第68回 石原慎太郎 東京都知事 オリンピック招致問題コメント
2020年オリンピック一次選考突破、尖閣諸島購入問題などでメディアの注目を集めた東京都知事石原慎太郎氏が5月29日、プレスクラブで昼食記者会見をおこなった。
「週末はヨットに乗っていたので」と赤茶色に日焼けし、真っ赤なお鼻になった知事は、満場のプレスを前に気持ちよさそうに慎太郎節を披露した。話題は橋下大阪市長、日本外交、官邸ガバナンスまで多岐に渡ったが、今回はオリンピック招致に絞って記したい。
オリンピックへの都民の支持
東京はアスリートの競技場へのアクセス、技術、財政面でのサポート、環境問題への対処などで高く評価されたものの、市民の支持の点では第一次を突破した二都市と比べて格段に低い。イスタンブール、マドリッドともに市民の支持が熱狂的で、イスタンブールなど87.1%の高率である。
リチャード・ロイドーペリーさん(英国 タイムズ紙)のこの点に関する質問には「東京人は贅沢、何があっても当たり前、自分のことしか考えない。都民が見に来なくても日本中から来る」と知事は答えたが、筆者は数日前に話し合った同僚の女性ジャーナリストたちの懸念についてコメントを求めた。
「東日本大震災の後、経済復興のためにも東京でオリンピックを開催してもよい、という人々は増えているが、日本の支持率は65.2パーセントと三都市で最低。知事の女性を尊重しないお人柄から支持率が上がらないのではないか?『変えるためには変わらねばなりません』という政治家もいるが、知事も女性登用を図ったり、ジェンダー問題を研究されたらいかがでしょうか?」
これに対して知事は「エッ、ジェンダーって何だ?」と通訳の高松さんに尋ねる様子を示し、「貴女が東京都民なのか日本人なのか知らないが、選挙になると(私は)女性にもポピュラー。貴女が私に投票したかどうか知らないが、もし私が辞めたら東京にオリンピックが来るなら明日にでも辞めますよ」と答えた。(因みに筆者は前回の知事選で石原氏に投票している)
2020年東京五輪招致の国内取りまとめ役、評議会事務総長の小倉和夫さんも、朝日新聞5月26日の「ひと」欄で「…まずは都庁にレディーファーストを提言したい」と述べ、五輪支持率の7〜8割への向上を目指しているが、当の知事はよくも悪くもマッチョ慎太郎流を貫きたいようだ。
2020年オリンピック開催都市について、オーストラリアン紙東京支局長リック・ワレスさんはイスタンブールを支持。「トルコでの開催は初めてとなるし、イスタンブールは西洋と東洋の懸け橋として象徴的だ」
ベテラン・ジャパン・ウォッチャーで元ロス・アンジェルス・タイムズ紙東京支局長のサム・ジェームソンさんは「東京で開催して、この機会に迷路のような地下鉄の案内を改良してほしい」と現実的な注文。
香港鳳凰テレビ東京支局長の李ミヤオさんは「東日本大震災後の日本人を元気づける行事が必要だ」と強調する。
家族の事情で1964年東京オリンピック取材にアメリカから戻れなかった筆者としては、この機会にオリンピックとパラリンピックのアスリートたちを日本が迎えられたらと願っている。
慎太郎流のまともでカッコいいところは外交姿勢で、中国、米国に対して言うべきことは遠慮せず率直に意見を述べる。尖閣諸島問題についてはプレスクラブでの発言は後日取り上げたい。
2012.6.1 掲載
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