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第73回 「東日本大震災後の学校で感じたこと」について

皆さんこんにちは。今回も連載をご覧下さりありがとうございます。
  節電の夏ですが、体調など崩されたりしていないでしょうか。秋になると文化祭、体育祭などの行事が組まれている学校も多いので、暑さが続く場合、体調管理に充分気をつけて下さい。

生徒たちを見ていて気になるのが、男子で、「素肌の上にワイシャツを着ている」者がいることです。汗をかいてもべたつかない、高機能の下着を1枚着た方が、汗も吸いますし、冷房で体が冷えることも防いでくれます。冬も冷えを防ぎますので、着ているほうが体温調節をしやすいです。体育などで汗をかくのでしたら替えも用意し、男女とも、ワイシャツ・ブラウスの下に高機能のインナーを着ることをおすすめします。

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今回のテーマは、「東日本大震災後の学校で感じたこと」ことです。
  東日本大震災の直後から、放射能に関してはさまざまな意見が出ています。私も東京で仕事をしながら、ずっと、どうすべきなのか試行錯誤しつつ生活してきました。

私事ですが、敏感肌で花粉症持ちの私は、今年の春以降、今までに経験のない、顔のかゆみや腫れに悩まされました。現在も完治はしておらず、治ったと思うと再発するので、皮膚科への通院が欠かせません。特に、3.11直後は、放射能と花粉を防ぐため使い捨てのマスクをすると、マスクで覆われた部分がかゆくなるので、紙のマスクではなくガーゼ製品に代えたりしたのですが、このようなことは初めて経験しました。
  その後も、行きつけの化粧品会社のスタッフさんと話すと、「今年は例年になく肌のトラブルを訴える方が多い」ということを聞きました。

もちろん、ストレスや、今まで使っていた化粧品が肌に合わなくなったなど、他の原因が先に考えられることではありますが、経験したことのない事態を経て、放射能に限らず、空気中に有害なものが漂っており、敏感な人はすぐ症状に表れるのだろうか、東京でさえこれだけ症状が出るのだから、福島県や他の被災地の方はどうなのだろう、ガレキの山から有毒物質も出ていると聞くが、薬は足りているのか、などと考えて過ごしてきました。

放射能に関しては、見解が分かれていますが、私は、「直ちに」ガンになるなどの影響が出ないだけであって、長期的に見れば影響が出るかどうかはわからないと思います。なぜなら、今回の福島第一原発で出た放射能は広島型原爆の約20個分、1年後の残存量は原爆なら1000分の1になりますが、原発なら10分の1にしか減らないという試算もありますし、大震災から5ヶ月経過したにも関わらず、まだ原発事故が収束しない(=放射能をまき散らし続けている)などという事態は、前例がないからです。この放射能の試算は、東京大学アイソトープ総合センター長・児玉龍彦教授によるものです。「東京新聞」2011年8月1日「筆洗」で紹介されました。

それから、最近の遺伝子の研究でわかっている問題に、「親の代での悪い習慣が、子どもや孫にまで悪影響を与える」ことがあるそうです。たとえば、「成人前から喫煙する父親の子は太りやすい、あるいは短命になる」といデータがあるそうです。遺伝子は不変ではなく、環境などで書き換えられるのです。これを「エピゲノム」というそうです。
  エピゲノムに関しては、太田邦史氏の『自己変革するDNA』(みすず書房)という本をご参照下さい。なお、私のblogからも購入できるようにしてあります。

ですので、放射能の影響を受けやすい子どもや妊婦、また、将来、妊娠を考えている女性はできるだけ影響を受けないほうが良いと私は考えます。ただ、同じ親から生まれた子どもでもガンになる場合とそうでない場合があるように、発症するかどうかは個人差があると思います。

出た放射能はごみのように回収できませんから、なるべく体内に取り込まないようにし、健康診断も定期的に受けるべきです。バランスのとれた食事をして、喫煙をせず、適度な運動と睡眠を心がけ、健康的な生活を過ごすことが大事です。不摂生などをすると病気にかかりやすく、また、治りにくくなりますから、なるべくそのような生活を避けてほしいです。
  放射能は骨髄に悪影響を及ぼし、ウィルスなどを退治する白血球の組成をできなくします。このため、病気になっても治りにくくなる、ガンにかかるなどのことが考えられます。

放射能の影響を心配し、西日本にお子さんを避難させているご家庭もあり、一家離れ離れで、おつらいと思います。これは「直ちに」影響が出ないが、お子さんのためを思って、という意味の判断です。このご判断は家庭ごとに異なりますので、「避難した家庭を、避難していない家庭が非難したりする」ことがないようにしていただきたいです。

一家離れ離れのご家族の多くも、夏休み中は会えたと思いますが、この先も、折に触れて「つらいと思うけれど、○○ちゃん(くん)が大事だから、将来を思って」ということをお子さんに伝え、お子さんが避難について、自分自身で納得ができるようにお願いします。納得できないと、「遠くに無理やり行かされて、つらい思いをした」と、将来、お子さんが保護者に対して不満を抱くことにもなりかねません。

学校では、現在、福島県・宮城県・岩手県などで、グラウンドなどの除染が行なわれています。最近、福島県は国が除染推進チームを設けて、また、岩手県は県が今後予算を計上し、それぞれ実施することが明らかになりました。
  関東でも「ホットスポット」、放射能汚染の高い地域があると報告されていますので、気になる場合、公立校なら学校、または教育委員会や管轄の自治体、私立校なら校長や学校法人に除染を働きかけられることをおすすめします。
  なお、ガイガーカウンター(放射線量計測器)が、秋以降多く市場に出回りそうですが、現在売られている製品の品質には、ばらつきもあるようです。ですので、購入や計測を考えている方は、品質の評判などをよく調べるのが良いのではないでしょうか。

お子さんの被曝をなるべく防ぐこととして、考えていただきたいのが、「部活動」です。体育の授業は雨なら体育館などで実施できますが、基本的に外で行なう部活動は、豪雨や雷雨にならない限り、室内練習になりません。現在でも、「雨が降ったら練習をやめてほしい」などとお考えの方も多いと思いますが、部活動は、特に私立校にとっては、「学校を有名にして、その競技はもちろん、多方面ですぐれた生徒を集める」手段の一つです。その手段である以上、雨が降ったら練習をやめると、練習が不足し、大会での好成績を挙げることが難しくなり、顧問が校長などから厳しく叱られることも考えられます。ですので、練習をやめるのは難しいでしょう。

ですから、「雨が降ったら練習をやめてほしい」とおっしゃりたい気持ちもわかりますが、「ウィンドブレーカーなどを着ることを許可してほしい」などとお願いするほうが、聞き入れられる可能性が高いと思います。このようなものを着れば、肌に直接雨が当たることは防げます。

また、来年中学や高校への入学を控えているお子さんのご家庭では、「入学を機に、運動なら体育館で主に行なう部活に入る」ことを話し合われることも、健康を守る一方法としてお勧めします。バトミントン、バレーボール、バスケットボール、卓球、器械体操、新体操、女子ならチアリーディングなどは、ランニングなどの基礎トレーニング以外は室内で行なうことが多いです。

お子さんの学校では、避難訓練などが4月以降実施されているでしょうか。実施予定のあった学校も、東日本大震災を受け、延期して内容を見直しているかもしれません。ですが、中には、教員に、「マニュアルを読んでおいて」、「非常口を確認して」と言ったきり、何も訓練を予定していない学校もあります。

海岸に近い学校なら、津波の浸水を想定し、防災用品を地下や1階ではなく、学校の最上階に置くなどの変更も考えられると思います。大震災直後は混乱していてできなくても、半年近く経過していると、そういう対策も検討されているか、気になります。

更に、節電が声高に叫ばれる中、気になることがあります。それは、施設費などの名目で保護者から冷暖房費を徴収している場合、節電すればお金が余るはずなのですが、その余ったお金の使い道がどうなっているか、です。
  節電で余ったお金が、学校での防災対策を進めるため、備蓄品や毛布の購入、また、耐震工事に回すなどの説明なら、保護者の皆さんも納得されるのではないかと思います。この節電は冬も続くでしょうから、多くの余剰金が出る学校も出るのではないかと思います。

防災訓練、設備費の使い道などに関しては、秋以降の保護者会などでご確認なさることをおすすめします。強い余震が再び来ないとも限りません。準備は万全にしておき、「何も無かったね」、「たいしたこと無かったね」で済めば良い、というのが私の考えです。
  備えをし、ご家庭でもさまざまに話し合って、秋以降の読者の皆様の生活が、少しでも良いものになりますように願っています。

※注) この原稿は2011/8/20時点の内容を含んでおり、最新の情報とは異なる場合があります。


【今回のまとめ】
  1. 放射能の影響は直ちには出ないが、直ちに、というだけであり、長期的に見れば影響が出るかどうかはわからない。悪影響を及ぼすものを摂取し続けると、遺伝子を書き換え、子どもや孫の代にまで害悪を及ぼすことがある。従って、子どもや妊婦、また、妊娠する可能性のある若い女性はできるだけ影響を受けないほうが良い
  2. 今回の福島第一原発で出た放射能は広島型原爆の約20個分、1年後の残存量は原爆なら1000分の1、原発なら10分の1という試算もある。出た放射能は回収できないので、なるべく体内に取り込まず、健康診断も定期的に受け、健康的な生活を送るべき
  3. 東北地方、また、関東でも放射能測定値の高い、ホットスポットと呼ばれる地域に関しては、グラウンドや通学路の除染を自治体や学校法人に働きかけてほしい
  4. 部活動に関しては、親子でよく話し合い、体育館で主に行なうものを選ぶなどのことも考えても良い
  5. 学校は、今回の大震災を受けて、防災のあり方を見直し、防災訓練など今年度内に実施すべき
  6. 私立校の場合、施設費などで冷暖房費を徴収しており、「節電」で費用が余っていることが考えられる、その費用は防災用品購入や耐震費用などに使うべきである

2011.8.25 掲載

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