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第64回 野田佳彦氏民主党代表に当選 第95代首相に

8月29日の特派員協会のロビーには、フジテレビをはじめ海外メディアの反応を撮ろうというカメラマンたちで朝から賑わっていた。

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野田佳彦氏

第一回の得票では海江田万里経済産業相143票、野田佳彦財務相102票、前原誠司前外相74票、鹿野道彦農相52票、馬淵澄夫前国土交通相24票でどの候補者も過半数を獲得できず、一位海江田氏と、二位野田氏による決選投票となった。

20階にあるメイン・バーで投票実況を見つめていた外国記者たちは「やはり、小沢派の数の勝利か」、「2位から5位が反小沢派で纏まるのではないか」、「無派閥の中間層が決定権を握るのではないか」と昼食の皿を前に熱心に予想を繰り広げた。

決戦投票で野田氏が215票、海江田氏177票で逆転したのを確認すると、各自19階にあるワーク・ルームのブースに走った。


プレスクラブの役員及び主要メディアのコメントは以下の通り。

「野田氏は日本の財政を立て直すため、不人気の増税路線をぶれずに主張し、信頼がもてる。スイスもスイス・フラン高で苦しんでいるが、日本が財政赤字解消への道に進み、アジア地域とグローバル経済へ貢献することを希望している。野田氏の『A級戦犯は戦争犯罪者ではない』という発言にはコメントしない」(ジョージ・バウムガートナー/日本外国特派員協会会長、スイス・ラジオーテレビ特派員)

「反小沢勢力の妥協の象徴ではないか? 人事を確認しなければ日本の政治が正常化するかどうかは疑問だ。財務省の言いなりという心配もある」(マーティン・コーリング/特派員協会副会長、ドイツ・フィナンシャル・タイムズ極東特派員)

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2002年民主党代表選候補。 左より、菅、鳩山、(2人おいて)野田、横路(敬称略)

「東北復興再建のため、増税を主張する野田氏はこの5年間で6人目の首相となる。20年間に14人の総理が出るなど、日本の政治はまるで回転ドアのようだ。津波、福島第一原発、円高、赤字国債への対策にリーダーシップが求められている。アジアの近隣たちは野田氏の戦犯に対するコメントで日本政府が1930年から40年の軍備拡大主義を修正していないのではないかとの懸念を抱くだろう」(ミューア・ディキー/フィナンシアル・タイムズ〔ロンドン〕東京支局長)

「野田氏の作戦はスローだけれど確実だ。浮かれたところがないので野党は攻めにくいのではないか? 自分はドジョウで金魚ではない、というイメージ戦略は浮ついた、芯のぶれる首相に飽きた日本人にアピールするのではないか。バングラデッシュではドジョウは食料としている」(モンズルル・ハック/元特派員協会会長、バングラデッシュ・デイリー・プロサマロ特派員)

私ごとで恐縮だが、夏季休暇で留守にしているうちに猫の額ほどの庭にある池の水がお湯になったらしく、鯉と金魚は全滅していた。ドジョウは池の奥の深い穴で元気にうごめいていた。


首相は自ら脚光を浴びようとはしないし、当時の前原代表の偽メールでのモライ事故以来、早とちりも失言もない。ドジョウのように地味にしたたかに首相として任期一杯務め上げるのではなかろうか。

野田佳彦首相は8年前に登場して以来、プレスクラブには一度も記者会見に訪れていない。日本の記者クラブの代表質問ではなく外国メディアの個々のジャーナリストの鋭い質問をどうさばくか、野田佳彦首相の真骨頂が改めて問われることになるだろう。早めの登場を外国メディア一同待ち構えている。


2011.9.3 掲載


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