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窓の外では東京都議選の候補者よりも自民党、民主党の幹部たちが声を嗄らして「最後のお願い」と叫んでいたが、都議選では自民が惨敗、民主が躍進し、与野党の勢力図は逆転した。 ここプレス・クラブでも、従来は欧米の有力メディア特派員たちが会長職を務めていたが、今回、2週間以上に渡る激戦で大きな地殻変動があった。 理事会役員を3期務め、4期目で会長を目指す現職第一副会長の米国経済誌"Forbes"特派員ティム・ケリーさんを退けて、途上国バングラデッシュ"Protham Alo"特派員モンズル・ハックさんが会長に当選したのだ。 実はここ数年、プレス・クラブは理事会役員と事務方の総支配人の人材に恵まれず、従業員たちとの対話も断絶。6月の役員候補指名総会には会場入り口で従業員組合代表が「スト予告」の訴えのビラを配るなど、労使間の雰囲気は険悪の一途を辿っていた。
しかし、ハックさんは7月1日の新旧理事会の引継ぎ完了後、即、副会長2人と共に従業員組合代表と面会し、新理事会による現状打破を宣言し、組合側もこれを了承して対話路線に戻ったのである。 日本でバングラデッシュといえば、とっさに、「貧困、識字率の低さ」を思い浮かべる人々が多い。ところがハックさんの経歴には正にインド亜大陸名門の帝王教育が濃く反映している。 当時は東パキスタンと名乗っていたバングラデッシュの首都ダッカの警察庁長官の家系に生まれ、その頃インド・パキスタンに急接近していたソ連の奨学生となりモスクワ大学へ留学。 パキスタンから独立を目指す東パキスタンの革命戦争の中で、同じ民族が武器を手に血で血を洗う不幸に直面し、「自分はペンで戦う」と決意しジャーナリストの道を選んだ。 ベンガル語の地元紙をスタートに、ロンドンでBBC世界ニュースに記者として勤務。現在はバングラデッシュ最大の日刊紙"Protham Alo"の他に、英字紙"Daily Star"やベンガル語の雑誌などにも寄稿している。 ハックさんは小柄でいつもニコニコしているので、組みしやすいと誤解していた記者たちもいたが、どうして、どうして、芯は強靭。理不尽な要求にはしっかり「No」といい、一度口にすればぶれることはない。
今回の選挙では第一副会長に日本人(Media Report 渡辺晴子)、第二副会長にイタリア人(Sky TG 24 ピオ・デミリアさん)が当選。若手数人も理事として加わった。今期の理事会のモットーは「公正かつ透明にプレス・クラブを経営し、ジャーナリストの連帯を深めること」。 東京から世界に向かってニュースを発信するプレス・クラブの活動がまた、勢いを強めそうだ。 2009.7.16 掲載
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