐屋にと、小さいことも大きいことも、その時その時を真剣に、一生懸命生きる姿をみて、明子の背中に教わることが沢山ありました。

命の尊さを学校で学び、家庭で温かさを知り、地域の方々に育てていただきました。出会った人の全て、目で見たもの、体で触れたもの、いろいろなもの全ては、明子の成長にとって必要なものばかりでした。その中で、悲しいことも苦しいことも、いつも自分の力で乗りきってきたと思います。そんな生き方を、おそらく明子は、自分らしい生き方として、自信を持っていたと思います。明子はまだ、23歳になったばかりでした。今回の事件があって、教育実習で「深田先生、深田先生。」と、慕ってくれた生徒達の心も傷つけてしまったことは、明子にとって無念でしょう。

私は明子に、「世の中にはいろいろな人がいるけれど、皆一生懸命生きている。悪い人はいない。ちょっと自分とくいちがう人がいても、時間をかけてかかわればかかわるほど、いい人だったりする。その人から学ぶものも沢山あるから。」と、教えてきました。その時に「人間っていいな、と感動するよ。」と話してきました。明子は、何かにつまづいても自分で乗り越え、「母の言うとおりだったよ。母、すごいね。」と必ず言ってくれました。でも、私は間違っていました。明子に申し訳なくてたまりません。

アキちゃんゴメン・・・のびのびと明るく育ってくれていたのに。母さんは、アキちゃんが安心して生きていける社会だと思っていた。でも、アキちゃんに、母さん達大人が教えてあげなければいけなかった。この世の中には、悪い人もいるという事を。


2、どなたか、明子をしりませんか?

被告人に会ってしまった。この事だけが、明子にとって必要のないことでした。できることなら、1月11日の日に戻りたいと、何度も何度も手を合わせ、祈ってはみたのですが、叶わないようです。何人かの人に聞いたことがあります。「死んだとしても、殺された場合、もしかして還ってきたという話を聞いたことがありませんか?」と。みんなから、「ないです。」と言われました。

アキちゃん・・・母さん 父さん 伸也君 賢太君の声が聞こえますか?

1年4ヶ月余り、どこで何してる?一人で淋しくない?1月11日に松山まで送っていかなければよかった。あの日が、母さんとアキちゃんの最後の日になってしまった。そんな馬鹿なことってありますか?信じられません。ピースをしているアキちゃんの写真を見ると、アキちゃんの写真に頬ずりをして、頭をなでて、母さんは涙が止まりません。あれほど健康でたくましく育ったアキちゃんが、突然、母さん達の目の前から消えていなくなってしまいました。

どなたか、明子をしりませんか?見かけた人は、母が待つ自宅まで電話連絡して頂きたいのです。明子には、みんなが待っているから、はやく帰るように伝えてください。母さん達は、何にもしてあげられなかった。アキちゃんが辛くて苦しい時、一緒に居てあげなければいけなかったのに、それができなかった。命かけて守らなければいけない我が子を、守れなかった悔しさは、一生拭い去ることはできない。一生、被告人を許さない。


3、被告人加茂広正を許さない

私は、三人の子供を生きがいに生きてきました。何一つ大きい病気もせず、元気に育ってくれたことを、「おかげさま」と感謝していました。どれほどの贅沢も望んでいませんでした。ただ、ただ家族五人が健康にと願うだけ。願いは、ただそれだけで、それ以上のものでもなければ、それ以下ものでもない、当たり前の幸せが、一瞬にして、身勝手な一人の男の行動によって、奪い取られてしまいました。

この現実を、被告人に知ってもらわなければいけない。あなたにも、私達と同じように家族が居たはずです・・・失うことの悲しみは、わからないはずがありません。あなたとは30才ほども年の差のある、私達の最愛の娘の命を奪ってしまいました。この事実は、どう言い訳しようと、忘れてしまったと言い逃れをしようと、決して許されることではありません。絶対に、絶対に許しません。

明子は、ちゃんと知っています。被告人がどんなにひどいことをしてきたかを。はじめは、こんなに恐ろしい人だと思っていなかったはず・・・もともと誰にでもやさしい子で、人を疑うことを教えていなかったゆえ、とりかえしのつかないことが起きてしまいました。

明子の無念さは、私達が明子にかわって言い続けます。将来、出会った人と結婚して、子供もでき、幸せな家庭をつくるはずの明子の未来は、被告人により、奪いとられてしまった。この事実が許されるなどとは、決して思わないように。私達は明子の将来がどうのというよりも、今、明子に生きていてほしかった。いてくれるだけで希望と勇気をもらって生きていけた。家に帰ってきた時には、「わたしら、幸せで、幸せでたまらんね。」と、よくアキちゃんと笑いながら言って、抱き合っていた。殺される前の日もそうでした。被告人が手をかけるまで、明子は笑顔のままでした。・・・全て、あの事件の日から私達は生きる意味さえも見失っています。被告人に、全てを奪われてしまいました。


4、被告人加茂広正の殺意

被告人には、明確な殺意があったはずです。事件当日、被告人は刺身包丁を持って、自宅から外出しました。この時、自宅には2丁の包丁があり、わざわざ切れ味のよい方を選び、持ち出しています。

「なぜ包丁をふきんで包んだのか?」の問いに、被告人は、「あやまって転んで、自分がけがをしてはいけないから。」と言いました。身勝手で許せない言動は見逃さないでほしい。もうすでにこの時点で、明子の命を奪う確かな目的があり、その目的意識は、自宅を出てから、明子を刺し殺すまでずっと持ち続けていたからこそ、実行に及んだのです。被告人は、店の前で明子を待ち伏せし、道路まで連れて行ったのですね。

明子に包丁なんか見せていない。見せていたら、明子はついては行かない。疑うこともせず、言われたとおりについていった明子に、どうしてそんな恐ろしいひどいことができたのですか?被告人は、明子だと明確に意識して、犯行におよんだと、私は思っています。明子に狙いを定めて殺したのであって、錯乱して、身の回りにいる女性を無差別に殺害したのではありません。深田明子を殺す、強い意思があったに違いありません。

だからこそ、包丁でさした後、救急車を呼ぶことも、緊急処置をすることもなく、その場から逃げています。殺した後の、被告人の行動がそれを証明しています。明子が致命傷を受けたことを確認して「現場で、現行犯で取り押さえられることを望まない」明確な意思を持って逃走したのです。


5、被告人加茂広正の冷徹な意思の力

被告人は、東警察署に出頭して凶器を差し出して犯行を述べ、自首しました。犯行を認識し、記憶し、警察に証言するという継続性がある明確な意思があったとしか思えません。警察に出頭すれば、自首で罪が軽くなると考えていました。

法律と社会制度を理解する認識があり、それに基づいて自分に有利な行動を選択して実行するという冷徹な意思の力があります。被告人は、心神耗弱なんかであるはずがないじゃないですか。自首は命とひきかえにして罪を軽くできるほどの重みはないと思います。あってはいけないと思います。

被告人は、知的障害と精神障害のふりをしています。逮捕されてから留置所の中で、演技を始めています。持続的に演技する人間は、強い意思のある証明です。明確な意思の力があります。心神耗弱のはずがありません。刑法第39条で減刑されることなく、厳しく処罰していただきたいのです。

被告人は、裁判直前になって弁護人を解雇しました。そもそも知的障害で精神障害である人間がどうして自らの意思で、弁護人の仕事の評価をして解雇するという、高度な知的決定を下せたのでしょうか? 被告人には、罪を逃れるという目的意識を理解した強い意思があるからこその行為で、意思を実行する決意があるから、殺人という取り返しの付かない結果になった事実が、しっかりと見えているはずです。

被告人には、意思を実行する決意がありました。私達の苦しみが始まった日から、1年4ヶ月もの間、被告人が減刑される理由をずっと考えていたのかと思うと、一日の減刑も許せません。刑事裁判の法廷で被告人には、自信満々の態度がみえました。体は動かさないけれど、目の玉だけがギョロギョロとしていました。その姿を見て私は本当に不愉快な感触をおぼえました。被告人は私達の思いとは別のところで、とても健康的でした。


6、人格障害を理由にして減刑してはなりません

被告人には、人格障害があります。人格障害があるからこそ、自ら意図して明子の命を奪い、罪から逃れる意図を持って社会をだまそうとしているように思います。被告人に人格障害があれば、それはむしろ厳罰を加えるべき理由になるのではないでしょうか。ありもしない理由をつけられればつけられるほどに、被告人を減刑してはいけない事がはっきりわかります。

人格障害があるため、冷静に妄想を演じるのです。

被告人を、人格障害を理由に罪を軽減すれば、将来被告人が罪を犯さないように導く矯正教育の効果を、期待できるとは思えない。人格障害の人間には、人格障害があるが故に厳しい処分が必要です。人格障害を、罪を軽減する理由にしないでほしいのです。私達は、どんな理由をつけても、被告人を、許すことはありません。


7、加茂広正は忘れたふりをしている

被告人は、殺人という重大な罪を犯したことを意識しているからこそ、忘れたふりをしています。被告人の行動の全ては、罪を逃れるという目的意識で演技されている。いつまでその演技ができるのでしょうか。演技をして罪を逃れようとするより、罪を認めて反省することが、人として成すべき事ではないでしょうか。明子を殺したその時を覚えてない筈がありません。私達は、うそや演技にだまされるほど、簡単な日々を過ごしてはいません。被告人が覚えてないと言えば言うほど、罪を重くして下さい。


8、加茂広正は心神喪失者ではありません

1回でも統合失調症と診断された記録があれば、犯罪行為の責任が免除されるのであれば、誰でも統合失調症を理由に罪を逃れられる可能性があります。殺人犯人が罪から逃れる方法を教え、命を軽く流してしまうような社会になってほしいと願う人は、いないはずです。

被告人は、心療内科クリニックに通院していました。心療内科に通院していたと言っても、精神科病院への入院患者ではありません。ましてや精神的な症状が甚だしくて措置入院や、閉鎖病棟への入院処置がとられていた患者でもありません。客観的な状況を見れば、被告人は、市内で普通の人間として生活ができていたのです。

殺意を持つことは、そもそもそれ自体が異常です。殺意を持ったことが、刑法第39条で免責される理由であってはいけない。人を殺していいはずがない。「明子を殺してよかったのだ…」という理由を、無理矢理こじつけて探さないでください。


9、殺人こそ最大の人権侵害です

人権を理由にして、被告人の将来の更生を考え、罪が軽減される理由になるとは考えたくありません。被告人は、殺人という最大の人権侵害を犯している自覚がありません。被告人は人権侵害を繰り返すことに慣れているようにも、思えます。

明子は、永遠に私達の所には還ってこないという事実があります。これほど残酷でひどいことをされた私達は、生きていかなければなりません。

日本国憲法に規定された、基本的人権は、生きていることが前提のはずです。生きているからこその、権利です。深田明子は、被告人の理不尽な行為により、生きる権利、それ自体が奪い取られました。殺人こそが、最大の人権侵害です。


10、明子が今も生きている夢

明子の夢を、1年4ヶ月の間に何回か見ました。一緒に買い物をしていました。安いものばかり一生懸命選んでいる明子は、ゆったりとした表情でした。思うだけカゴにいれて、ワーッと嬉しそうな声をあげてよろこんでいました。「さあ、アキちゃん帰ろう。」と言うと、淋しそうに笑って首を横に振りました。「帰ろう。」と言っても還れない明子の表情に身がきられました。

ある時は、明子からのメールが届きました。「今アメリカで勉強してる。アキちゃんは貧血起こしただけなのに、日本では大変なことになってるみたい。大丈夫よ。(笑)」とありました。ああ、やっぱりね。おかしいと思った。あんなにいい子が、人に殺されたりする訳がない。貧血だったんだ。と。本当にうれしかった。夢でした。

アキちゃんが、お父さんの夢の中で「アキは還ってきたけん、もうどこにも行かんけんね。ずっとおるけんね。」と言ってくれたそうです。本当に嬉しかった。もう、夢でしか会えなくなってしまったんじゃね。夢でもいい。アキちゃん還ってきてくれたんやね。ありがとう。

私達家族は、これからどうやって生きていこうか。平成20年1月12日のあの日から、見つけられずにいます。裁判が長びいたのは、被告人のうその言い訳を、明子が許していないからです。私達は、死ぬほど苦しいけど、殺されてしまったアキちゃんは、もっと悲しいね。私達は、被告人に厳罰が下されるよう、今度はアキのために家族4人が、命がけでがんばります。強く闘う力を、アキちゃんがくれました。アキちゃん、見ときよ。


11、明子の悲劇を繰り返してはなりません

被告人のお母さんから、手紙が届きました。「許されるものなら」と書かれていました。許すわけにはいきません。許せるはずがありません。私達は、絶対に許しません。事実と向き合うこともせず、うその言い訳ばかりをくり返している被告人を、どう許せというのでしょうか。許せるわけがありません。

被告人のお母さんの手紙の中で、ちゃんと教育ができていないこともわびていました。本当にわびる気持ちがあるのなら、まだ間に合います。犯した罪の重さを受け止め、厳罰を受けるように、最後の教育をしてください。今しなければ、加茂広正は再び同じ事をくり返します。釈放されたら必ず次の犠牲者を出します。明子の悲劇を繰り返してはなりません。

深田明子および、その家族、いえ、遺族は無念です。深田明子は、被告人に、普通に人生を楽しみ、普通に人生を終える権利を、全て奪い取られました。この事実に、言い訳の一つでもあっていいはずがありません。

裁判所にお願いします。どうか明子のような若い女性が、安心して生活できる社会を作ってください。それには、被告人の、若い女性をもてあそび命を奪う詭弁を、許したりしないでください。そして、遺族である私達が、これからも少しでもやさしい気持ちで社会にむかい生きていけるように、深田明子を殺人した加茂広正に厳罰をくだしていただきたいと思います。

わずか数枚の紙切れに、精一杯の思いを込め、一生懸命書きました。何度も何度も書き直し、それでも言い切れない、書きつくせない無念さを持ちながら、意見陳述をしています。どうか、のどが引きちぎられ、血が出るほどの家族の思い、家族の叫び、そして、明子の無念さを、しっかりと受け止めていただけることを、心からお願い申し上げます。

私達は、被告人に厳罰が下されることを願っています。
  被告人を死刑にしてください。

これで、深田時子の、本日の意見陳述を終わります。

平成21年6月4日

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