WEB連載

出版物の案内

会社案内

第116回 小泉純一郎元日本国総理大臣
「トモダチ作戦被害者支援基金」へ募金をよびかける

2011年3月11日の東北大震災で地震と津波による洪水によって東京電力の福島第一原発がメルト・ダウンした時、米国は韓国で演習中の原子力空母ドナルド・レーガンを急遽東北沖合に派遣し、「トモダチ作戦」として空母からヘリコプターで海兵隊員を中心に数百人の乗組員を運び、約1か月瓦礫の整理にあたらせたことは何度も報道された。しかしながら、その乗組員たちがその後被爆で苦しんでいることは、日本はもちろん米国のマスメディアでもほとんど報じられていない。

photo
K.アズハリFCCJ副会長、吉原毅城南信用金庫相談役、通訳、小泉元総理、通訳、A.シャープ(司会)

小泉純一郎元総理大臣は9月7日プレスクラブでの記者会見で原発に対する自らの認識不足を恥じ、「日本のために尽くしてくれた人たちを見て見ぬふりはできない」と、400人にも上る東京電力福島第一原発放射能被害者のため7月に発足させた「トモダチ作戦支援基金」に対する募金を呼び掛けた。

この5月、サン・ディエゴで20代から30代の健康被害者10名に面会し、記録ビデオ等の資料を見た小泉氏は、初めて事情を知って驚いたという。

記録ビデオでは原子力空母レーガン内では作業後の乗組員に対し「服を脱いでシャワーを浴びろ!」と指示する声に重なってガイガー・カウンターが鳴り響いていたという。「トモダチ作戦」中、乗組員たちは塩分は除去されているが放射能は除去されていない海水でシャワーを浴び、同じく放射能は除去されていない海水で調理された食事をとっていた。半年後、一年後から鼻血、下血、下痢が始まり7名が亡くなった。妊娠中だった水兵が出産した障害児はすぐ亡くなり、現在300名が放射能障害で苦しんでいる。

米国では兵士たちは軍隊を訴えることはできないので、東京電力とGEを訴えているが、その人数は300人から現在400人に増えているという。「除隊すれば健康保険がきかない。見舞金300万を持参しようとしたが、被害者が5月当時300人もいるというので手ぶらでいった」

photo
小泉純一郎元総理

公的救済について小泉氏が問い合わせると、アメリカ上下両院も国防省も「放射能による健康被害とは断言できない」とし、日本の北米局長も同情してくれたが、「政府としては何もできない」との結論。そこで政府が出来なければ民間で感謝の気持ちを表したいとして7月5日に基金を立ち上げ、来年3月末までに1億円を集めたい」と呼びかけた。

大阪では建築家の安藤忠雄氏の提唱で8月に会費1万円の会合を開き1300万円が集まり、同様の会が東京でも開かれたため4千万円まで募金が集まったという。

「過ちを改めるに憚ることなかれ。過ちを改めざるを過ちという」。小泉純一郎元総理大臣は久しぶりの特派員協会講演で熱弁をふるった。

photo
満席の会場

主な質疑応答より


R. ロイド・ペリー(タイムズ/英国):総理の時に原発賛成でどうして今、反対なのか?
小泉:原発は安全、クリーン、コストが安いという専門家の意見を信じたから。しかし、3月11日の福島を見て勉強しなおし、文明生活をするには原発がいるというのは全部嘘だとわかった。米国では1979年のスリー・マイルの事故で、今も人が住めない。1986年チェルノブイリ事故に遭った子どもたちが20代,30代になってからの健康被害報告を東北の医師会がロシア語から日本語に訳していたが、日本の専門家は日本では違うと言っていた。
50年間にわたってこれだけの事故が起こっている。飛行機にしろ自動車にしろ機械に絶対安全はない。しかも原発の事故はスケールが異なる。福島第一原発は広島、長崎原爆の100倍以上の放射能を拡散した。「安全第一」と言いながら東電も原発会社も「収益第一。安全二の次」

李ミャオ(鳳凰衛視有限公司/香港):トモダチ作戦のその後がどうして日本でもっと報道されないのか不思議だ。オリンピック誘致に際して安倍首相は福島を「アンダー・コントロール」といっているが?
小泉:原子力関係者のマスコミ、政府に対する働きかけが大きい。安倍首相の「アンダー・コントロール」の話は嘘です。何キロにもわたって土を凍らせようとしたが出来ていない。

A.ロウリー(シンガポール・ビジネス・タイムズ):自衛隊員もトモダチ作戦の兵士と同じくらい放射能にさらされたのか?
小泉:風向きのせいで、陸地にいた自衛隊員より沖合にいたアメリカの兵士の方が放射能にさらされた。

photo
小泉純一郎元総理

小泉純一郎元内閣総理大臣は「原発に対する賛否を超えて、多くの国民のご協力をお願いいたします」とアピールしている。


2016.10.1 掲載


著者プロフィールバックナンバー
上に戻る