第53回 岡田克也外務大臣 ジェット・ラグを押しての記者会見
「日本は今や平和で非常に静かな時代を迎えている。世界のVIPは中国に直行し、日本には来なくなったし、日本の会社は、あなたのお父さんの会社(イオン)でさえも中国に移っている」
プレス・クラブ会長ジョージ・バウムガートナー氏の皮肉たっぷりの紹介後、岡田克也外相は「昨日インド・タイの訪問から戻り、今もジェット・ラグ中で」と切り出した。
民主党代表戦を控え、記者たちは「菅VS小沢」についてのコメントを期待していたのだが、「日本の外交方針:挑戦と未来への方向」という大テーマのもと日米関係、アジアへの多重外交、新興国の活気を日本の成長に結びつける、核兵器廃絶と核の脅威なき世界へ、人権問題と人道的外交という五分野への浅く広い講演で、入れ替わり立ち替わり、菅—小沢問題を追求した各国の記者たちはやや失望したようだった。
外交官を先進国から新興国へ
今回の講演での新しい発言はG20サミットの影響力を見据えての日本外交のシフト。新興国外交推進局を設立し、今後3年から5年間に約100名の外交官を先進国から新興国へ移動するというもの。また、各国における大使館をJICA(日本国際協力機構)、JETRO(日本貿易振興機構)など国際協力機関を束ねさせると明言。
先日プレス・クラブでの講演後、菅直人総理は(当時は副総理)筆者に日本の成長外交ガイド・ラインとして資源外交に強い関心を示されたが、資源外交についてはNHKの特番でも指摘されたように日本は石油、レア・メタル(コバルト、チタン、ニッケルなど)、レア・アース(希土類ランタン、セリウム、プラセオジム、など)等の資源獲得外交は、欧米先進国はおろか近年攻撃的にアフリカ、アジアで活動する中国や韓国にも遅れをとっている。
「日本の石油輸入量は昔に比べて減っている。レア・メタル獲得は重要だ。以前は民間レベルの話で国が関与するのはベストではない、という考え方であったが、今や国の関与がなければならない時代になった。先日、カザフスタンを訪問したが、外務大臣として資源国との関係をさらに深めてゆきたい」と述べた。
通訳のピンチ・ヒッター
今回の講演ではプレス・クラブの高松通訳が連絡の行き違いで大幅に遅れ、岡田氏が微妙な話題を通訳待ちするという珍事があった。この間、ピンチ・ヒッターとして繋いだのはビデオニューズ・ネットワークの神保哲生氏。
講演終了後に神保氏にも大きな拍手が送られた。しかし、その後のメイン・バーでは「外務省のスタッフがこういう事態に備えて、スタンバイしておればよかったのに」、「そもそも外務大臣だから自前の通訳を連れてくるべきだった」との辛口のコメントが聞かれた。
G・バウムガートナー会長、岡田克也外相、神保哲生氏(写真右より)
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2010.9.3 掲載
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