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第152回 東京入管施設の対応ヒアリングと有識者提言

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入管施設内におけるコロナ対策、
女性収容者への職員の暴力事案についての省庁ヒアリング(参議院議員会館)

ヒアリング

新型コロナウィルスの感染拡大を受けての東京入管施設内におけるコロナ対策と、4月下旬に起きた女性収容者への職員の制圧事件について、国会議員有志らが出入国在留管理庁に事情を聞くヒアリングが、5月13日参議院会館で行われた。また管理庁の有識者専門部会は、6月15日提言をまとめた。

ヒアリングは参議院議員の石橋通宏氏(立憲民主)、徳永エリ氏(国民民主)らが呼びかけ、石川大我氏(立憲民主)が事務局になって行われ、議員15人が直接、14人がオンライン、出入国在留管理庁からは岡本章警備課長らが参加。仮放免中の外国人や弁護士なども出席、外国特派員協会は強い関心を寄せ、独自にプレス会員に参加を呼び掛けた。

議員側は事前に通告した入管施設での収容者数やPCR検査などの新型コロナウィルス対策、感染拡大を受けての「仮放免」の実施状況、4月25日に東京入管で起きた女性収容者への制圧事案などに関して回答を求めた。これは東京入管の女性ブロックで、仮放免の件で説明を求めていた女性が既定の時間までに自分の部屋に戻らなかったため、男性を含む複数の入管職員が女性収容者に身体的に接触して連れ戻し、同調する数名の女性を懲罰房に入れたという事案である。

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女性収容者への対策について抗議する駒井知会弁護士

管理庁側は、「4月末の収容者は男性789人女性125人の合計914人。新型コロナウィルス感染拡大に伴う4月7日緊急事態宣言発令前の3月末は1104人で、190人減少した」と回答。しかし、同宣言後に管理庁が出した退去強制令書の件数や日別・国別・仮放免件数、施設別の内訳は公表せず、従来の方針通り月単位、年単位で公表するに止めた。

PCR検査実施の有無については、「収容者や入管職員には感染は起きていない。感染者が出た場合には公表する方針。また収容者への感染対策には専門家の助言を得てマニュアルを作成、職員の収容者と接触する場合のマスク着用、消毒の徹底などを定めている」と述べた。

仮放免の実施状況については柔軟に行っていることを表明した。新型コロナウィルスの世界的流行により、各国が入国制限を実施し航空便が減少して送還が難しくなっているうえ、専門家の「感染拡大回避のため収容密度を下げるべきだ」という指摘を踏まえたという。

出席した弁護士や仮保釈中の当事者から、保釈金が高額でまた就労もできず生活が苦しい点や、規定時間内に自室の戻らない女性収容者への過剰制圧についての発言があった。
議員側は仮放免者に就労を認め、特別定額給付金を供与することを求めたが、岡本課長は「就労については、仮放免は退去強制処分を受けた送還までの収容を一時的に解除する措置で、労働する在留資格がない」との従来の方針を示し、特別給付金は「担当でなく答える立場にない」と述べた。
なお、このヒアリングの後5月18日に「難民問題を考える議員懇談会」が設立された。


有識者提言

入管施設で外国人の収容が長期化している問題を受け、出入国在留管理庁の有識者専門部会が6月15日提言をまとめた。国外退去を命じられたのに出国を拒んだり、「仮放免」中に逃亡したりした外国人への罰則創設の検討を盛り込んだ。

長期収容は、国外退去命令後何らかの原因で帰国できない外国人が増えているのが要因。専門部会は命令に応じて速やかに出国した外国人については日本に再上陸できない期間を現行より短くする一方、応じない場合には懲役や罰則を検討するよう求めた。仮放免についても要件、基準を明確にするとともに逃亡者に罰則を科すとした。

難民認定申請中は送還が停止されることから、退去を避けることを目的とした申請が増加している現状があるとし、同じ理由で申請をくりかえす外国人は停止の例外とすべきとの意見も述べられた。

最近、入管施設では長期収容に対する抗議運動が強まっており、19年6月、3年以上収容されハンガーストライキ中とみられるナイジェリア人男性が餓死した。このほか施設での常勤医師の確保など医療体制の改善を求め、一定期間を超えて収容する場合の可否を吟味する仕組み作りを提案。施設に代わる代替的措置も検討対象とした。

専門部会は昨年10月、法相の私的懇談会「出入国管理政策懇談会」の下に設置され、7月にも懇談会から答申を受け、入管庁は入管難民法の改正を検討する。

2020.6.29 掲載


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