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第32回  Japan Cup
東京競馬場は大人の社交場・健全な子どもたちの広場


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「輝く緑のベルベットの芝生、駆け抜ける栗毛・青毛の駿馬たち」

「100万賭けるのも10万賭けるのも同じスリルだ」と豪語するリッチなファンも「家族でディズニーランドに行ったつもりで」と数千円かける子ども連れのファンもいずれもサラブレッドたちのアスリートより力強い容姿と、バレエ・ダンサーのように優雅な動きに魅了されているようだ。

「第27回ジャパンカップ競争」(Japan Cup)(芝2400m)は外国馬4頭、日本馬14頭合計18頭のフル・ゲートで11月25日東京競馬場にて開催された。外国騎手は招待騎手4名、日本在籍騎手2名の6名。「国際G1レース」なので、ベビー・キャリッジに乳児をのせた家族の傍らを大使館関係者なのか正装した外国人たちが颯爽と歩く姿も見受けられた。  

競馬場といえば欧米では紳士淑女の社交場だが、ここ東京競馬場では大人と子どもの両面に焦点を合わせた健全なレジャー施設となっている。しかし、地面に座り込んで予想紙片手に鉛筆を舐めている老若男性たちが場外馬券売り場特有の鉄火場の雰囲気を漂わせていることも否めない。

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柔和な表情のポップロックだがレースでは壮絶な争いをみせた

ゲートをくぐると待ち受けたポニーたちにワット群がる子どもたち。順番に撫ぜたり並んだりしてお父さん、お母さんに携帯で写真をとってもらった後は競馬場中央の遊園地に向かう。プレスクラブの通信社カメラマンたちは外国騎手取材に向かったが、筆者はメモリアル・スタンド観戦席に上がった。

芝生を見下ろすと、メイン・レースを迎えるころにはいつの間にかお父さんたちはレース・トラックの柵側に集まり、遊園地内は母子家庭となっている。お父さんの「家族サービス」の魂胆が見透いて微笑ましい。

メインの第10レースのスターターが合図すると場内から地鳴りのような歓声。スタートはメモリアル・スタンドの真下である。18頭が一団となって飛び出しフサイチパンドラが先頭へ、第2コーナー第3コーナーと混戦が続き、第4コーナー直線に入ると外国騎手ペリエ騎乗のポップロックが勢いをつけ、際内枠からアドマイアムーン、外からはメイショウサムソンが強烈な追い込みを仕掛けてきた。写真判定の結果は2分24秒7の同タイムで優勝5番人気のアドマイアムーン、2着4番人気のポップロック(頭差)で3着は昨年ディープインパクトで優勝した武豊が騎乗する1番人気のメイショウサムソン(首差)であった。

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シンガポール人馬主ダトー・タン・カイ・チャー博士(左)と友人

Japan Cupにエントリーした外国馬はペイパルブル(英)7着、アルティストロワイアル(米)8着、サデックス(独)11着、ハリカナサス(英)17着と冴えない結果で、インフルエンザの影響で来日を取りやめた駿馬がいるといえ、昨年優勝したディープインパクトに続いて日本馬の強さを世界に示す結果となった。

「シンガポールでは競馬場は大人の社交場。18歳以下は入場できないよ」とJapan Cupに合わせて5回目の来日を楽しむシンガポールの肝臓移植専門医ダトー・タン・カイ・シャー博士は賭博場と家族のレジャー施設を両立させた日本中央競馬会(JRA)の柔軟性に感心する。

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タンさんと友人のグループは5年前から平均価格500万円で1歳駒を買い始めすでに11頭を保有。うち七頭はシンガポール競馬場で活躍し、四頭は北海道にある三石育成牧場に預けてあるという。「サラブレッドは趣味と投資の対象だが、そのうち優勝するよ」と鷹揚に笑っていた。

シンガポールは既に東京を抜いてアセアン・東アジア地域の金融センターの要となった。JRA幹部によると日本の現役の馬は高価でアラブのオイルマネーでもなければ購入することは無理だろうとのことであったが、アドマイアムーンはJapan Cup優勝を置土産に引退して種馬となる。彼の子孫たちは近い将来シンガポールでも活躍するのであろうか。

さて、今年も残すところG1レースは中山競馬場の「有馬記念」のみとなった。
プレスクラブの馬好きの特派員たちはJRAから届いたばかりの来年のカレンダーを眺めながら今年最後のチャンスを楽しみにしているようだ。



2007.12.16 掲載

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