第70回 次は何処へ?
(社)日本外国特派員協会(プレス・クラブ)の投票権を持つ正会員は紆余曲折の後、6月の理事会選挙で飲食部門を外注とする公益社団法人への新しい道を選んだが、9月の総会では今度は比較的ストレイトに新しい移転先を検討することになりそうだ。
というのも選挙期間中に現在の住所(JR有楽町駅前の有楽町電気ビル北館20階)から東京駅前の丸ビル34階(新丸ビルではない)への引っ越しを家主の三菱地所から突然打診されたからだ。丸ビルといえば三菱地所のステイタスを誇る37階建の建物で、経済・金融通信社ブルーンバーグは19階から22階を本拠とし、内外のメジャー企業がテナントとして入居、35階から上は超高級レストランを備え家賃が高値安定していることで有名だ。
「家賃は?」という質問には「特派員協会の財政は良く存じております」というのが地所側の返事。事実、協会の準会員中100人以上は三菱関係者で現在の家賃もかなり格安だ。
今回の選挙で問題になった案件の一つは現在の施設の老朽化による予算でパイプ、エア・コン、インテリアの取り換えで三億六千万円を計上、三年間に渡って臨時費千円を全会員から徴収するというもの。家財担当の第一副会長マーティン・コーリングが再選されこの案は了承されたが、三菱地所からの意外な申し出に彼は急遽理事、正会員、不動産問題に詳しい準会員からなる移転先検討委員会を組織した。
「東京駅から地下道を通って直ぐだ」
「霞が関の政府機関、大手町の経団連に近い」
「新幹線、成田エクスプレスに便利だ」
マッカーサー元帥の日本占領に従って東京で67年前に設立されたプレス・クラブは、帝国ホテル、第一ホテル、千代田ビルなど時代に合わせて順次引っ越している。
丸ビル(新丸ビルではない)は特派員たちにとって適切な住所であるという事では大半が一致しているが、「有楽町再開発のために文句の多い我々外人テナントをまず追い出すなら何かオファーされるべきだ」、「防音設備と引っ越し費用は三菱もちか?」「銀座、映画館に遠くなる」「三菱は我々に格安でオフィスを提供することによりどんな利益を求めているのか?」、バーでは会員たちのコメントが賑やかだ。
多種多様な意見が多種多様な論拠で飛び交うのがプレス・クラブの総会。何処まで移転案を進めるのか、執行部にとって実力の問われるところだ。
2012.8.13 掲載
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