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第17回 民主党代表 小沢一郎氏 新イメージで外国記者会見


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小沢一郎氏

小泉純一郎自民党総裁の秋の退陣を控え、プレスクラブ記者会見夏の陣は急に慌しくなった。並み居る小泉内閣閣僚からの候補者たちを、会見の内容と取材に集まった記者の密度でダントツに引き離したのが、民主党代表小沢一郎氏である。

「一郎は一郎でもメジャーリーグのイチローほど有能でないので、メディアの批判を受けている。昔はすぐ反論したが今はジッとにこやかにしている」と先ず笑いを取った。
  「この世界に入って37−38年。未だに人前で話すのは好きではないし、上手くもない。そういう意味では人間として性格が欠けているのかもしれないが、田舎者は田舎者らしく政権を目指して頑張るので皆様のご指導をお願いしたい」と続けた小沢氏に会場の雰囲気が和らいだ。この短い挨拶後、直ちに質疑応答に入った。

北朝鮮のソフト・ランディング

RTLインターネット(フランス):北朝鮮からのテロ攻撃に備えて日本も核武装するか?
小沢: 日本の核武装は日本にとって軍事的にも政治的にもプラスにならない。北朝鮮の核武装は日本を破壊するだけの力はない。問題は北朝鮮の独裁システム。これをどうソフト・ランディングさせるかが政治的課題で、これには日米、日中、国際社会の一致協力が必要。
サム・ジェムソン(フリーランス):麻生外相他はミサイル基地を叩いても良いといっているが?
小沢:北朝鮮に日本を攻撃する能力があるとは思わない。暴発することはあるかもしれないが、国際社会を敵にまわすとは思わない。「日本が敵基地を叩く」(論は)日本政府が敵と認定した国をどこでも攻撃できるという考えで暴論である。
ドイツ・フィナンシャル紙:安倍氏または福田氏が自民党総裁になれば党は割れるか?民主党はどうか?
小沢:自民党(議員)は(主義主張でなく)政権にいることが中心と考えている。政権にある限り自民党は割れない。参議院戦で野党が過半数を取れば、例え衆議院で過半数をとっていても政権は運営できない。そうなれば(自民党が)どうなるのか皆さんに考えて欲しい。
自民党の後継総裁については、誰がなっても関係ない。民主党に政権が取れないのは、民主党自体が国民の信頼を得ていないから。信頼を得ればいつでも政権は取れる。

自立国家としての日米同盟

NHK:日本の愛国主義の高まりに問題がないのか?
小沢:どの国にも愛国主義はある。それが排他的なものになってはいけない。中国や米国には、日本では少数派だが良くない愛国主義の高まりがあると懸念する声がある。

更に小沢氏は日米同盟の問題点を指摘した。

小沢:自分が自民党幹事長時代に「湾岸戦争がある」といったが、政府も外務省も「戦争はない。(なぜなら)米国から通知が来ていないから」といっていた。しかし戦争を始める四時間前に通知があった。
イラク戦争の時はもっとひどく、開戦後にはじめてアーマコスト大使が電話を一本かけて来た。私の意見ではこれは同盟関係ではない。しかし、日本にも問題がある。日本が本当に自立国家として日米同盟と言える関係になるべきだと思う。

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日本の少子化問題の質問を聞く小沢氏

アジアにおける日本の地位


ハンデルスブラット紙(ドイツ): 東南アジアの自由貿易協定における日本の立場は?
小沢:日本にとって日米関係は最も重要だが、アジアの一員としてもっと大きなものにならなければいけない。キチンと体制を整えて各国民の信頼を得る。この点で小泉さんの日米関係とは異なる。

筆者は小沢氏の育児休業対策を尋ねた。
「中国ではまだ一人っ子政策を続けているが民主党は日本の少子化対策として父親の育児休業を促進しないのか?」

小沢:中国でも少子高齢化の問題がある。日本の少子化出生率1.25を騒いでもしょうがない。男女の役割分担、教育費のコスト、女性の就業、三世代同居など子どもを生みたい社会のシステムを構築することで日本の少子化は防げる。いずれ民主党の具体的なマニフェストに織り込みたい。

三世代同居と一口にいっても日本では高度成長社会を身を粉にして支え、その上に年金カット、介護保険負担金の値上げで、今なお働く祖父母も数多い。記者の質問に具体的に答えて評価を上げた小沢氏が、少子化問題に対する答えだけをマニフェストに盥回ししたのがチョッと残念だった。

2006.8.4 掲載

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