第52回 20回目の結成記念日
今日6月30日は、私たち演劇集団キャラメルボックスが結成された日です。
しかも、今年で20年目。
こういうのって、普通の企業やらなんやらでしたら、この日に特大のパーティーを開いてお祝いするのかもしれませんが、僕たちは何もしません……。
かっこつけるわけではありませんが、僕たちにとっては、結成された日が6月30日だからといって、「あっそう、で?」という感じ。
毎日のステージを完璧にいいものにしていくこと、明日のステージを良くしていくこと、次の公演を今回よりももっともっとおもしろいものにしていくこと、そういうことが、僕たちのすべきことであって、過去に自分たちに起きたことについて、振り返ってお祝いする、なんていうことは、興味もないうえに、時間の無駄、に思われてしまうのです。
キャラメルボックスの年間の公演予定は、まず12月25日を中心に組み立てられていきます。
つまり、1988年以来、キャラメルボックスは「クリスマス公演」を行い、その千秋楽がその年の仕事納め、というリズムで年間の活動をしてきたのです。何度か、年末まで公演が及んでしまったことや、越年の公演があったこともありました。が、基本的には12月25日が締め。
そこで、クリスマス公演の日程がまず組まれます。そして、次に大事なのがサマーツアー。作・演出の成井豊がもともと高校の教員だったことから、春休み・夏休み・冬休み、というのがキャラメルボックスの公演をやることができる時期だった、ということもあったのと、「季節感」を大事に作品を作ってきた、ということも影響しています。
だから、春の公演は「出会いと別れ」がテーマであることが多く、サマーツアーは夏らしい爽やかな舞台、そして冬はクリスマス気分満載、という感じでやってきているのです。
そうしてみると、この6月30日という日は、春の公演と夏の公演のちょうど狭間。
しかも、1年のちょうどど真ん中。
年間4公演をやろうとすると、ちょうどこの日は、お休みに当たってしまうのです。
それが証拠に、ちょっと調べてみたら、6月30日に公演があったことは、20年間で、なんと一度もないのです!!
僕らにとって、「春」は3〜5月。「夏」は7〜9月。「秋」は10月。「冬」は11〜12月。ほーら、6月はどこにも入ってないでしょ?
そんなわけで、毎年6月30日は、劇団員みんなに忘れ去られた記念日だったのです。
が、今年。
結成20周年記念公演を2公演やり終えたのが、6月26日。
そして、その数日後にやってきた、この結成記念日。
公演中に、カーテンコールのご挨拶で役者達が「6月30日に結成20周年を迎えます」と語り続けてきたこともあってか、 キャラメルボックス・ホームページの掲示板には、未だかつて無かったのでは、と思うほどのお祝いメッセージが届き、僕のところにも、数百通に及ぶお祝いメールが届きました。
これには、正直言って、驚きました。
メールを書く、とか、掲示板に書き込む、という能動的な行為というのは、実はなかなか生まれてこないことです。
ブログにコメントを書くだけでも、普通の人にとってはかなり勇気がいることですが、ブログの場合はかなり気軽な雰囲気なのでちょちょいと書ける、ということもあるかもしれません。
が、やはり、このお祝いメールと掲示板書き込みの量は半端ではありません。
しかも、皆さん、ものすごく長い言葉をつけてくださってきています。 「うわぁ、すごいなぁ……」と思いながら過ごしていたのですが、ふと、僕は、自分の大間違いに気づきました。
僕たちの結成記念日は、僕たちのものではないのです!!
照れくさいのですが、僕らがお客さんに祝われる日、だったのです。
お客さんにとって、結成記念日というのは、その日にこの劇団が結成されたから今があり、自分を楽しませてくれるこの劇団が続いてきているんだ、ということを思い返す日。
つまり、僕らは、謙虚すぎて、お客さんたちの「祝いたい」という気持ちを無視し続けてきたということなのではないか、と思い当たりました。
基本的に、キャラメルボックスのお客さんたちは、僕らに何かをしろ、と「強要」することがほとんどない、素晴らしいお客さんばかりです。してくれたらいいなぁ、作ってくれたらいいなぁ、というご要望は遠慮無くくださるのですが、僕らの負担になりそうなことだろうなぁ、と気遣ってくださることができる大人の方々ばかりなので、「20周年を思い切り祝わせろ!!」なんていうことを押しつけてくる方は、本当に一人もいらっしゃらないのです。
もちろん、1年を通して「20周年記念公演」をやり続けていくので、それら全てが、お祝いではあるわけです。しかし、やはり、こういう「節目の日」というのは、お祝いしたいと思うのが人の常なのでしょう。
なんでもっと早くこのことに気づかなかったんでしょう。 だって、あと4日だけ公演を後ろにずらせば、この日をみんなでお祝いすることができたはずなのですから。
んーーーーむ、僕らって、まだまだ鈍感でした……。
2005.7.3 掲載
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