WEB連載

出版物の案内

会社案内

第6回 「日本は変わるのか?」東京10区に特派員も注目


「民営化すれば郵便局が集めた340兆円の一部は海外投資にも向けられるのか?」「小泉総理は自民党の派閥政治を変えられるのか?」「公共事業からソフト・パワーに経済政策がシフトするのか?」誰がリーダーになっても代わり映えしない、と日本の政治問題には今まで関心の薄かった外国メディアが一転して郵政民営化選挙に強い関心を示している。

そこでプレスクラブでは9月2日昼食記者会見に民営化賛成派と反対派の激突する東京10区の二大候補者小池百合子環境大臣(自民党)と小林興起氏(新党日本)を招いた。
ちなみに、この東京10区はロゼッタストーンの本拠でもある。

羽田空港拡張VS地球温暖化防止

記者会見は小林氏と小池氏が先ず政見を述べた後、両者の間で質疑応答、その後、出席特派員たちが質問する形で行われた。会見に20分遅れて出席した小林氏は硬い表情でテーブルに肘をつき、正面を見据えたまま日本語で話した。一方、テレビニュースキャスター出身の小池氏は立錐の余地もなく並んだカメラと窓際にまで座った記者たちに満遍なく微笑みながらソフトに英語で話しかけた。

photo
新党日本 小林降興起氏 主宰カルドン・アズアリ氏 小池百合子環境相

「郵政民営化は反対。国民から集めた貯金で羽田空港拡張工事すれば景気対策にもなり特派員の方にも役立つ。公共工事でGNPを上げて少子化、高齢化社会対策にまわす。小泉首相は公共事業を切りすぎる。中小企業は担保がなく、銀行から金を借りられない。小泉改革は壊すばかりで未来像を示していない」 小林氏は時々同時通訳のイヤフォーンの調整に戸惑いながら訥々と自説を述べた。

一方、小池氏は「I am not a sniper nor an assassin. I am just a delicate Japanese woman」 (私は狙撃手でもなければ刺客でもありません。ただのデリケートな日本女性です)と切り出して 先ず満場の笑みを誘った。

「参議院議員当選当時この特派員協会に招かれて「日本の政治は歌舞伎と同じ、役者は全部男性で、観客は観劇前から芝居の中身を知っている」と申し上げたが、小泉首相はこのドラマを変えた。反対派は郵政民営化法案を参議院で否決すれば小泉首相を葬り去ることが出来ると考えたが首相は衆議院を解散した。古い政治家にはショックであったろうが、私は選挙民に選択肢を与えるため、あえて神戸から東京10区に移動して立候補した」流暢な英語で語った。

激論の中身は?(両者とも日本語を使用)

小林:郵政民営化は米国のためだ。日米首脳会議で小泉首相はブッシュ大統領に約束している。閣僚なのに会議の中身を知らないのか?米国大使館のホームページにも出ているのに不勉強だ。民営化すれば外資に日本(の金融資本)が乗取られる。
小池:首脳会議の細かい点は外交問題でもあり閣議でも知らされない(ホームページなどに出るものではない、との皮肉は記者から苦笑いで受け止められた)。拓銀や足利銀行なども外資に買ってもらったほうがよかったのではないか。

小林:参議院が否決したから衆議院を解散するとは愚かだ。
小池:衆議院が賛成したものを参議院が否決できるとは二院制の問題点。政治改革が必要。 慌てて新党を作ったのは何故か?

小林:小選挙区制度では政党に属さないものは不利。ビラの数も限られ、政見放送もできない。
小池:ビラと政見放送のため作った新党なのか?古い族議員の弊害はアスベスト問題などにも明らかだ。

小林:国民が大切にしている郵貯と簡保をどうして廃止しようとするのか?
小池:与謝野ペーパーによれば両方とも2015年には赤字に転落する。公共事業でお金を使うより、クールBizで予算を使わず民需を増やし地球温暖化を防止する。

小林:しばらく郵政公社でやればよい。
小池:改革にはスピードが必要。公社を作ったのが間違い。

特派員からの質問

メディアリポート誌:小池さんへ、池袋を環境問題のテストケースとするとは具体的に。また小林さんへ、小泉首相はシスター・コンプレックスで女性候補を比例区のトップに据えたと思うか?
小池:コミュニティーとのコミュニケーションも図れる打ち水と池袋駅前の放置自転車整理から始めて持続可能な日本に改革する。自転車は省エネ手段として重要だ。
小林:お姉さんたちの影響かどうか分からないが、「刺客」の印象を消すために女性を使った。

CNBCアラビア:イラクと日本の関係は?
小林:イラクへは米国への協力として派兵した。日本はイラクへも国連へも莫大な金を使っている。米国も安保理に日本を推薦するぐらいしてもよい。
小池:イラクへの派兵は学校、病院の補修などイラクの人々に感謝されている。次はフセインが
干し上げたメソポタミア湿原を復元して現地の文化と経済の復興に協力したい。

小林氏が日焼けした顔に緊張を漲らせ、実直一方で答えるのに対して、小池氏は適切に軽やかに数字を並べて答え、両者の討論と質疑応答は「勝負あった」感があった。

辛口の批評

ところが特派員たちに両候補の印象を聞くとかなり手厳しいものがある。「ミス小池のプレゼンテーションはShallow(浅い)。外国人には分かりやすく、自分たち若い世代にはアピールするものがあるが、中高年層には理解できないのではないか?」
 「冒頭でDelicate Japanese womanと切り出しながら、小林氏の幼稚な部分をあぶり出し、彼の顔を潰した。またカルドンが主宰者なのに後半の討論では自分がアンカーパーソンのように仕切りかねなかった」
 「小林60点小池120点。しかし下町の選挙民は地球の環境問題を説く才女より、身近でいざという時に頼れる小林氏に投票するのではないか?」

プレスクラブの男社会からは辛口の批評。とはいえ小泉首相のリーダーシップと比例区代表候補トップ10名中7名を女性にした自民党執行部の方針は「ついに日本も変わるのか?」と海外メディアの熱い注目を集めている。

ニューヨーク多発テロの記念日である9月11日。さて東京10区の有権者たちはどのような審判を下すのだろうか?

編集部注:東京10区は、小池百合子氏(自民党)、小林興起氏(新党日本)、鮫島宗明氏(民主党)、山本敏江氏(共産党)の4人の間で、激しい選挙戦が繰り広げられています。

2005.9.5 掲載

著者プロフィールバックナンバー
上に戻る