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9月19日特派員協会は宿願の総裁選候補者たちを同時に迎えた。従来、単独候補者の講演はあっても、「顔見世」は日比谷公園を挟んでお向かいにある日本記者クラブの特権であったが、今回は9月21日の記者クラブの会見より3日も早く設定されたということで、報道委員会はじめ事務局スタッフも興奮気味であった。 冒頭、福田康夫氏は「権威ある栄光の外国特派員協会にご招待頂いた。官房長官時代は避けてとおり、先週の水曜日まではここで話すとは思っても見なかった。政治の世界は一寸先は闇」真面目な顔つきで会場の笑いをとった。 前外相麻生太郎氏は「Thank you very much for inviting me. Will speak in English to save time.」と例によって口をひん曲げたべランメー英語で始めた。(尚、スピーチ以外の 質疑には両氏共日本語で答えた) 緊急講演の案内は48時間前だったにもかかわらず、会場は超満員。テレビカメラ16台、スチル・カメラ20台、プレスクラブ会員190名、会員以外のプレスの参加も130社と今年最多の出席数で、別途メディアルームまで開放したにもかかわらず、同時通訳のブースの前まで記者で溢れかえる騒ぎであった。 安定の福田VSチャレンジの麻生
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ベランメエ英語で話す麻生氏と隣に座った福田氏の表情が対照的。 |
一方、麻生氏は「『自民党をぶっ壊す』という総裁を出して自民党は壊れた。自分は壊すことを反対して総裁選に出たが負けた。参議院戦で29人の1人区で自民党が6勝23敗だったのは地域の首長の経営能力が問題」とし、「地方にもっと権力と財源を与えて構造改革を進め、都市と地方のギャップを埋めることが大切」と述べた。構造改革については、「ITの活用により、役所の煩雑な判子、書類手続きを改革したい」。靖国問題には「国のため尊い命を投げ出した人を国家が祭ることを禁じている国は世界にない。政治問題にすることが最大の問題」と決付けた。
麻生氏は「日本のGNPの10%しか輸出で得ていない。90%は貿易によらない1人区地方の地元産業。市場経済主義の“Winner takes all”(勝者が全部分捕る)ではなく、Japanese standard, Local standardが必要」と強調した。
両者ともテロ対策、対アジア問題では同じ認識で、海上自衛隊のインド洋上の給油活動継続には新法で対応すべきで、また村山発言は継承すると述べた。
テレビ用ライトで熱くなった会場の空気とは反対に、質問にも立たなかったニューヨーク・タイムズ紙やロイター通信、ドイツ通信のヴェテラン特派員などは醒め切っていた。
「トップが病気でメディアの同情を得られるのは一週間限り」「与謝野官房長官は安倍首相はパトロール・カーの先導により5分で官邸に戻れるので代行は置かないといっているが笑っちゃう。危機管理の意識がないのか?精神的肉体的病で辞職した人が決断できる筈も無いのに代行を置かないのは自分が権力にしがみついていたいだけ?」「米国では大統領でなく州知事レベルでもたった2時間手術するだけでも代行を指名する。日本の権力構造は最高権力者の責任の所在を明確にしない」「いま、テポドンが落ちてきたら対策を決定するのは駐日米軍か?」「そういえば新任の駐日司令官が着任するよね」
「麻生候補は英語の発音が聞き辛い。同時通訳の日本語で分かった。福田候補が日本語で話すなら自分も日本語で話すのが礼儀ではないか?」(両氏とも同時通訳を聞くイヤホーンはつけず、福田氏は麻生氏の英語スピーチ中は目玉をぱちぱちさせて会場を眺めていた)。「いずれにせよ福田総裁は選挙管理内閣で直ぐに解散するよ。もうインタビューは済ませたよ」。
「40年以上政治家をやっているが、所信表明した首相が辞任するのは初めて」と民主党党首小沢一郎氏は語ったが、筆者も40年以上の記者生活でこれほど日本と日本人政治家が国際社会のメディアから軽く扱われているのを見たのは初めての経験だった。(おわり)
2007.9.20 掲載
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