第80回 橋下弁明昼食会見と女性議員反論会見
400人の記者たちで超満員の会見場 © K.Kasahara
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日本軍の慰安婦問題と沖縄米軍の風俗利用発言でメディアを騒がせた大阪市長、日本維新の会共同代表、橋下徹氏の5月27日の昼食会見と、翌日午後の女性国会議員六氏の会見で報道委員会事務局はパニック寸前の忙しさだった。
定員200名そこらのPen & Quill Dining Roomにテレビカメラ28台、外国特派員等内外の記者たちが396名、フロント・ロビーやエレベーター・ホールにも人、人、人。プレス・クラブ歴史上最大の昼食記者会見となった。
一方、福島みずほ氏がFCCJに申し入れてきた会見はテレビカメラ10台、内外の記者45人。規模といい発言の内容といい橋下氏と比べると違った意味でメディアに対する認識が甘いようだった。
ポリティカル・コレクトネスに逆らって
1975年の「国連世界女性年」、それに続く「国連女性の10年」、「2000年国連女性総会」と女性の人権尊重がポリティカル・コレクトネスとして世界の潮流となっている中で、女性の人権を無視する発言を連発してきた橋下氏は公職にありながら関西弁でいうところの「アンポンタン」のようだ。
しかし、女性を尊重すると口先でいいながら裏では平然と差別する偽善者よりは正直だし、400人の記者団の前で悠然と食事をするガッツもある。普通の神経なら胃の底が上がってきて食べ物を口にすることは出来ないはずだ。
冒頭、沖縄駐留米兵の「もっと風俗業を利用してほしい」と勧めた発言は取り消し、謝罪した。慰安婦問題には「私の認識と見解」と題する日英6ページの釈明文を講演前に配り、「国家の意思で女性の人身売買をした点を裏付ける証拠はないというのが政府の考え方だ」と説明したが、民間業者がリクルートしたとしても、戦地での移送、慰安所での性病管理など軍、即ち国家機関が関与していたことは否定できない。
「技術的には彼の言い分は正しい」と若い米国記者はコメントし、「人権問題に厳しい司法試験にも個人の人格検査はないのか」と若い日本女性は嘆く。
講演後、ジャパン・ウォッチャーのベテラン記者たちは「またしても韓国政府の反日PRに材料を提供している」と嗤う。 「日本が主張すべきなのは1965年の日韓請求権・経済協力協定により当時日本のGNP0.5%にも相当する5億ドルの経済協力を実施して戦後処理をした。韓国の元慰安婦たちは5億ドルを受け取った韓国政府に対して自分たちの分け前を主張すべき」
「何時までも元慰安婦問題にかかわっていては、米国にいる韓国ロビーにいいように利用される。太平洋戦争前の中国ロビーの活動を日本人は忘れたのか」と手厳しい。
最後から二番目の質問者になった筆者は「もしリボーンできるとしたら男に生まれたいか女に生まれたいか」と質問。答えは「次に生まれる時は男性でも女性でも女性の人権を尊重する社会にしたい」。元テレビ・タレントとしての才知に欠けたもの。
橋下氏は「政治家は有権者によって判断される」と質疑応答中なんども繰り返していたが、仮に「今度は女性に生まれ、女性の人権を守るために活動します」とでもユーモラスに答えれば、手厳しい大阪のオバちゃんたちも次の選挙で応援してくれるかもしれなかったのに。
六女性国会議員反論会見
翌日の女性議員の会見はメディアがニュースとして使える部分が少なかった。
大体60分の会見時間内に6人の講演者の紹介、講演、質疑応答を入れるというのは無理で、単なる顔見世になってしまう。
前日忙しくて司会者を探せなかった事務局のたっての依頼で筆者は司会を引き受けたが、時間前に資料をそろえて顔を見せたのは社民党から民主党にトラバーユした辻元清美議員のみ。
(左より)福島みずほ氏、糸数慶子氏、小宮山泰子氏、田村智子氏、 谷岡くにこ氏、辻元清美氏、モデレーター 渡辺
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英語のプレゼンテーションは4分、日本語で通訳の要る議員は2分のメドで始めたが、ぎりぎりにヘッド・テーブルに飛び込んでくる人あり「委員会の採決で……」と途中退場者あり、よくも悪くも橋下市長のようなメディアに対する緊張感に欠けていた。
外国特派員たちは、辻元議員が発掘してきた中曽根康弘(元総理)が海軍主計大尉時代に慰安所を開設した資料には、強い関心を示していた。
2013.5.31 掲載
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