第78回 新歌舞伎座 内外記者に公開
2010年4月の閉場以来3年、新歌舞伎座が舞台技術と伝統の粋を集めた日本歌舞伎の殿堂として完成した。4月2日からのこけら落とし興行を控えた3月25日、(社)日本外国特派員協会所属の内外の記者たちは見学会を行った。
記者たちのコメント
華麗なロビーから平等院鳳凰堂の模様を再現したふかふかの絨毯を踏みしめて場内に入るなり、AFPフランス通信社のカリン・プぺ・ニシムラさんは「素晴らしい!」と興奮気味。東京支局が歌舞伎座の向かいの時事通信ビルの中にあるため、建築の進み具合を毎日気にかけていたという。
新華社のカメラマン関賢一郎さんも館内の設備の良さとハイテクに感動。同じく中国系だが台湾の臺灣電視事業股份有限公司東京特派員の宣聖芳さんは、台湾からの東京観光への魅力が更に高まったとコメント。台湾では富裕層の間で、東京の不動産購入とゴルフを楽しむための日本観光が流行し始めているそうだ。
スイスのノイエ・チューリヒアー・ツワイタンク紙記者パトリック・ゾルさんはインテリアの豪華さに感激。
「歌舞伎座の建築費は高すぎる、と聞いていたがこの内装を見て納得。ただし3階席はヨーロッパ人には傾斜が急すぎるし、狭すぎる」
「では1階の1等席指定ですね」という筆者の問いには「ただし、2万円は高すぎる!」。3階A席なら6千円。B席なら4千円となる。
ゾルさんの希望は「劇場というものは空席の建物を見て批評するものじゃない。舞台公演中の歌舞伎座を見たい」。この意見には米国CBSニュースのルーシー・クラフトさんも同調。「何とか歌舞伎座の記者観劇会に入れないだろうか?」
新歌舞伎座の特徴
座席数を60席減らして座席と通路を広くし、また同時通訳や解説用にモニターを備えた。ニューヨークのメトロポリタン劇場など全席の背中にモニターが備わり、学生や観光客が重宝したものだが、歌舞伎座ではこれをさらに多様に活用できる。因みに男性用に比べて長時間の行列ができる女性用トイレは、従来のものから1.4倍に増えた。
歌舞伎の立ち回りの面白さは主役に対して何人もの若手の役者さんがトンボ(宙返り)をきって立ち向かうことだが、この劇場には幅跳び競技場よろしく深々とした砂場が「トンボ道場」として用意してある。
舞台技術の革新としては回り舞台の直径は18メートルでおなじだが、従来4.4メートルの奈落が16.4メートルまで深くなった。
更に舞台上の迫りも松(27.7m²
)、竹(23.8m²)、梅(4.1m² )の3か所だけだったのが、大迫り(42.6m²
)を設け、大掛かりな大道具を動かせるようにした。
歌舞伎文化の伝承者として松竹は歌舞伎座ギャラリーを併設したほか、屋上日本庭園など観劇者以外も憩える場所も用意した。また従来通り当日売りの一幕券は低価格で提供する。
2013.3.30 掲載
|