第37回 「学習机」は秘密基地
うちの長男・こうちゃんは、1年生。もうすぐ2年生。なのですが、実は今まで「机」がありませんでした。
というのも、まだ1年生のうちは、親の目の届くところじゃないとお勉強なんてしないだろう、と思っていたからです。
ところが、誤算がありました。次男の存在です。次男のしんしんは、おにいちゃんが大好きなので、 おにいちゃんがいるときにはずっとおにいちゃんにべったり。どこに行くにも、おにいちゃんについてまわり、ちょっかいを出し、
宿題をやっているときも脇でぺちゃくちゃしゃべっているのです。
それと、「自分のスペース」が無いせいか、 「使ったら元に戻す」ということを決めてはいてもそのスペースに愛着を持てないせいかなかなか約束を守れずにきていました。
そのせいで、ただでさえ親が忘れん坊なのに、輪をかけた忘れん坊になってしまっていたのです。
そのことを僕はずっと気にかけていたので、日曜日、ついに動きました。
ただ、家具屋さんとかで売っているいわゆる「学習机」というものには、どうも懐疑的でした。
アルミラックと板で、オリジナル学習机が完成
僕自身、子供の頃には「学習机」を買ってもらって大喜びした覚えはあるのですが、いわゆる既製品というのは、机に限らず、 必要ないものが必ずついているわけです。たとえば、引き出し。だいたい、引き出しの奥の方なんて、使いますか? 僕は使いません。
もう、会社のデスクの引き出しの奥の方なんて、1年に1度も見ればいい方。 要するに、僕のような怠け者にとって、日常で視界に入るところしか、有効な自分のスペースではないというわけです。
僕でさえそんなですから、自分の子供はもっと怠け者であることは間違いありません。
なので、僕は彼のために机を作ってあげることを決意しました。
もっとも、作ると言っても大工作業ではありません。あ、ちなみに、僕の自分の部屋の棚は自分で木材を買ってきてノコと釘を使って作ったモノ。 なにしろ演劇やってますから、たいていの作業は自分でやっちまいますが、今回は違います。
なんたって、毎月1センチずつ身長が伸びている育ち盛りの子供ですから、固定した高さのものでは意味がありません。
では、どうするのか。
いわゆるアルミラックを使います。商品名で言えばエレクタです。これなら、数センチ単位で高さを変えることができます。 が、ただ用意されているエレクタの机を買ってあげるわけではありません。机の両サイドとなる部分をエレクタで組み、
そこに24ミリ厚の集合材の板を乗せる、というただそれだけ。そうすれば、空いているスペースの幅いっぱいの板を買ってくれば、 特大の机ができあがる、というわけです。
しかも、既製品の机だと「傷つけないように使いなさい」とか「いたずら書きはやめなさい」とか「シールは貼らないで」とか、 そういうことになるわけですが、なにしろたった3000円のただの板ですから、書こうと削ろうと、なんでも来いです。
でこぼこになったらやすりのかけ方を教えてあげればいいわけですし、 板の角でけがをしたりしたらカンナのかけ方を教えてあげながら角をRに(曲面に)してしまえばいいわけですし、いざとなったら、
裏返せばいいわけですし、最悪の場合は板ごと変えちゃっても痛くもかゆくもありません。 ちなみに、僕の自宅の仕事机も同じように、大きな板を机の上に乗せて使っているので、
軽いカッターナイフ作業も平気で机の上でやってしまいます。
そんなわけで、エレクタのサイズに合わせて集合材を切ってもらい、みんなで持って返ってきました。
そして、エレクタの組み上げ。これは、こどもたちにふたりとも手伝ってもらいます。 天板をこうちゃんに持たせて、足を差し込んでいったり、入っていた袋をゴミ箱に捨てに行ってもらったり。
とにかく、この机は「お父さんが作ったモノ」じゃなくて、「お父さんと僕が一緒に作ったモノ」にしなきゃいけないわけです。
そうしてワイヤーシェルフが組み上がり、左側は棚になり、右側は将来引き出しになるであろう骨組みになりました。
そして、板をその上に渡すと……なんということでしょう(←「劇的ビフォーアフター」の感じで)、 そこには広大なこうちゃんの秘密基地ができあがってしまったのです。
勉強も収納も大喜びでやりはじめた!
ここが、ランドセルの置き場。ここが、帽子かけ。ここが、教科書の置き場。ここが、終ったプリントや問題集の置き場。 ここが、これからやる問題集の置き場。そんなふうに、それぞれのモノの帰る場所をいっしょに話し合って決めていってあげます。
なにしろ、棚を組み上げる段階から「ランドセルどこに置こうか」なんて話し合いながら作っているわけですから、思い入れが違います。 自分で決めた、ランドセル置き場。こんなに素敵なものはありません。
あまりにもうれしくて、組み上がった途端にお勉強を始めてしまうこうちゃん。
しんしんまで、おにいちゃんの机の隅で迷路のワークブックを始めてしまう始末。
しかも「しんしんも1年生になったら机作ってね」と、「しんしんも欲しい」とは言い出さないという、 「小学生のおにいちゃん」への尊敬と憧れの念までもが生まれてしまう結果に。
ついでに、部屋の中のちょっとへこんだデッドスペースの部分に、高さ180センチのところと100センチのところに、2本の突っ張り棒をつけました。 上は、お父さんたち用。下は、こうちゃんたちよう。ここに、自分の服は自分でかけてね、と言うと、
これまた大喜びでなんでもかんでもかけ始めました。
ついこの間まで「ポケモンの机がほしい」と言っていたこうちゃんは、「もう、うれしくて眠れないよー」と、いつもは仰向けで寝るのに、 その日は机の方を向いて眼をランランとさせて消灯しました。
ちなみに、ウチでは「軽いものは吊す」を収納のポイントにしています。
そもそもは、こどもたちが赤ん坊の頃に、下の方に置いておくと危険なものをなんでもかんでも吊し始めたのがきっかけです。 で、慣れてしまうと、なんでもかんでも目につくところに置いておく、という利点が発見できたので、
僕は折に触れて「吊す」ためのものを家中に設置していっています。
もちろん、そういうのはお客さんをお呼びしたときにどうよ、とか、古い人は言うかもしれませんが、 それ以前に怠け者である僕とその家族がちゃんと「使ったら元に戻す」を実行できるようにするために最も重要なことで、
そっちがなにしろ優先であるわけです。家だって、そんなに際限なく広いわけではありませんからね。
世の中の怠け者の皆さん、是非この「しまっちゃわない収納」をお試しください。
道具は、突っ張り棒と大きなS字フックや針金ハンガー、網と小さなS字フック、など。
いっつも見せておくと、おのずと「いらないモノ」も見えてきますよ。
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