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第15回 ”THE THAMES AND I“
      皇太子殿下の著書を元在日英国大使が英訳


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元在日イギリス大使 ヒュー・コータッツイー卿

“The Thames and I: A Memoir of Two Years at Oxford”皇太子殿下のオックスフォード大学生活回想記の英訳出版記念会が、このほど翻訳者のヒュー・コータッツイー卿を迎えてプレス・クラブで開かれた。皇太子殿下のご出席こそ無かったが、出席希望者が予想以上に増え、一回では会場に入りきらず、二回に分けた。ロンドンから到着されたばかりのご高齢のコータッツイー卿には、二度も講演して頂くこととなった。

筆者は一回目の記念会に出席し、イギリス(正式にはグレート・ブリテン及びアイルランド連合王国)の人々が日本皇室と皇太子殿下に寄せる敬愛の気持ちを改めて感じた。

日本式の講演は謝罪と謝辞から


知日家の元在日大使は「日本では全ての講演の冒頭は謝って始めることになっている。時差ぼけで82歳の老人、もし声が届かなかったら(会場から)大声で注意して下さい。もっとも日本では88歳の米寿にならないと老人とはいわないらしい」と聴衆を笑わせた。

「謝罪の次は謝辞となっている。先ず皇太子殿下に感謝。殿下の著書が無ければ来られなかったし、JALも航空券を出してくれた」
  「それから聴衆の中にいる、、、senior moment!(老人ボケで度忘れした)」
  「出版社が売れ行きを案じていると600冊も注文してくれた三菱グループ」
  コータッツィー卿の天衣無縫の出版記念会は質疑応答以外は謝罪と謝辞が大半を占めた。

もともと卿は1993年に殿下の「テムズとともに」が出版されたと同時に翻訳を思い立ったという。しかし宮内庁などに申し入れたが、「許可申請書が著書の原本のページ数より多くなり」翻訳出版まで20数年経過したという。

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皇太子殿下のお著書 英訳なる

「楽しく聡明な回想」

チャールズ皇太子は今回の英訳出版に序文を寄せられ、歴史的に日英友好の絆として多くの日本皇族が英国を留学の対象に選ばれたのは嬉しく、皇太子殿下のオックスフォード留学記録は楽しく聡明な回想と紹介されている。

回想記はテムズ河の流通問題研究から始まった留学生としての日々、大学の寮生活、オックスフォード大学のテューター(個人教師)との一対一の研修、買い物、コンサート、ボートや登山、週末の欧州旅行など1983年6月から1985年10月まで二年四ヶ月に渡る思い出と観察を伝えている。中でも修行中の皇太子を受け入れた大学や、コミュニティーの人々との思い出、日本では難しい同世代との自由な交流の追想が胸を打つ。

「男系天皇論者は恥知らず」

会場からの愛子様の天皇継承問題について質問があり、卿は声を荒らげた。
「男系天皇論者はシェイムフル(恥知らず)だ。イギリスでは憲法の下でエリザベス女王がどの政治家より国民のために働かれている。いまや欧州の王室では第一児が継承している。前例がないというがそれなら前例を創ればよい」

コータッツイ—卿は、皇太子殿下と雅子様はもっと国民の前に姿を現し、皇室に関心の無い若い国民層にも存在を知らせるべきだと強調した。

東南アジアを歴訪された天皇、皇后両陛下はタイのプミポン国王(78)の即位60年 記念式典に6月12日出席され、25カ国から招かれた賓客と語り合われた。皇太子殿下もそのうちご病気から回復された雅子様と共に海外友好親善の旅に出かけられるのだろう。

それにしてもイギリス人にはディスクリート(思慮深くひそやかな)な国民性があるのだが、この時期にヒュー・コータッツイー卿が日本を訪れたのは皇太子ご夫妻と愛子様への明白な応援なのだろうか?

2006.6.16 掲載

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