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第46回 「助けを求めること」について


皆さんこんにちは。
  12/14に長崎県佐世保市で発生した、スポーツクラブの店内で会員の男が銃を乱射し、かつての同級生(男性)とインストラクター(女性)を殺害後、自らも命を絶った事件は、大変衝撃的で、許しがたいものでした。被害者のご遺族の皆さま、お怪我をした皆さまに心からお見舞い申し上げます。

私が非常に気になっているのが、「慕っている水泳の先生を目の前で殺害された」 子どもたちの心のケアです。
  習いごとを楽しく、上手に教えてくれる先生は、小さな子どもたちにとって憧れの 存在です。インストラクターの方の葬儀に多くのお子さんも来ていたこと、事件後現 場に設けられた献花台に、多くのお花が供えられたことなどが、彼女が慕われていた 何よりの証です。

今回は迅速にカウンセラーの派遣が決定されたようですが、学校の内外に関係なく、子どもたちの心に重大な影響を及ぼす事件が起こった場合は、ただちにカウンセラーの派遣をすべきです。このまま放置しては、心の傷を負ったまま成長する子どもが数多く出ることも考えられます。

事件は、30代無職男性が人生に絶望して、という動機が伝えられていますが、このような最悪の事態に至らず、防ぐことはいろいろできたはずです。そもそも、定年退職後に退職金をあてた、などの場合は理解できますが、容疑者は無職なのに銃や新車を買っていたという報道もあり、ここに、家族の対応の大きな問題点を感じます。ただ、家族の皆さんも対応に困りつつ、仕方なくしていたことかもしれません。いずれにせよ、容疑者が死亡したので、真相は見えないままになってしまうのでしょう。

今回は「助けを求めること」について考えます。
  私は生徒たちに向かって、このように言う時があります。
「つらい時は、助けて、って言ってちょうだい。助けて、って言うことは恥ずかしくないから。そして、どうしたら解決できるか、一緒に考えよう」
  お子さんに対してだけでなく、保護者の皆さんに対しても同じように呼びかけているつもりです。

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現代の日本の子どもは、勉強、友人関係、家族関係…さまざまなストレスを抱えています。少子化で、幼少時から「お受験」などで期待が大きいこと、また、両親の離婚問題や病気などが原因で、心身ともに大変な負荷がかかっていて、そばで見ていても気の毒なことが多くあります。きょうだいがいればその悩みを共有できるのに、ひとりっ子でそれもできず、また、うまく周囲に説明できず、荒れてしまったり、現実逃避して不登校などになってしまう子どもも多くいます。

保護者の皆さんも、ご自分の子ども時代になかったもの(携帯電話など)にまつわる子どものトラブルや、お子さんの悩みなどに直面してうろたえたり、ご自分に姉妹しかいないシングルマザーが息子を育てているなど、どうしたら良いかわからず困っている方も多いのではないでしょうか。

でも、助けて、と言うのは、決して恥ずかしいことではありません。むしろ、助けて、と言わずに、問題を放置してしまえば、解決からどんどん遠ざかります。黙っていることは、明るい未来につながりません。

教員の中には、大変熱心に悩みを聞く人もいる一方、「自分の目の前からこの子どもがいなくなれば、関わりがなくなるから」と、その場しのぎの対処しかしない人、また、深く子どもの話を聞こうとしない人も、残念ながら存在します。本当はすぐにカウンセラーと連携しなくてはいけないケースでも、放置している教員もいます。

でも、学校を卒業してしまうと、カウンセラーを自分で見つけるのは大変です。卒業を控えた生徒(保護者)で、トラブルや悩み事がある場合は、一刻も早くどなたかに相談して下さい。卒業を控えていなくても、つらいこと、解決しきれないことがあったら、担任教員、学校のカウンセラー…また、誰もいないと思ったら、私に「助けて!」と言って下さい。うまく話そうと思わなくて構わないので、話して下さい。

冒頭に書いた佐世保の事件の容疑者の家庭でも、外部に相談者がいたのだろうか、相談していれば最悪の事態にはなっていなかっただろうに、と、悔やまれます。

年末年始、お子さんに元気がなさそうでしたら、ちょっとでも時間を作り、「助けて、って言ってほしい、話を聞くから」という雰囲気を作り、また、言葉をかけて下さい。話を聞いているうちに、気持ちが落ち着いて、やる気を取り戻してくる場合もありますし、いじめなどの重大な問題が明らかになることもあります。

反抗期で、声をかけても反応が鈍くても、「今日の塾のお弁当おいしかった?」など、短くて良いので、声をかけ続けて下さい。声をかけられることで、子どもは、「自分は気にかけてもらえている」と気づきます。声をかけられなければ、「自分は気にかけてもらえていない、親から見てどうでもいい存在だ」と思い込んでしまう子どももいます。   また、「親が忙しく、話を聞いてもらえない」と思い込み、大事な話を飲み込んでしまう子どももいます。

話をしないことで誤解、すれ違いが生まれ、理解しあえなくなってしまう…大人でも子どもでも、同じことです。
  「家族だから言わなくてもわかる」というものではありません。思っていることは、口に出して言わなければ、決して、自分以外の人には伝わらないのです。
  いきなり声をかけるのが照れくさいのなら、メールでやりとりすることもひとつの方法です。

親子それぞれに、つらい悩みを抱えている方もいるかもしれません。
  でも、「明けない夜」はないのです。闇はいつか必ず夜明けが訪れます。
  ただ、じっとしていては、何も解決できません。どうか、勇気を持って、「助けて!」と言って下さい。そして、お子さんが、「助けて!」と言える環境を作って下さい。

今回で2007年の記事は最終です。今年も皆さまのおかげで連載を続けられました。改めてお礼申し上げます。
  次回更新は2008年1月上旬の予定です。来年も、皆さまにとって良い年になりますようにお祈りしております。そして、連載もよろしくお願い致します。

【今回のまとめ】
  1. 保護者でも子どもでも、どう対処して良いかわからない悩み事があったら、「助けて!」と声をあげてほしい。お子さんには、「助けて!」と言える環境を作ってほしい。
  2. 助けて、と言うことは恥ずかしいことではない。助けて、と言わずに問題を放置しても、何の解決にもならない。
  3. 話を聞いているうちに、重大な事件がわかったり、問題解決の方向に向かうこともある。
  4. 小さなこと、短い言葉でもいいから、「気にかけているよ」という意味で、声をかけ続けてほしい。声をかけなければ、思いは伝わらない。

2007.12.29 掲載

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