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第71回  なんでもかんでも無料時代がやってくる!?


 いやーー、皆さん、おひな様はしまいましたかっ?!
 ……さてっ!!かなり間が開いてしまいました。
 一体加藤は何をやっていたのかっ?!ってことなのですけど。

 1月にウチの大内厚雄が稽古場でダンス公演、1月末からウチの仲村和生プロデューサーがプロデュース公演、そして3月1日にキャラメルボックス本体が宮部みゆきさん原作の音楽劇『サボテンの花』を開幕、と、なんだかんだで忙しい日々を送ってきていたのでした。

 そんな中、唐突ですが僕が今最も注目しているのが、AppleのケイタイiPhoneでもPS3でもWiiでもなく、YouTubeとGooGleなんです。

 「Web2.0」って言葉が言われ始めたのは、去年の春ぐらいからでしょうか。
 簡単に言えば、パソコンでいちいちいろんなアプリケーションを起動してそれぞれの仕事をするのではなく、ウェブブラウザ(Internet Explorerとか、Netscapeとか、FireFoxとか)だけで、ウェブを 見ることはもちろん、メールからワープロから表計算から、なにしろ全ての仕事が無料でできてしまうようにしてしまえ、という発想、だと僕はとらえています。

 ちょっと話は違いますが、電話のみの携帯電話が普及し始めた頃に僕が困っていたのは、なにしろ外出するときに身につける衣服やカバンのポケットには限りがあって、サイフ、定期入れ、小型の手帳(アドレス帳込み)、小型の電卓、カギ、ハンカチ、ティッシュ、ウォークマン、コンパクトカメラ、そしてタバコとライター(←これは限定的)、というあたりでかなり限界に近い状況だったところに携帯電話が増えてしまった、ということでした。
 が、その後、携帯電話にカレンダーやスケジュールが書き込めるようになり、電卓も標準装備され、アドレス帳が組み込まれ、メールも読めるようになり、しまいにゃぁおサイフケータイなんてゆーのも出た上に定期券(Suica)まで組み込まれ、音楽まで聴けたりテレビが見られるようにまでなってしまったわけですよ。
 いやー、そのうち、「ハンカチ機能付き」とか、「自宅のカギもタッチ一つで!!」とか、懐中電灯付き、とか、果物ナイフ内蔵、とか、とにかくなにもかもが携帯電話一つ持ち歩いていればOKな時代が来ることは間違いありませんな。

 ……というのと似ていると思うのですが、パソコンの世界でも、いつまでもアプリケーションでお金を儲けようとしている人たちがウキウキな時代は終わりを告げようとしているのです。

イラスト もうすでに、エクセルやワードのファイルをそのまま編集できてネット上に保存できる、という無料のサービスが始まっていますし、デジカメで撮った写真を無料でプリントして(広告付きですが)家に送ってくれる、というものまでありますね。
 つい少し前までは、「乗り換え案内」とか「国語辞典」とか「英和辞典」とか「世界地図」なんていうソフトはいっぱい売っていて、わざわざ購入していたわけですが、もう今ではブラウザを開けばたいていのことが無料でできてしまいます。

 こういう「なんでも無料」のサービスというのを始めたのが、そもそもGoogle(グーグル)。ヤフーとグーしかなかった検索サービスの世界に、突然「検索速度が速い」という噂だけで広まっていったのが、グーグルだったのです。
 そのグーグルが、もう、なにからなにまでブラウザ上でタダでやってしまえ、収入は広告だけでなんとかしてやるっ!!と、やり始めてしまったものだからもうたいへん。他の会社も、それに追従していくしかなくなってしまったのです。
 そもそもブラウザ・ソフト自体が、タダです。というか、パソコンを買うと付いてくるわけです。で、しかも、それらも次々と新しい機能を持ったものが開発され続けているわけです。普通にパソコンを使っている人は、Windowsマシンに付いてきた「Internet Explorer」や、Macに付いてきた「Safari」しか使っていなかったりするのかもしれませんが、現在、僕らの間では「FireFox」がメイン。Macの人たちは、是非「Camino」を試してみてください。

 いやぁ、それにしても大変な世の中になってきたものです。

 このままいったら、世の中の広告代をぐぐーんと上げて、無料で乗り放題の私鉄やバスとか、予告編をやる時間を大幅に増やして無料で見放題の映画館とか、ずーーーっと耳元で何かの宣伝を呟き続けられるのさえ我慢すれば無料のマッサージやエステとか、室内の全ての備品に何かの企業の広告入りで冷蔵庫の中のものやシャンプーなどのアメニティの感想アンケートに答えさえすれば無料で泊まれるホテルとか、表面にいちいち広告が立体印刷された野菜ばかりを売っている無料の八百屋さんとか、電源を入れると必ず最初に何分間かCMが流れる無料のテレビや10 分に1回CMが聞えてくる無料のエアコンとか1曲終わるごとにCMが流れる無料のiPodとか最初から消したくても消えないようになっているCMが収録されたDVD-RやCD-ROMやDVテープとか、必ず時報が鳴ってCMが流れる無料の時計とか紙を切るたびにCMが流れるはさみとか、飲み終わった途端にCMが流れるビールとか、あっ、好きな飲み物のボタンを押すとCMを3分見ればタダで好きな飲み物が買える自動販売機とか、全ての紙に広告が入っているティッシュとか、…………もう、なんでもかんでも広告だらけでタダになっていっちゃうんじゃないでしょうかっ!!

 でも、それを続けていると、最終的にはなんでもかんでもタダになるので広告する必要がなくなっちゃってしまうわけで、全ての広告が「税金は何日まで」っていう公共広告だけになっちゃったりして……。

 ほんとに、お金の流れ、っておもしろいですね。
 「儲けたいから広告を出す」っていう人と、「儲けたいから広告を取る」っていう人と、どっちがカシコイか、って言ったらやっぱり後者だと思うんですね。広告を出したいと思わせるものを作る、とか、出したいと思わせる広告のやり方を提案する、とか、そういうアイディアに溢れた人たちには本当に驚嘆させられます。
   ……なんてことを書いていたら、「2月22日、アメリカ・グーグル、「Google Apps Premier Edition」を発表」というニュースが流れてきました。
 つまり、Googleの無料サービス(メール、音声対応IMサービス、Googleカレンダー、Webページ作成ツール、スタート・ページ機能)を法人向けにパワーアップした有料サービスを始めるのだそうです。しかも、電話サポートは24時間365日!!  なるほどーっ!!
 無料サービスで慣れさせておいて、ある程度習熟したところで、「もうちょい良いサービス」を有料で提供する、ってヤツでしたかぁっ!!
 ちなみに、この有料バージョンは広告を表示させないこともできるのだそうです。そりゃそうだよなぁ。

 つまり、鉄道で言えば各駅停車は広告だらけで無料だけど、特急は快適で有料、みたいな商売ですね。
 そういえば、歯医者さんでも銀歯までは保険がきくけど、セラミックにしたら無茶苦茶高いですし。
 神社でも、お賽銭をちゃりーんとしてお参りするぶんにはタダで境内に入れるけど、いざ「おはらい」とかをしてもらうために建物の中に入るためにはけっこうなお金がかかる、みたいな。

 んーーむ。なかなか「なんでもかんでも無料時代」には遠い感じですかね。
 でも、この「Google的」な発想は、これからもいろんなところで活用できると思うのです。
 たとえば、演劇だったら、自分のところの作品を宣伝していただくために平日のお立ち見は無料、とか。あ、すでにキャラメルボックスでは「ブログライター招待」というのをやっていて、プロのマスコミの人たちではなくて、普通のお客さんの中で自分でブログを持っている人たちに、褒めなくても良いから何か書いてね、っていう約束で公演の初日近辺に無料ご招待していたりします。
 また、企業と組むとしたら、ある特定の企業の新製品を受付で買ってくれた人は無料で見られるとか、開演前に30分ぐらいの「企業宣伝短編演劇」をやって、それをちゃんと見た人は本編の演劇は無料、とかっ!! 普通に「サンプリング」とか「広告」じゃない、演劇ならではの企業との組み方、っていうのもありそうですね。

   ただ、結局最後までタダにならないであろうものは、人件費。機械ではできない、人間の力でなければできないことや、アイディアを出す、とか、表現する、といったクリエイティヴな作業も、絶対にタダにはならないでしょうね。
 タダで手に入るものはちゃんとタダで手に入れて、お金を払うべきところや払いたいところにちゃんと払える、っていう素敵な時代がやってくるといいですねっ!!
 「格差社会」の解決には、きっとこんな「Google的」なアイディアが活きてくるんじゃないかと思うのです。

2007.3.6 掲載

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