第149回 山口敬之氏と伊藤詩織氏 同日連続記者会見
伊藤詩織氏(左より3番目)。山口氏会見をジャーナリストとして取材(撮影/A.シーゲル) |
4年前のレイプ事件について、12月18日、伊藤詩織氏の民事裁判が結審した。翌19日、元TBSワシントン支局支局長山口敬之氏とフリーランス記者伊藤詩織氏が日本外国特派員協会で会見した。レイプ被害者の95%が社会的圧力や事件の公開によるセカンド・レイプを恐れて加害者を訴えない日本で、これは欧米で広がっている「#metoo」運動に続くものになるのではないかという視点と、加害者のメディアにおける地位の高さから、これまでニューヨーク・タイムズ紙、ワシントン・ポスト紙、BBC放送、中国メディアなどで大きく報じられ、伊藤氏の著書『ブラック・ボックス』が刊行されると日本の中でも議論が沸いた事件である。
伊藤氏による訴訟の概要は、求職中の伊藤氏がワシントンから一時帰国していた山口氏と寿司屋で面談、深く酩酊した伊藤氏を山口氏が自分の宿泊しているホテルに連れ帰り、彼女の意識がもうろうとしている状態でレイプしたというもの。モーニング・アフター錠剤を呑み、警察に届け訴えたところ、刑事裁判では不起訴処分となったが、民事裁判では伊藤氏への330万円の賠償が決まった。一方、山口氏側の伊藤氏に対する名誉棄損等による1億3千万円の賠償請求の訴えは棄却された。
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【記者会見①】
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記者会見で山口氏は、「彼女の陳述には論理的に無理があり、明確な客観的証拠がない。虚言癖がある。メディアの注目を集めるために嘘を言い続けた」と訴えた。ニューヨーク・タイムズ紙など、名誉を棄損していると思った報道については、「民事裁判中は弁護士に止められていたが、今後どのような措置を取るか検討する」と述べた。また「安倍総理や官邸などにこの件で接触したことは一切ない」と言い切った。
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【記者会見②】
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一方、伊藤氏は民事訴訟に踏み切った理由を「刑事事件で不起訴だと、集めた資料が公開されずブラック・ボックスに入ってしまう。民事裁判を始めれば証拠・証言を公開できるから」と言う。さらに「性犯罪は閉じられた部屋の中で起こるため、裁判に必要な情報が不十分になりがちだが、総理・官邸などにも大きな力を持つ山口氏に対し、裁判に必要な証拠を得られたのは、人間としての良心から協力してくれたWhistle brower(内部告発者)のお蔭」と感謝した。
山口氏は逮捕状が取り消され、TBSで降格されたものの、笹川平和財団の直接推薦でワシントンにあるイースト・ウエスト・センターのアジア研究フェローとしてヴィザを得て米国に戻った。しかし、内部情報によると山口氏はセンターには出勤せず、その後、2017年3月27日自己都合で退職している。
司会のD.マクニールは最後に一言“We admire your courage”(貴女の勇気を賞賛する)と述べて記者会見を終えた。
2019.12.31 掲載
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