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第73回 「料理の鉄人」小林達雄さん総料理長に

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小林達雄 総料理長
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マイケル・ウッドフォード元オリンパス社長会見

「クィ—ンアリス迎賓館」オーナー・シェフで「料理の鉄人」の初代鉄人石鍋裕さんの右腕をつとめ二度に渡り番組に出演した小林達雄さんが、この9月特派員クラブのエクゼクティヴ・シェフとして赴任してきた。

これはクラブの料飲部門の東急グループ(インターナショナル・レストラン・サービス)への外注によるもので、小林さんはソウルにおける二つ星獲得の高級フランスレストランOroomからの配属となった。

古くは田中角栄元総理の金脈問題追及、近くはマイケル・ウッドフォード オリンパス元社長の内部告発会見など、日本のメディアに先立ってジャーナリズムの民主主義社会における立ち位置を明確にしてきた(社)日本外国特派員協会だが、実はプレス以外の内外の準会員たちには銀座・有楽町、丸の内界隈のグルメ・レストランとしても人気を集めてきたのだ。

もともと協会は職能団体であると同時にプライベート・クラブでもある性格が強く、自前で料飲部門を運営してきたが、2008年に社団法人制度が変わったため会員仲間の激論の末、ついに公益社団法人化を目指し飲食部門の外注化に踏み切った。新しい制度では公益目的の支出が50%以上などの条件があるが、協会総支出約8億円の内、どう区分けしても公益目的といえないレストランやパーティー事業が半分以上あったからだ。

外注後、レストラン組織の改革、スタッフ異動などで9月は試運転の様子だったが、10月に入ると小林チームが稼働してダイニング・ルームの新コース・メニュー、メイン・バーのランチ、パーティーのビュッフェなど急速に充実してきた。

小林さんは小柄の丸顔でいつもニコニコ。料理の邪魔になるからと格式をつけるシェフ帽子は願い下げにして愛想よくロースト・ビーフを切り分ける。筆者は今日まで三度ダイニングで食事したがいずれも大満足だった。

秋の月替わりのPen & Quill Dining RoomのLunch Menuでは冷前采に豆腐とアワビの健康サラダ,温前采にフレッシュフォアグラのソテー大根添えなど各四品から選べる。魚料理もオマール海老のフリカッセなど、肉料理もシャラン産鴨肉の北大路魯山人風等々、いずれも三、四種類のチョイスがある。料金は税込みで\4,410。

デザート四種の内、大ぶりのワイングラスで提供されるフローズン・ピーチメルバは女性客が思わず歓声を上げる逸品である。

Main Barの半週替わり三品のCorrespondents' Lunchはスープまたはサラダにコーヒー、紅茶がついて税込み\945。税抜き\900の値段は1983年以来据え置きのかわり内容は中高年男性向けのマッチョのままだったが、小林総料理長に代替わりしてから味と盛り付けが洗練されてきたと評判だ。
  特派員たちのために専用のテーブルが確保してあるが、ランチ・タイムは有楽町界隈の企業に勤める準会員たちで満席だ。

小林シェフの本領はイベントの企画に合わせてメニューを工夫することで、「シェークスピア観賞土曜午餐会」では出し物の「テンペスト」に合わせてナポリの魚料理アクアパッツア、ミラノの家庭料理スパゲッティ・ポモド—ロなどがビュッフェ・テーブルに満載。飲み物も主役のプロスぺロに因んだスプモニ、その娘ミランダのイメージを生かしたカンパリとオレンジのカクテルなどが林立した。

特派員クラブの公用語は創立以来英語である。「シェークスピア観賞土曜午餐会」は公益社団法人を目指すクラブの社会貢献の一つとして英語力向上のため会員以外にも公開しているが、英語力の舌よりも、口の中の舌の歓びを目的に参加している人々もいるようだ。会費は大人\2000、学生\1500。カクテルは\600。これで赤字が出ないようにしているのも総料理長の腕だ。

さて筆者は西班牙料理のパーティーを今月予定している。海鮮料理のパエリアと飲み物にはカバが用意されていると聞いているが、他にどんな組み合わせが現れるのか楽しみだ。


2012.11.1 掲載


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