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第59回 歯科の救急
いやー、このお正月は大変でした。
ウチのヨメは今、妊娠7ヶ月なのですが、年末に突然おやしらずが痛み出して、歯医者に行ってみたらおやしらずが横から生えてきていて、特に虫歯になっているわけでもないけどどんどん腫れてくる、という状況におちいったのです。
で、街の歯医者さんでは、妊婦でも大丈夫な麻酔、というのができない、ということで、総合病院を紹介されました。ところがその総合病院に連絡したところ、なんと抜歯の手術は2ヶ月待ち、とのこと……!! なんぢゃ そりゃ?!
あまりにヨメが痛みをこらえているので、僕が胃腸炎でお世話になった小さめの総合病院に口腔外科というのがあるのを発見して連絡してみたところ、とりあえず来てください、とのこと。
で、行ってみたら、腫れが引くまで抜歯はできない、とのこと。そりゃそうだ。
そこで、妊婦でも大丈夫だという抗生物質をもらってきました。
ところが、おそらく通常の人には使わない弱めなものだったのでしょう、腫れが引くまで数日かかってしまいました。
その間、ずっと痛みをこらえる日々のヨメ。
で、ほっとしていたら、また数日後に痛みが。
な・なんで……?!
そこで再び小さめの病院に電話してみたら、もう年末で、1月4日にならないと口腔外科の先生は来ないから、抗生物質は出せない、痛み止めならなんとか、とのこと。で、とりあえず痛み止めはもらってきたのですが、そんなの対症療法そのもの。
そこから再び、ヨメのほっぺは腫れ上がってきました。
ヨメの表現を借りると、「一晩中耳元で道路工事を本気でやられている感じ」。
うへーーーっ!!
で、「もうこれ以上ダメっ!!」というところまでいったのが、元旦。当然おモチなんて食べられずに、一日中横になってうなっているヨメ。
そこで、精神科医の弟の家に行く用事があって行ってみたら、「東京医科歯科大学の付属病院に行ってみたら?」との、なんともストレートかつ明快なお答え。
なんと、東京医科歯科大学の歯学部付属病院では、歯科の救急を受け付けているそうなのです!!
帰宅してその話をすると、もうおたふくかぜかよ、ってくらいまでほっぺたが腫れ上がったヨメの瞳が「きらりーん」と光りました。
「歯科の救急」。
これはもう、想像だにしていなかった展開です。
だって、「救急」って、ケガや病気で生きるか死ぬか、というときのためのもの、という先入観があったので、まさか歯科の救急があるなんて、青天の霹靂と申しますか、はきだめに鶴、と申しますか(←全然違う)、もう、僕らの想像の域を超えた存在だったというわけです。
急いで東京医科歯科大学歯学部付属病院をインターネットで調べてみたところ、あるわあるわ、地獄のような苦しみを抱えてきたヨメにとって、まさに夢のような診療科の数々が……!!
「口腔外科」はもちろん、「■■歯科」「●●歯科」、そして魅惑的な「ペインクリニック」……!!
もう、ビルまるごと歯科なわけですよ!!
これって、小学生の時にオーディオが大好きだった僕が、生まれて初めて秋葉原に行って「ラジオ会館」に入ったときの感動に似ていました!!だって、ビル全部が電気屋さん、なおかつ、「ボリューム専門」「コード専門」「メーター専門」なんていう、もう、めっちゃ細部にわたった専門店がひしめいていて、大興奮したことをはっきり覚えております!!
そんなわけで、つまり、救急で行って、歯が痛い、って言ってるのに肛門科の先生が出てきちゃう、なんてことがないわけで、少なくとも、どんなに専門は違っても、当直の先生は誰でも歯医者さんなわけですよ!!
もう、それだけでヨメは生きる気力が湧いてきたようで「もう、あたし、絶対、明日行くぅぅぅっ!!」と元気に眠りにつきました。
すごいですね、「希望」って。
そして、翌朝、お茶の水にある東京医科歯科大学歯学部付属病院へ。
当然お正月ですから、がらーーーんとしていましたが、建物の裏の救急受付という小さな扉を入って、救急診察室へ。
……ななななーーーんと、救急の診察室に並んでいたのは、ベッドではなく、全部歯医者さんの椅子……!! きらりーーんっ!!
きっと、ヨメにはいかなる花園よりも輝いて見えたことでしょうっ!!
そして、「どうしました?」と聞いてきてくれたお医者さんの胸のプレートには、「●●義歯●●歯科」(←すみません、興奮していて覚えていません)と書いてありまして、とにかく、やっぱり、歯医者さんっっっっっっ!!
……あぁ、新年早々から、歯医者さんが待っていてくれた……!!
そして、ヨメは即、診察椅子へ。
いろいろと話を聞かれて、でもやっぱり腫れている間はどんなに痛くても抜歯はできない、ということを語られ、でも、すでに切れてしまっていた妊婦OKな抗生物質と痛み止めを処方していただくことに成功!!
その時のお医者さんが、若い先生だったのですがとっても素敵な方で、「そーなんですよ、妊婦さんは抵抗力が弱まっているのとカルシウムがこどもに取られて不足しているのとで、この病気になりやすいんですよ。おやしらずの根元がやわらかくなっちゃう、という症状で、ちゃんと病名もあるくらいなんです。●●●●●●っていうんですけどね(←やはり覚えていません)。だいたいね、結婚したらおやしらずを抜かなきゃいけない、っていう法律を作るべきだと思うんですよね、みなさん、こうやって苦しむんだから」……と、歯科医師界の加藤昌史かよ、ってくらい、とうとうといかにおやしらずが妊婦を苦しめてきたのかを語ってくださいました。
やっぱり、痛いときや苦しいときは、その専門の人に「わかるわかる。たいへんよね」って言ってもらえるのが、いちばん安心するんですね。
そして、なんとなく落ち着いたヨメは、ちょいと「ちゃんと毎食後口の中を洗っていなかったでしょ?」というご指摘を受けて思い当たる節があったらしく、おとなしくなって、すごすごと二人で帰宅しました。
とりあえず、腫れが引く、というお薬をいただいて、かなり安心。
が、その晩は、「工事現場のオーライオーライって声がうるさい感じ」の痛みで乗り越えたのですが、翌朝、痛みはおさまってきたものの、腫れは引くどころか、ひどくなっていたのです!!
ところがヨメは「きっと、今、お薬がここで戦っているのよ!」とめっちゃ前向きな発言。
……あぁ、お医者さんってなんて偉大なんだろうっ!! 医大の偉大なお医者さん、ありがとーーーーっ!!
そして、1月5日。ついに、「昨日はぐっすり眠れたのよー」とのこと!!
よかったぁぁっ!! ありがとう、東京医科歯科大学歯学部付属病院さまっ!!
……あっ、そうなんです、3月に、3人目が生まれる予定なんです、ということを書こうと思っていたら、もう文字数が……!!
……乞うご期待っ!!
2006.1.10 掲載
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