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第50回
「抗争は終わった。日本からの観光客と海外からの投資を待つ」
 ゴーン・ジャティガワニット、タイ王国財務大臣緊急記者会見

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ゴーン・ジャティガワニット タイ王国財務大臣

日本政府とビジネス・リーダーとの対話のため来日中のタイ王国財務大臣ゴーン・ジャティガワニット氏は、5月21日、プレスクラブで緊急記者会見を開いた。

バンコック繁華街でのタイ反政府団体(UDD通称赤シャツ)による放火・略奪が海外メディアで大きく報道され観光客の姿が消えたタイだが、5月19日、治安部隊によるデモ隊の強制排除でタイは正常に戻りつつある。会見冒頭でゴーン・ジャティガワニット、タイ王国財務相は力説した。

「デモ隊は慎重に準備し、経済的援助を受けて(日当をもらって)地方からバンコックにやってきた。アビシット現首相は(タクシン前首相派の)要求も受け入れて国内治安のための行程表を作成し、総選挙は13カ月前倒しで11月を考えていたが、デモの興奮が冷めやらず、この状態では選挙運動を冷静に行えない。難しいだろう」

「しかし、第一四半期の経済成長は明るい。ただし問題は順調に経済成長しても、農村と都市の収入格差は1997年の経済危機当時と同じく12.8倍となっている。3万人のデモ隊の背後には数千万の不満を持つ民衆がいる」

ゴーン氏は「アジアの民主主義は西欧の民主主義とは異なる形で経済成長を遂げてきた。西欧式の民主主義国もあるが、経済的には成長していない国もある」と暗にフィリッピンを皮肉った。

大臣はまたブルーンバーグ通信記者の質問に答え、暴動の経済的影響はGNP0.5から0.7、高くても1.92%どまりと予想した。タイ通貨、株式市場、海外投資を受けた工場はバンコック郊外にあるため暴動の影響は軽微で、もっとも影響を受けたのは「ショッピングに行けない自分の妻ではないか」と笑った。

常に流血騒ぎが起こると仲裁に入るプミポン国王(ラーマ9世)の今回への暴動への影響力を尋ねる筆者に対して、ゴーン氏は「国王の仲裁がなくても両者がテーブルにつくのはタイ民主主義の成長を示すものだ」と答えた。

記者会見に参加したタイ人学者によると「メディアも国民も国王の権威は犯すべからず。ミュージカルの『王様と私』も王国内では公演禁止」とのことである。

公平を期するために記すと、暴動による死者の弔いの経費と怪我人の入院費は、アビシット派タクシン派を問わずラーマ9世が提供されたそうである。

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(写真右より)ハック特派員協会会長、ゴーン タイ王国財務相、ウイーラサック タイ王国全権大使、筆者

2010.5.29 掲載



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