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第45回 コロンビア大学政治学教授 ジェラルド・カーティス氏
      民主党勝利を解説

民主党鳩山由紀夫は9月16日招集された特別国会で第92代首相に選ばれ、同日夜に民主党、社民党、国民新党による鳩山連立内閣が正式に発足した。

総選挙で野党が単独過半数を得て政権交代を実現するのは戦後初めての現象で、日頃"ジャパン パッシング"(日本は無視)する経済誌なども、既に東京支局を"卒業"して本社の国際部デスクに出世しているヴェテラン記者などを改めて東京に派遣してきた。

特派員協会では民主党が308議席を獲得した衆議院選の翌日、日本の政治の長年のウォッチャーであるコロンビア大学政治学教授、早稲田大学客員教授であるジェラルド・カーティス氏を昼食記者会見に招いた。


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ジェラルド・カーティス教授

「民主党が勝ったのではない
 自民党が負けたのだ」

会場から溢れる超満席の会場で、カーティス氏は日本の新しい政治現象を一言で切った。
  「麻生の支持率が低下したからではない。経済状態が悪いからでもない。森はもっと低かったし、経済が悪くなれば自民党の方が上手くやってくれると思う国民もいる」

「政権与党に安住して国民との接点を失ったことが自民党敗北の一番の原因だ。東京から離れるにつれて、国民の怒りが高まっていた。地方に住む人々はダムや道路を必要としていない。若い人々が地域社会に残るよう、仕事の場や病院を求めている。ところが、自民党は地方議員と一緒に建設業者に顔を向けている。天下りまで組織している官僚と与党の政治に"No!"を突きつけたのだ」
政治学者は淡々と分析する。

「(自民党は財源を問題にしたが)初年度は極めて小額なので、(元官僚の)岡田克也、藤井裕久などは子ども手当ての新設、温暖化対策、失業問題など赤字国債を出さずに処理できる。

外交問題では首相に選ばれたからといって米国政府に挨拶に行かないのは反米ではない。ワシントンは用事もないのに顔を見せに来る日本の政治家にアキアキしている。そもそもオバマ大統領は"ご挨拶"訪問を受けるほど暇ではない。オバマ大統領と鳩山首相は環境、エネルギー問題など21世紀の課題をお互いに検討してから会談すべきだ。アジア経済は日本の準内需問題として 日米関係と同時に考慮すべきだ。

自民党は一人区で敗れた古手が比例区で復活してきている。当選者100人以下であれば次回復活のチャンスがあるが、比例区で救われた古手との摩擦が妨げになる」

以上、カーティス教授の解説は簡潔明解であった。

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マーティン・コーリング、カーティス教授、
ジョエル・リゼンドルドル・コイズミ(左より)

質疑応答

NYタイムズ:鳩山は政治家として弱々しいのでは?
答え(A):初期はエンジニアになろうか、政治家になろうか、という迷いが感じられたが、幹事長になってから政治家の顔になった。

ビジネス・タイムズ(シンガポール):沖縄にあれほどの軍隊が必要か?
A:平等な関係が欲しければもっと平等に仕事をしなければ。戦地に踏み込んだ(Boots On The Ground)といっても、オランダやオーストラリアの軍隊に守られている。(自衛隊を派遣する代わりに)中国の河川浄化、新インフル対策など、日本ができる国際貢献を米国に提案すればよい。

メディア・リポート(米国):小沢氏が姫軍団といわれるほど女性候補者を立てたのは、政治の世界における「ガラスの天井」を打ち破るためか?
A:小沢氏がフェミニストとは思えない。その選挙区で相手に勝てる候補者を選んだ。女性政治家を増やすことは彼の目的ではなかった。

スカイテレビ(イタリア):開票結果が出たので町で踊りだしたり噴水に飛び込む絵を取って来い、とカメラマンを送り出したが、ビデオ・テープが空白のまま帰社してきた。日本人はなぜ欣喜雀躍しないのか?
A:日本人は政治を距離をもって見るようになった。民主党の勝利を祝うというより、日本を覆っていたのは「やっと自民党政治から抜け出た」という冷めた気分だった。

確かに、国民は冷めていたが、少なくともメディアには前夜の歴史的政変に高揚した気分が残り、時間切れで質問できなかった特派員たちに司会者のジョエルさんは突き上げられていた。

特派員協会では発足早々で忙しい首相に代わってユニークな言動で女性誌を賑わせている鳩山幸夫人に招待攻勢をかけている。

2009.9.20 掲載



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