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第2回 1歩先が無理なら、2歩先を目指せ!


「きまりごと」「常識」には、二通りあると思います。

 一つは、いろんな人たちが共存する「社会」がスムーズに動くための最低条件。 それらのたいていが、「法律」や「マナー」として文字にされ、 守らない場合にはなんらかの処罰が科されてしまったりします。

 もう一つは、長い時間の間に自然に、もしくはある特定の権益を守るために、 後から来る勢力に対しても無言の圧力をかけてくるようなもの。 これは、会社や学校という人が集まる場では必ず生まれて来るもので、 たとえば道路交通法では「歩行者は右側通行」と決められていても 「この駅のこの階段は左側通行」といったふうに法律と相反するきまりができていたりします。

 まぁ、その程度のことだったらいいんですけど、たとえば「お茶を入れるのは入社3年目までの女子社員が日替わりで」 とか、「先輩が食事に出るまでは新入社員は仕事をしていなければならない」とか、「マナー」を越えて、 いたって非効率的であったり時には人権を無視した「きまり」ができてしまっている場合もありますよね。

 僕らが暮らす「演劇界」でも、いろんなきまりがありました。ありました、というか、あります。


「この演劇には社会性がない」 と、劇場を貸してもらえず…

 大学のサークルや、養成所出身のメンバーが劇団を作ると、まず収容人数100人に満たない名も無い小劇場で 「旗揚げ公演」を行ないます。彼らはみな「野望」や「希望」に燃えています。僕らもそうでした。

 そういう小劇場で活動を続けているうちにお客さんが増えてきて、さぁてそろそろもう少し大きな劇場でやりたいな、 と思った時。ここから先に、「面倒なきまり」が待っていました。 まず、ある程度名前があってアクセスがいい200人クラスの劇場はびっしり年間公演スケジュールが決まっているので、 そこでやらせてもらうためにはまずその劇場の人に芝居を観てもらって、 「使わせていただく」ための努力をしなければなりません。

 ところが、なんと僕らは「君たちはまだ早い」と断られてしまいました。

 やむをえないので、その人気のホール(仮にA劇場、とします)をあきらめて、 劇場使用料が倍近いけれども収容人数が同じぐらい、というB劇場でやらせていただくことにしました。 そこは、使用料が高いことといわゆる「人気劇団」があんまり使っていないということで、 すんなりと使わせていただくことが出来ました。

 そのB劇場で僕らはこつこつと公演を行ないながら、A劇場の方々には毎回ご招待状をお送りして、 観に来ていただけるようにお願いし続けました。

 が、「まだまだ」と言われ続けているのに、なぜかお客さんがどんどん増えていきます。

 つまり、「演劇」のジャンルでの評価ではとっても低いのに、 観に来てくださる方々はどんどん喜んでくださって押し寄せてきてくれるようになってしまったのです。


200人の劇場が無理でも、700人の劇場なら許される

 そこで僕らは一足飛びに収容人数400人ぐらいの人気劇場Cに行って、是非やらせてほしい、とお願いしに行きました。 そして、その劇場の方に観に来ていただいたら、「君たちの芝居には社会性がないから、まだうちでやるには早い」 と言われてしまったのです。

 社会性。

 そんなこと、全く考えてませんでした。僕らにとって演劇とは、 手に汗握って大笑いしたり感動できるエンターテインメントだったからです。

 しょうがないので、一足飛びどころか「二足飛び」で、700人収容のミュージカル系の劇場Dにお願いに行きました。 すると、B劇場で1万人のお客さんを動員している、という点を評価してくださり、 とりあえず貸していただけることになりました。

 そして、この公演でB劇場を卒業だ、という段階になってC劇場の方が「良くなってきたね、もうすこし良くなれば、 再来年あたり、うちでやってみるかい」と声をかけてくださいました。 が、僕らの気持ちはもうすでにD劇場に向かっていました。200人から700人へ。 これは、高校球児がドラフトでプロ球団に入団して、いきなり開幕戦で福岡ドームでホームランを打て、 と言われているようなものです。

 そんな経緯で、僕ら演劇集団キャラメルボックスは、いわゆる「演劇界」の方々には全く評価されないまま、 もっと言えば嫌われ続けたまま、中劇場進出と関西進出を果してしまったのでした。

 道は一つじゃない。今何をするべきか、したいのか。

 この話は、まだまだ続きます。

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