第47回 「目標の立て方」について
皆さんこんにちは。2008年最初の更新です。
私は、「あけましておめでとう」とは、プライベートでは使っても、教室では使わないようにしています。生徒たちの中には、喪中の子どももいるからです。皆さんの中にも、静かにお正月を迎えられた方も多いと思います。ですので、ここでも、生徒たちに向かって言うのと同じように、こう書かせていただきます。
「今年もよろしくお願いします」
まだ松の内の1/5、東京・品川の商店街で、男子高校生が包丁で通行人を切りつける事件が発生しました。お怪我をなさった皆さまに、心からお見舞い申し上げます。
少年は精神科に通院していたそうですが、それでもこのような事件が起きてしまったことは、不幸としか言いようがありません。報道では「助けて!」と叫びながら包丁を振り回していた、という話も出ています。それまでにも「助けて!」というサインを発していたと思うのですが、周りが受け止めることができなかったのでしょうか、大変悲しく残念なことです。
「助けて」という声をあげることは恥ずかしくない、という話は前回の連載で書いたとおりです。少年への処罰も重要だとは思いますが、社会で生活できる大人になるための、精神的ケアも適切になされることを心から願います。
そして、1/9深夜には、青森県八戸市で、18歳の少年が母と弟妹を殺害して自宅に放火、という衝撃的事件が発生しました。ご関係者の皆さまに心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。
少年は高校に通っていなかったようで、自宅に灯油をまいた過去があったり、ナイフを集めていたことなど、日ごろの問題行動とともに報道されています。このような事件が起きるたびに感じるのが、「学校以外に子どもや保護者の悩み相談を受け付ける、カウンセラーのいる施設」を、全都道府県に設置すべきだということです。
学校に通っている子どもやその保護者ならば、学校にカウンセラーが来ていれば、悩みごとがあっても相談できます。でも、「学校に通っていないが、心の悩みを抱えている」場合、自分で医院などを探さねばならず、どうすべきか分からなかったり、また、費用がかかりすぎることを恐れ、途方に暮れている方も多いと思います。また、学校に来ているカウンセラーと相性が悪い場合、話がしにくい、ということもあるでしょう。全都道府県に1つずつ、「安い値段で相談に乗ってもらえ、治療が必要なら病院などを適宜紹介する」、法律問題で言えば「法テラス」のような施設を設置してほしい、強く私は訴えたいです。
今回は「目標の立て方」について考えます。
習いごとなどの場合、新年の初めでも構わないのですが、学校関係の場合、学年の変わる4月のほうが良いと思います。ものごとの変わり目に、きちんと目標を立てることで、やる気が生まれるきっかけになります。
この時の目標は、「今の実力でははるかに及ばないもの」ではなく、「がんばれば達成できそうなもの」にします。「水泳(サッカー)で○○ができるようになる」、「英語検定(漢字検定)□級に受かる」などといった形です。お子さんが小さいうちは、親子で話し合って決めて下さい。目標を部屋の壁などに書いて張ると、お子さんも常に忘れないで良いでしょう。
そして、親子で話し合う時、ぜひ、親御さんの目標も決めて下さい。仕事、プライベートの習いごと、苦手な家事を上達させる…どのようなものでも良いと思います。
「お父さん(お母さん)は、△△が今年の目標だから、今年の終わりまでに、できるようにがんばるよ」
こうお子さんに伝えると、お子さんは、「親もがんばっている」ということに気づき、自分なりに努力するひとつのきっかけになります。保護者の皆さんは、手帳で、自分がよく見るページに書くなどして、達成できるよう努力して下さい。
多くの子どもを見ていると、察しが良かったり、また、親子で話し合った結果、仕事で帰宅の遅い保護者を気遣い、「親は大変だから」と、進んで家事や宿題などをしている子どももいる一方、親がへとへとになって帰宅するまで、ただ寝転がってテレビやゲームで遊んでいる子どももいることに気づきます。
子どもが遊んで待っていると、親は「何で手伝いもせず、遊んでいるの」と目くじらを立てて怒りますが、子どもの立場で言えば、「何で毎日遅いの」となり、その理由がわからないので、思いやりの気持ちも生まれない、ということです。
前回の連載でも書きましたが、思いは、言葉にして伝えなければ、自分以外の人には伝わりません。保護者が、「■■ちゃんのためにいつもがんばっているけれど、今年は特に△△を目標にして、お父さん(お母さん)も、できるようになるよ」と伝えることで、「親は一生懸命やっているのだから、自分もできることをしよう」と思うようになります。
目標を決める時、達成できた時のご褒美も一緒に決めておきましょう。「1泊して東京ディズニーリゾートに行く」など、お子さんの行きたい場所に連れて行く、また、習いごとで今使っている道具よりも1ランク上のものを買う、など、更にやる気を起こさせるような形のものをおすすめします。
道具を買った場合、「道具を大事にすると、更に上達する」ということも、必ず教えて、大事にさせて下さい。歌手、ミュージシャンなど、私は学校関係以外の知人が多くいますが、どんな仕事でも、一流の方は、自分の使う道具をとても大事にしていらっしゃいます。それが、「自分の存在価値をより良く表現してくれる、大切なもの」だと分かっていらっしゃるからでしょう。
年の途中で、目標が達成できなさそうに気づいた時は、親子で話し合い、「達成できそうな目標」に変更するか、「あと少しがんばる」ようにするか、決めて下さい。人生は長いので、病気やケガなど、不意のアクシデントに襲われたりしたら、無理やり目標を達成させるのではなく、「今年は充電して、来年がんばろう」と諭すのも、大人の役目のひとつです。目先のことにこだわり、一生後遺症に苦しむことなどになってしまっては、その子どもの人生を大きく変えてしまいますから。
万が一達成できなかった時は、単に叱り飛ばすのではなく、「なぜ達成できなかった」のか、親子で原因を考え、反省し、翌年に生かして下さい。
ここで私が書いてきたことは、ある意味、大人の目標の立て方、実行の仕方を子供向けにアレンジしているものです。そう、目標の立て方の基本は、大人も子どもも同じなのです。今月、または新年度の始まる4月前の春休み、親子でよく話し合って、「充実した生活」を送れるようにして下さい。
【今回のまとめ】
- 1月か新年度の始まる4月に、その先1年間の目標を親子それぞれで立てる。
- 目標は達成するのが困難なものでなく、「がんばれば達成できそうなもの」にする。
- アクシデントなどが起こったら、途中で修正し、将来を思う。達成できなくなった場合、反省して翌年、新たにしっかりした目標を立てる。
2008.1.24 掲載
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