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第91回 築地卸売市場プレスツアー

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卸市場(場内市場)を取材する外国記者たち

世界最大の海産物卸市場を有する築地市場(青果や鶏肉なども扱ってはいるが、イメージ的には脇役である)が、施設の老朽化と手狭を理由に東京・築地市場から2016年完成予定の豊洲新市場に移転するにあたって、特派員たちはこのほど場内市場、場外市場を見学した。

場内市場では弓型に密接して並ぶ700店舗の魚貝問屋、魚とトロ箱、まな板に絶え間なく流し込む氷や水で小川のようになった狭い通路を駆け抜けるバギー。カメラを向ける記者たちに「観光地じゃないんだ。団体で歩くな!」
  取材先での厚遇に慣れている外国記者たちは入場するなり怒鳴られて驚いたようだ。

【築地市場(場内市場)の写真】
築地の卸売り市場は業者対象の修羅場
   
© K.Kasahara
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相撲の親方株と同じ!?

場内市場と場外市場での両方で鶏肉を扱う「鳥藤」の三代目社長 鈴木章夫さんによると、近年、場内に竹籠をぶらさげて仕入れに来るような中小寿司屋や小料理店の顧客相手の商売は10%に減少し、20%は一般消費者になっている。70%は外食チェーンなど大手で「注文は電話かファックスでありトラック便で即配するのが普通」。

「東京都魚市場卸共同組合」(東卸)の3月の調査によれば、組合員664業者のうち豊洲に移転する意向を示したのは540業者のみ。後継者がいない、経営状態が悪く移転費用が出せない、との理由で廃業する業者は100以上と推定されている。

「廃業者は都から使用許可されている区画(1ユニット)の権利を売るので、その権利の移転がスムースに行われるよう気を配ってゆく」と鈴木さんは説明したが、記者たちは東京都から名目上と思える低額の家賃で借りていた区画が1000万円から5000万円で転売されると聞いて日本の商習慣に疑問を持ったようだ。「相撲の親方株と同じなのか? 競売しないで既得権益者が値段を決めるのか?」。


場外市場

場内市場で叱られた記者たちも、観光客も歓迎する築地場外市場では英語の地図を片手に勇み立った。愛想のよい店員のおばさんおじさんに誘われて遠慮なく試食し、「今晩の献立は築地の海鮮料理なので」と取材中に買い物リストを取り出す女性記者も現れて、案内してくださった「築地食の町づくり協議会」のボランティアを慌てさせていた。

「有次」など伝統ある刃物店、プロ用の陶器店、卵焼き、日本茶や各種昆布を売る店。
  業務用にも一般消費者用にもサービスする食の店舗街に感激した特派員たちはユネスコが和食を文化遺産に認定した理由に納得いったようだった。

【築地市場(場外市場)の写真】

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2014.8.1 掲載


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