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第112回 小池百合子氏 東京都知事立候補 記者会見

猪瀬直樹知事に続いて舛添要一知事。 自民党、公明党が支援した両知事が「政治と金」の問題で任期半ばで辞職した東京都は、折からの参院選選挙と2020オリンピック・パラリンピックの準備中なのにパイロットのいないジャンボ機のように混迷中。

そこに、「根回し、かき回し、後回し」の伝統が今なお根深い日本の政治の世界で自民党都連の同意なく独自に率先して手を挙げたのは元環境相、元防衛相の小池百合子氏。満を持して7月8日プレスクラブに颯爽と登場、都知事選立候補への思いを語った。

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東京都知事候補 小池百合子さん

小池氏のプレスクラブでの何よりの強みはテレビのアンカー・パーソンとしキャリアで、「皆さんの元同僚」としての呼びかけに記者たちが好意的に反応した。小泉首相の小泉内閣時代の郵政民営化に反対する自民党議員の東京選挙区に神戸の選挙区から「刺客」として乗り込んだ勇気や、環境相時代にいまや日本の夏のファッションとして定着した「クールBIZ」を提唱したこともプレスクラブではよく知られている。

このプレスクラブは政界、財界、学会を問わず、記者による鋭い質問で講演者にプレッシャーを与える場所として知られている。「元同僚」に対する小池氏の会見は終始リラックスした、というよりはこの機会に自分の想いを述べることが出来るのが実に楽しい、という様子だった。

スピーチでは、東京をロンドンやニューヨークと肩を並べる多様性のあるスマートな都市としてグローバル社会と密接に繋げる。エコ・ハウジング、再利用可能なエネルギーの利用。テロリズム防止センターの設立。女性の参画拡大、保育園への即時入居。高校の授業料無償化、学校での英語力の強化、等々大々的な公約を発表し、リンカーン大統領の伝説の演説の名文句を借りて、“Government of the people, for the people, ....BY YURIKO KOIKE”と結んだ。

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満席の会場

よどみない英語で演説を終えた小池氏は、質疑応答に入ると日本語になり遂次通訳させた。


主な質疑応答


フランステレビ記者:小池氏の政治的家族である自民党に承認されていない理由は?
小池:(私は)根回しがうまくない。都知事選ではあとから手を挙げる方が有利だと言われているが、安倍内閣の1丁目1番地は女性の活躍なので情熱のある人が出ればよい。

レバノン記者:東京の首長から総理大臣を目指すのか?
小池:知事に当選してからお答えします。(満場笑い)

筆者:日本は経済大国と言われるがジェンダーギャップ指数は145か国中101位。東京都の人口は6月1日推定で13,613,660人。男性6,710,569人、女性6,903,091人となっている。 東京都の職員数は166,819人。都庁のトップが女性になり、あと2年間の任期と次の4年間、6年間でどれだけの女性を中低位の管理職に上げられるのか? クオータ制を取るのか、従来通りの年功序列メリット制度をキープするのか?
(因みに都庁人事部は166,819人職員の男女別数も職域も7月8日現在まで公表していないという。そんな筈はないのだが、プレスクラブからの質問は軽く扱われたのか?)

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東京都庁の女性管理職育成について質問する筆者


小池:日本では「リスクを冒さないことが最もリスクを冒す」と考えていない。議員の職を失うリスクはあるが、知事になれば24年間の議員の経験が生かせる。都庁に16万人の職員がいる。小泉内閣で2020年までにあらゆる分野で女性を30%にする決定がなされたが、安倍内閣では「ゆっくり」とすすめられている。私は「力強く進めたい」。いつまで、どれだけというゴールは実情を見て決定したい。

ドイツ人記者:安倍さんは(防衛相である)小池さんを54日でクビにし、第2次安倍内閣に招くことはなかった。安倍さんとの関係は?
小池:訂正、55日です。(満場笑い)当時は事務次官と闘い、議員たちから「女は武士の気持ちがわからない」といわれたが、後にそのベテラン事務次官は逮捕された。国民のわからないところでの利権構造については究明してゆきたい。安倍さんとの関係? “That's politics. ”(満場笑い)

デンマーク記者:韓国、シンガポールに比べて日本にはユニコーンと呼ばれる1億ドルクラスのベンチャーがない。金融をどう活性化させるのか?
小池:(日本人は)伝統的な日本企業がなくなることに不安を持っている。若い人だけでなく年寄りでもべンチャー企業を興す企業家が育つ環境を作り、東京で花咲かせる。東大生のロボット開発の成果は(日本企業ではなく)Googleに買われてしまった。

アラブ記者:小池さんは英語だけでなくアラビア語も達者。自民党のしがらみを超えて外交的な活躍を出来るのではないか?
小池:応援のエールを有難うございます。外国人の方ですが、有権者であられればよかったと思います。(満場笑い)

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セイド・カールソン(司会)小池百合子、橋本(通訳)敬称略右より

* * * * *

記者会見の夜、内外の記者たちがバーに集まった。外国人の記者たちの好意的な反応と異なり、日本人記者からは「小池さんは日本女性に嫌われている」「目つきが鋭すぎる」「政党の所属を変えすぎる」などのコメントが多いのには驚いた。所属を変えた男性議員は多いが、変えるごとに輝いたのは小池氏だけなので、男性のジェラシーを招いたのか?

米国ではヒラリー・クリントン氏(68)が女性初の大統領になろうとし、英国ではテリーザ・メイ氏(59)が二人目の女性首相になった。東京都に女性初の小池百合子知事(63)が生まれても良いころではなかろうかと思っていると後出しジャンケンが始まった。

自民党と公明党、日本のこころを大切にする党は元総務省で岩手県知事を務めた増田寛也氏(64)を推し、参院選で共闘した民進、共産、社民、生活の党と山本太郎となかまたちは毎日新聞記者出身で小池氏と同じくテレビ・アンカー・パーソンの経歴を持つ鳥越俊太郎氏(76)の立候補を4党が一致して支援することになった。

前回都知事選で次点となった元日本弁護士連合会会長の宇都宮健児氏(69)は、鳥越氏との政策協議により野党票を割らないため立候補を取り下げることになった。

「ハルコサン、敢えて日本語で質問したのは日本の有権者に小池さんのニュアンスを直接伝えるためではなかったのか?」と外国人記者に尋ねられた。(終わり)



2016.7.18 掲載


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