東京限定の話になってしまいますが、JR中央線の三鷹〜国分寺間で高架工事のために全面的な線路の切替工事が行なわれました。 この区間にはいっぱい踏切があって、それらがほとんど開かずの踏切。高架化されたら、そりゃもう地元はとっても助かります。 しかし、将来のために良かれと思って始めたこの工事なのですが、それがきっかけで次々と信号トラブルが起きました。 そのうえ切替工事のために鉄道の敷地が広がってしまって踏切の距離が伸びたせいで車が踏み切りの中に閉じこめられたり、 ただでさえ開かずの踏切だったところがもっと開かなくなっちゃったせいで遮断機をくぐって通り過ぎる人が出てきて轢かれそうになったり、 という事件が相次いでおります。 そもそも、このJR中央線というのは「魔の路線」と言われていまして、飛び込み自殺や事故、信号故障などで、 しょっちゅう止まってしまったり遅れてしまったりするので有名なのです。もちろん山手線や京浜東北線でもそういう事件はあるにはあるのですけど、 中央線は、その中でもちょっと多すぎるな、と感じていました。 どういう基準で「多すぎる」というかと申しますと、僕が住んでいる府中市から都心に出ようとすると、この中央線か私鉄の京王帝都電鉄か、 どちらかを利用することになるのです。で、僕は小学校時代から京王線で電車通学していたのですが、 会社は東中野にあるので国分寺から中央線で通うことが多くなってきたのです。 つまり、社会人になってからは2つの路線を使い分けしている2路線のヘヴィユーザーの感覚として、「京王線に比べてあまりにも多すぎる」と思うわけです。 なんといっても、京王線では人身事故なんて、過去あったでしょうか。ほとんど記憶にありません。ここ数十年で、数回あったかなかったか、ぐらいだと思います。 が、中央線では毎月のように起きています。 一時期、毎週のように起きていたときにはさすがに「JRがお祓いをした」なんていうことまでニュースに載っておりました。 ……こんな、たくさんの人の命を守らなければならない会社が「お祓い」っすかっ?! JR東日本と京王線では、万一の備えての「心意気」が全然違う! 事故とはちょっと違うのですけど、一昨年でしたか、東京に大雪が降ったことがありました。その時、都内のJRがほとんど止まってしまいました。 私鉄はけっこう無事で、中央線とほぼ並行し走っていて八王子を超えて高尾山まで行っている京王線も、遅延無く運転されていました。 その晩のニュースで、JRの偉い人が記者会見で「ウチの会社は営業区域が広いので、1年に1度、 あるかないかの雪のために全ての路線に大雪対策を施すわけにはいかない」というようなことを言っていました。その話を聞いたときには、 「そりゃそうだわ」と思ったのですが、ちょうどその後、京王帝都電鉄に勤めていたことがあるという人に「大変ですよね、JRは。 その点、京王線はほんとに止まりませんね」と気軽に聞いてしまいました。そうしたら彼はにこっと笑って。 「私たちは、1年365日、絶対に電車を止めないためにはどうするかを考えています。たとえ、1年にたった一度しか雪が降らないとわかっていても、 それに備えて全路線の全てのポイントにヒーターを設置しています」とのこと。 そりゃもちろん、京王線は新宿から八王子、高尾、橋本、というほぼ3路線があって、JR東日本に比べたら運行距離は短いわけですけど、 なんか、この「心意気」というのが全然違うな、と思ってしまいました。 ちなみに、生まれてから京王沿線なので非常に京王贔屓なのですけど、この会社は不思議なところで、 2年前に「全路線の高架化工事などがほぼ完了したので運賃を値下げします」と宣言して、20円ずつぐらい切符代を下げてしまったのです。 都内の私鉄が次々と値上げしていく中で、沿線住民は大拍手でした。 なんか、そんな根本的な違いが、JRにはあるような気がするのです。 そういう企業体質のせい、というのは、もともとJRは「日本国有鉄道」だったわけですのでやむを得ない部分はまだあるのかもしれません。 が、しかし、やむを得ない、って言い続けていていいわけがありません。 では、どうしたらいいのか。国土交通省の大臣になった気持ちで考えてみました。 中野から三鷹までの中央線の駅は、あまりに個性がなさすぎる たとえば、中野・高円寺・阿佐ヶ谷・荻窪・西荻窪・吉祥寺・三鷹、と中央線に乗っていただくとわかることがあります。 まず、昼間のホームが暗い。おそらく、節電であったり、経費節減であったり、いろんな事情があるのでしょう。 しかし、なんとなぁぁぁく暗い気持ちになることは確かです。 この「物理的な明るさ」ってけっこう大事で、たとえば今全国で生き残りを賭けた戦いが繰り広げられているドラッグストア業界でトップのマツモトキヨシでは、 昼間の店内の明るさを、晴天の昼間に外から入ってきて暗いと思わない明るさ、というのを基準にして照明を配置しているのだそうです。 というわけで(もっと詳しいことは、それなりの心理学者の書物などをご参照ください)、中央線改革その1っ!! 「ホームを、電車が走っているあいだはめちゃめちゃ明るくしてみようっ!! 」 次に気づくことは、駅に個性が無い、ということ。 僕が小学校時代に通っていた山手線の大塚駅では、ホームにたんぼがありました。駅員さんが田植えをして、秋になると稲が実るのです。 それを、毎日見つめ続けているわけです。なんか、いいかんじでしょ? 山手線の駅には、けっこうそういう特色ある駅があったりします。原宿の駅のあじさいもきれいですよね。高田馬場の駅からは、名物のヘンな噴水が見えたり。 でも、そういうのはもともとそこにあったものだったり、その場所の特色を生かしたモノだったりするわけです。 が、高架化してしまったことで中野から三鷹までの中央線の駅は全部同じデザインになってしまったようです。 たとえば、夜おそくに新宿駅から京王線の急行に乗って帰ると、明大前、桜上水、千歳烏山、つつじヶ丘、調布、東府中、と、それぞれの駅の風景が違うので、 ぼーっと乗っていても安心です。全盛期の大学時代は、酔っぱらって半分眠って乗っていても、東府中を過ぎたたくさんのポイントの音とその後のカーブで必ず目が覚めて乗り越しは10回に1回ぐらいしかない(←あるじゃんっ!! ←そーだよっ!! 目が覚めたら高尾山口でびっくりしたことあるもんっ!! )のです。 が、中央線の場合は駅に着くごとに「今どこっ?!」と駅の看板の文字を確認しないと安心できないのですね。もうこれは、 僕にとっては「慣れる」ということを知らない事実です。だって、中央線で乗り越したら、豊田や青梅ならまだしも、最悪の場合大月まで行っちゃいますからね……。 もう、そうなったら足をのばして河口湖で釣りでもするか、って感じですよ。というわけで、中央線で乗り越した最悪の事態は豊田駅です(←やっぱりあるんじゃんっ!! )。……まぁ、考えようによっては緊張感があって乗り越さずに済むという利点があるわけですけど。 で、ここで話を元に戻しますと「駅ごとにもっと個性を出しましょう!!」ってことです。 歴史、ジブリ、ジャズ、お笑い… 加藤式「駅別・個性化プラン」 まず三鷹。「三鷹の森ジブリ美術館」は特別快速が停まらない吉祥寺に譲っちゃいましょう。で、東西線乗り入れ各駅停車の終点である三鷹といえば、天文台、 近藤勇、などなどなどなど、まぁ古い町ですからやれることはいっぱいあるでしょうから、お任せいたします。 吉祥寺駅なんて、ただでさえ「プレ銀座」ってくらいな街ですからもういちいち宣伝しなくてもいいわけですけど、あえて、なにしろジブリ美術館がありますから、 ホーム一面ジブリですよ。ゴミ箱なんて、トトロの形をしてるんです(パンダで有名な中国の成都では、街に置いてあるゴミ箱は全部パンダです)。 西荻窪は、音楽好きとしては「アケタ」です。芝居好きとしては「ラッパ屋」です(ラッパ屋の鈴木聡さんはここ出身)。 もう、ホームにはジャズとオカリナが鳴りまくりです(アケタはオカリナでも有名)。 荻窪は、ホームに立ち食いそば屋じゃなくて、春木屋(注:有名なラーメン屋)の支店があったっていいじゃないですか。 ラーメンができるまで待ってて電車を乗り越しちゃうのも一興です。もう、ホームでラーメン戦争勃発、って感じです。上りホームに春木屋、下りホームに丸信、ってとこから始まって、月々の売上で戦って負けた方が場所を丸福とかに明け渡す、ってゆーのはどーだ。 阿佐ヶ谷……と言えば、スパイダース。って言ってしまうのは、小劇場演劇関係者。阿佐ヶ谷は、爆笑問題の太田さんが住んでいるという噂ですから、 ここではもう、駅員さんが総出でボケていただきます。必然的に乗客はみんなで突っ込まなければなりません。 高円寺は、なんたってフォークとシバイの街。当然、電車の到着と同時に吉田拓郎の歌が流れます。始発と終電の合図は『高円寺』。 出勤時間帯は『明日に向かって走れ』か『人生を語らず』。お昼時は『シンシア』とか『結婚しようよ』とか。午後、学生が帰ってくる時間帯には『落陽』。雨の日には『たどり着いたらいつも雨降り』。でも、決してかけちゃいけないのは、『人間なんて』……。 そして、中野。ここはもう、駅のプロデュース自体をサンプラザ中野さんにお任せしてしまうしかないでしょうっ!! ……ちなみに、彼は早稲田の後輩だと思われます。 学生時代に『スーパースランプ』というバンドのライブを見たことがあるのですが、あれは絶対にサンプラザだと思うっ!! というわけで、まずは飛び込み自殺防止策を考えてみました(←そうだったのかっ!! )。 少なくとも、僕と同世代かちょっと上の人たちが追いつめられて中央線に吸い込まれているのだとしたら、かなり効果的な対策だと思いますよ。 ここでもう4000字を突破したのですが、まーいーや。本誌じゃないし(←本誌には当然字数制限があるわけですが、ネット版はおそらくノーカットです)。 なぜ、根本的な対策を整えてから工事をしなかったのか 次に、高架化工事に伴う踏切事故対策です。 まず、踏切に「押しボタン式踏切」という看板をでっかく出します。 で、踏切近辺に、遮断機が閉まっているときだけ点灯する「押しボタン」をいっぱい用意します。で、一人が押すとでっかい看板に「001」と出ます。実 は、その近辺にボタンが100個あるのです。通りがかって開かずの踏切に引っかかってしまった人たちが「くっそー、早く渡りてぇんだよっ!! 」と、必死で100個のボタンを探して看板の数字が「100」になると、なんと電車の方が赤信号になって列車のダイヤに関係なく停まってくれて、渡れ る、という仕掛け。もう、電車と渡る人たちとの一騎打ちの様相です。 ちなみに、ボタンの場所は毎晩保線の人たちが変えちゃいます……。 それと並行して、大阪・梅田駅前の交差点のように「次に踏切が開くまで●●秒」という掲示を出します。踏切が開くと、「踏切が閉じるまで●●秒」とい う掲示も出します。安心して待っていただくための方策も、ちゃんと採らねばなりません。 次の対策ですが、これはけっこういけると思うモノ(←てことは、前の段落のは……?!)。 非常に単純なのですが、踏切の手前数mのところにセンサーを付けて、10分以上とか閉まりっぱなしであることを感知したら開けるのです。1秒でもいい から、開けるのです。 ちなみに、僕は小学校時代と大学時代に都電のお世話になりましたが、都電はちゃんと信号で止まります。ちゃんと車と共存しています。JRが車と共存し ちゃいけないって法律はないでしょ、石原さん(←どっちの?)。 多少運行ダイヤは乱れるかもしれませんが、人の命には代えられません。 そして、列車の編成を変える、といのはどうでしょう。 現在の倍の車輌を連結して運転します。そうすれば、一度に乗せられる乗客の数が一気に倍に増えます。問題は、半分の車輌が駅からはみ出して止まるので、ドアが駅に到着しても開かない、ということです。しょうがないので、その追加した車輌は「終点まで乗る人専用車両」とします。中央線で東京駅まで行く人って、けっこういるでしょ?……しかし、これ、山手線でやったらタイヘンなことに……。 あと、高架にするのが決っているのだったら、その部分だけ、先に作っておけばどうでしょう。つまり、踏切の部分だけ一番先に工事をしてしまい、開通するまではそこを歩道橋として使っている、ということです。エレベーターもちゃんとつけて。 まぁ、車にはしばらくガマンしていただくしかありませんが、車はちょっと遠回りすれば踏切を使わずに中央線をクリアできる道がありますからいいじゃないですか。とにかく、歩行者をなんとかしてあげなければいけませんよ。特に、老人や車いすの方や足の不自由な方(←右足骨折経験者は力説したいっ!!) に「遠回りして」なんて、そりゃあなた、絶対許されることではありません。 ま、とにかく、「やってみたらダメだった」なんて、公共交通機関を支える人たちがやっちゃっていいこととはとても思えません。こうなることは、工事をする前からわかっていたことでしょうに、なんで根本的な対策を整えてから工事をしなかったのか。 もしかすると、「乗客」のことばかり考えていて乗客候補である「住民」のことを忘れてた、ってこと?!