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第77回
「シェークスピア観賞土曜午餐会」“お気に召すまま”

(社)日本外国特派員協会(通称プレス・クラブ)が独自のジャーナリストの視点から内外要人の記者会見を主催し、プレス・ツアー等をタイムリーに行っていることはよく知られている。一方、あまりPRしていないが、英語を公用語とする協会ではBBC制作(日本語字幕監修小田島雄志)の沙翁劇の観賞午餐会を定期的に行うなど英語の伝統保存のための行事も行っている。英語圏、非英語圏を問わず、学生時代は辞書と首ったけで読まされたシェークスピアを、大人になったからには美味しいカクテルと料理で楽しもうという趣向だ。

2月9日、今年最初の沙翁午餐会が取り上げたのは“All the world's a stage and all the men and women merely players”(この世はすべて一つの舞台、男も女も役者にすぎぬ)の名台詞でお馴染の“As You Like It”(お気に召すまま)。作品紹介をしたのは青山学院大学教授、トーマス・ダブズ先生。米国南カロライナ州出身のシェークスピア学者で、シェークスピアや彼と同時代のエリザベス朝時代の劇作家マーロウについても著作が多い。

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沙翁土曜午餐会
講師T.ダブズ青山学院教授

「シェークスピアが今日彼の作品と称されている戯曲をすべて書いたのか? Noです」開口一番、ダブズ先生は日本のシェークスピア学者が遠慮がちにしか話さない事実を宣言。
  「お気に召すままのロザリンドという女性のキャラクターは既に劇場界で存在していたし、オーランドも同じです。エリザベス朝時代の演劇の特徴は流行っている他の芝居から役柄や背景を借りて来て新しい芝居を再編することで、この意味ではシェークスピアは最大のコラボレイタ—(再編集者)で大興行師です」

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シェークスピアは稀代の興行師

ダブズ先生のパワーポイントを使っての解説は明瞭簡潔で、同時代のロンドンのセントポール大聖堂付近の文化的環境が今日ロンドンのウエスト・エンド界隈、ニューヨークのブロードウエイのミュージカルの及ぼす影響に近いなど、古典と現代を結び付ける視点が観客を喜ばせる。

ヘレン・ミレンのロザリンド、ブライアン・スティルナーのオーランドと二人の名優が演じる恋の背景はアーデンの森。プレス・クラブの小林達雄総料理長が用意したのは森をイメージしたグランド・サラダとベークド・ミート。アップル・クランブルのデザートが大きくて食べきれないのではないかと心配するほど。登場人物に因んだ恒例の創作カクテルはスパークリング・ワインをベースに生のオレンジジュースを利かせた「ロザリンド」、パール・オニオンを添えたウオッカ・マルティニが「オーランド」。ノン・アルコール・生フルーツパンチ「All the World」は未成年者等に向けたもの。

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“As You Like It” (お気に召すまま)

次回「シェークスピア観賞土曜午餐会」の演目は「リチャード三世」(日本語字幕付き)
(4月20日 開場11:30 開始12:00)。この2月にDNA鑑定の結果、528年間無名の墓で眠っていたのはボズウオ—スで戦死したリチャード三世であるとニュースになり、特派員協会内で急に要求が高まったものである。

リチャード三世はシェークスピアが描くような極悪非道の悪人だったのか? それとも敵対したチューダー王朝が彼の死後に捏造した虚像なのか?

解説は特派員協会永世会員でチューダー王朝の末裔(?!)と噂されている元日本航空の国際広報部長ジェフ・テューダ—氏。噂好きの会員やゲスト、内外の学者、学生から既に申し込みが寄せられている。


編集部注:渡辺晴子さんの紹介としてロゼッタ読者も若干名参加できます。直接クラブフロントデスク(電話03-3211-3161)にお申し込み下さい。昼食代\2000、飲み物代\550程度です。

2013.3.2 掲載


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