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第157回 瀬戸内寂聴「源氏物語ナイト」

瀬戸内寂聴さんが11月9日心不全のため、99歳で京都市の病院で亡くなられた。強運と身近な人々の親身な支えを得て、執筆に社会貢献に独特の人生をまだまだ生きられる、と思っていたので改めてショックだった。

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瀬戸内寂聴さん

寂聴さんの6年間にわたる「源氏物語」現代語訳10巻の完成を記念して、プレスクラブに招いて「源氏物語ナイト」を主催したのは1998年12月7日。僧服姿の厳粛さとは正反対に、彼女が語るあけすけな光源氏の色恋や妻問婚の話の面白さにはヘッド・テーブルに並ぶAP東京支局長のジム・ラジエさんやフィナンシアル・タイムズ紙のヘンリー・スコットーストークスさんらも笑いを禁じ得ない様子だった。

その中で、彼女がマイクを取り直し、「渡辺晴子さんは料理のセンスがあるのでレストランを経営したらよいと思います」と言い出したのには驚いた。私は主宰する会見ではテーマに合わせてメニューを組むのだが、「源氏物語ナイト」では「須磨・明石の巻」からタコの刺身と、「宇治十帖」の「夢の浮橋」に因んで盛り付けたアイスクリームにウエハースの橋を架けたのだが、駄洒落を褒めるのにかこつけて企画に要した準備を認識してもらったらしい。

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ヘッド・テーブルと会場

破天荒のように見える生き方でも周りから支援者が消えなかったのは、業界人からご近所さんまで自分を支える人々への彼女のこのサービス精神だろう。

2006年8月世界宗教者平和会議の際、京都で寂聴さんをインタビューした日本外国特派員協会会長スベントリニ・カクチさん(スリランカ出身女性記者)は、寂聴さんを「女性に新しい生き方を説いた。粘り強い回復力を示した戦後日本の聖像」と評価。同じく協会の多様性委員会共同委員長イルガン・ユルマーズさん(トルコ出身女性記者)は、「伝統主義者、女嫌い論者からあらゆる段階で非難されながら、ウーマン・パワーを信じインスピレーションとして活躍した彼女には賞賛の言葉しかありません」と述べている。

瀬戸内寂聴、作家、尼僧、天台宗大僧正。あの世でまたお会いしたいものである。

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瀬戸内寂聴さんと司会の筆者

2021.11.18 掲載


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