第72回 自民党総裁戦 立候補者 合同記者会見
最近の世論調査で民主党の退潮が印象づけられ、日本維新の会もまだ心もとない。次の総選挙で第一党になり、自民党総裁が首相候補となるのが確実視されるとなると自民党総裁選へのメディアの注目度も高まってくる。
9月19日プレスクラブでおこなわれた自民党総裁選立候補者に対する会見では体調不良で欠席した町村信孝氏を除く安倍晋三、林芳正、石破茂、石原伸晃の四氏が所信を述べたが、外国プレスの質問はあからさまに次期首相に対する反応で原発と尖閣諸島問題に終始した。
立候補の理由
安倍氏は日中関係が日本にとって最大の外交課題であり、共産党の一党支配でありながら高度経済成長を遂げ、反日と裏表の愛国教育を進める中国に国際社会のルールの中で成長させ在留邦人をしっかり守らせることを言明した。尖閣諸島は頑固に守る、デフレ脱却、金融緩和、外国からの人材、若者、女性の活躍による輝く日本を創ることを提唱。
石破氏は今危機に落ちっている日本のために立ち上がった、と述べた。昭和の終わりに日本は夢のような国を創り、東西対決の冷戦構造の中で高度成長を遂げGDPは一位。しかし20年後は27位。日米同盟はゆるぎ、借金体制に入り、危機管理能力は3・11で示されたようにエネルギー、防災、金融でおろそかになっている。新憲法で示されたように他国を思いやる平和で立派な国にしたい。
石原氏は東日本大震災で福島を訪れた時のエピソードを披露した。自分たちが作った野菜を子や孫に食べさせられない農民の苦しみに出会った。東北の半導体工場が止まると日本の自動車産業全体が止まってしまう。サプライ・チェーンの在り方を見直し、金融緩和、デフレ脱却を図って60万人の新しい雇用を生み出すと述べた。
林氏は「ハーバード大学、ケネディー政治大学院修了の証として」英語で話し始めた。(注:この記者会見には日英同時通訳あり)日本は今や新しいリーダーを求めておりゴールを決めて実行すべき。日本銀行は「ゴール」という言葉を使わず「メド」というのは不可解だ。今は大阪万博、オリンピック当時の大量生産大量消費の時代ではなく、小規模生産、高付加価値の新しい市場を科学と技術で創る時代だと述べた。
原発と尖閣諸島に集中
サイエンス誌(米国)特派員:原発は続行するか?
安倍:安全を確保して続行。ゼロというのは無責任。ゼロといった途端に技術者が逃げる。
石破:福島原発事故を先ずキチンと検証する。
石原:地域の事情を考慮。活断層検査などで原子力規制委員会が安全と認めたものは再稼働。
林:ゴジラと同じ1961年生まれ(で原子力問題には理解がある)。3年間に渡って安全を確認してその後に再稼働。
自民党総裁選立候補者たちと司会のM.コーリング(写真右)
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シンガポール・ビジネス・タイムズ紙特派員:尖閣諸島問題で中国との対策は?
石破:法律の戦い、信義上の戦い、情報戦など我が国としてできるだけのことをする。海上保安庁と海上自衛隊の法律上の調整。日本国民に尖閣諸島は歴史的にも国際法上も日本の領土であることを理解させる。
石原:尖閣諸島は石原ファミリーと関係があるが(満場笑い)、客観的な話をしたい。日本は国内問題と言ってきたが中国は国際問題であると国際社会に認知させた。中国の先制勝ち。政治家のパイプ、経済人のパイプを通してお互いに理解を深めたい。
林:身を挺して日本と日本人を守る総理大臣、防衛大臣、外務大臣が要る。右手で握手して左手で握り拳を作る胆力が必要。ケネディー大統領は(キューバ問題で)フルシチョフと対決した。
英国インディペンデント紙特派員:誰も同じような答えだ。誰を選んでも同じなのか?
石破:同じ党なので同じ。
石原:(ある党のように)それぞれ別なのがオカシイ。
林:誰を代表にするべきか、誰を信頼すべきか、を選ぶ。
安倍:(挫折も含めて)私は経験を生かしたい。
ジャパン・ウオッチャーの観察
「ハヤシは毛並みもよくケネディー流の立ち居振る舞いが出来るので外務大臣がよかろう」。「町村は体調を崩したと言って合同記者会見に出なかったが、総理大臣は体力が無ければ務まらない」。「彼は面倒見が悪い」。「石原はヘッドテーブルで目線をウロウロさせたのがひ弱に見える」。「安倍は五年前にお腹が痛いと言って政権を投げ出した前科がある」。「見識や熱意から言って総理は石破ではないか」。
ベテラン日本政治記者たちの下馬評に米誌の特派員が鋭い指摘をした。
「残念ながら彼は斜視だ。国際舞台でどちらを見ているかわからない人間は通用しない。アメリカでは中流階級以上なら成人になる前に歯咬合の手術をするのが当然だ」
日本人は内容が良ければ包装にこだわらない傾向があるが、国際社会では包装は内容を反映するのが常識だ。
「防衛大臣再任なら凄みがあっていいのではないか」
「Eye ball to eye ball. 両眼で真直ぐ相手を見据えなければプレッシャーはかけられない」
「近頃は斜視の手術は簡単だ。野党でいる間に受ければよい」
記者会見2日前の読売新聞全国世論調査では次期衆院比例選で投票する政党は自民党が最多の31%で,橋下徹大阪市長を代表とする新党「日本維新の会」16%で続き、政権与党の民主党が14%である。次の選挙で日本の有権者たちはどう判断するのだろうか。
2012.9.24 掲載
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