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第40回 「インターナショナルスクール、帰国生、留学の問題点」について


皆さんこんにちは。今回でこの連載も40回を迎えることができました。読者の皆様に、心からお礼申し上げます。これからも自分なりのペースを保ち、独自の視点で発信を続けて行きたいと考えております。ご支援よろしくお願い致します。

東京では、小学校から大学まで、麻疹(はしか)が流行しています。感染力が強いので、同じクラスで2人以上感染者が出れば、学級閉鎖にしなければならないほどの病気です。お子さんの感染の履歴がわからない場合は、ワクチンの接種や血液検査を、ぜひともなさいますように。

また、福島県内では、高校生による母親殺しという、大変ショッキングな事件が起きてしまいました。関係者の皆様にはご冥福とお見舞いを申し上げます。
  現場で高校生と接していて、特にこの頃、「男子生徒と母親の関わり方」について、考えさせられることが多くあります。改めてこのことは、連載で書こうと考えています。何かご心配なことがある方は、メールをお待ちしております。

なお、メールアドレスですが、先日変更致しました。プロフィール欄に新しいアドレスを載せてありますので、ご参照願います。

今回は、「インターナショナルスクール、帰国生、留学の問題点」について考えます。
  インターナショナルスクールに子どもを通わせるというのは、日本国内の学校はもちろん、海外の保護者の赴任先で、「日本人学校」がない場合などが考えられます。「日本人学校」とは、文部科学省の所管で、日本の学習指導要領に従って授業が進められます。教員も、日本の教員免許を持つ者が派遣されています。

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なお、海外に赴任した場合、現地の公立・私立の学校に通うケース(現地校)、インターナショナルスクールに通うケースがあります。今回は海外の話題を中心にせず、日本国内の話題を中心に考えます。

インターナショナルスクールに子どもを通わせることは、少し前までは、外国に長く滞在していたり、国際結婚をしているなど、限られた家庭の話でした。ですが、最近は海外滞在経験のない家庭の子どもでも、通うケースが出てきています。

基本的に、日本にあるインターナショナルスクールは、「日本の学校法人」ではありません。つまり、「私立校とも異なる存在」です。日本の学校法人ではないので、ひと昔前までは、高校まで出ても、「日本の高校を卒業している」のと同等とは見なされず、入学できる日本の大学は大変限られていました。

また、公立校は当然税金で運営されていますし、私立校ですと、「私学助成」といって税金から補助があります。でも、基本的にインターナショナルスクールは、そのような補助がありません。

ですので、メリットとしては、文部科学省の管轄下ではありませんから、
「日本の学習体系と異なる教育が受けられる」
点がありますが、デメリットとして、
「助成金がないので、保護者の資金で全てをまかなう」点もあります。

一般的には、「年間200万円〜300万円」の学費がかかる、と言われます。これを、たとえば小学校から高校まで12年間払い続けるということは、莫大な学費がかかると、すぐにお分かりいただけると思います。外国人の家庭ですと、企業から学費の補助金が出ている場合もあるようですが、日本人の家庭ではそのようなことは、まずありません。ですので、芸能人の子どもも多く通っているようです。

学校側は、収入の安定を図るため、外部に開放したバザーやフェスティバルを開き、売り上げを学校の運営資金に回したりして、工夫しているようです。  そのようなイベントの際はもちろん、日本の学校に比べれば保護者の参加率は高いようです。積極的に学校に関わる意識がない、「学校にお任せ」という姿勢では通りません。テストなども、教員から返却されると、保護者が「見ました」というサインをしなくてはならないこともあるようです。

なお、学校だと学費が高く、また(以下に書きますが)、デメリットやリスクも多いので、インターナショナルスクールの幼稚園に子どもを入れるケースも増えているようです。英語を学ぶ時間が多くても、日本の小学校に入ると忘れてしまったりするようですが、幼い時に国際的な環境にいることは、見逃せないメリットもあります。

私自身、外国人の家庭や、国際結婚している家庭の子どもも通う、日本の幼稚園に在籍していました。そのような環境にいると、「髪の色や肌の色は人によって違う」ことを、当然だと思って育ちます。「髪の色が違って、いじめられた」などの話を聞くたび、私は小さい頃から「それが当たり前なのに」と、不思議でなりませんでした。

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インターナショナルスクール、と一口に言っても、「アメリカ系」、「フランス系」、「中国系」などの学校があります。それぞれの学校では、その国の第一言語の教育が重視されます。日本語の授業もありますが、第一言語に比べれば授業時間や内容が軽くなるのは当然のことでしょう。また、「その国の歴史」を深く学ぶ時間はあっても、「日本史」を学ぶ時間がなく、日本史がまったく理解できないまま大人になることもあります。

言語や歴史だけでなく、「子どもの思考体系」までもが、日本式でなくなってしまうこともあります。  フランス系のインターナショナルスクールに子どもを通わせた経験のある方が、「まだ幼いのに、理路整然と自分の主張を並べてきた」わが子に、「この子は言語はもちろん、思考体系もフランス方式なのか」と気づかされた、という話をしていました。

そのことが一概に悪いとは言えないかもしれませんが、保護者はよく注意しておく必要があるのではないでしょうか。そのまま日本の社会に子どもを出せば、子どもは苦労し、大変つらい思いをしたり、ストレスを抱えるはずです。

インターナショナルスクールに通う生徒や、外国からの帰国生が、「外国語には堪能でも、日本語は大変苦手で、高校生でも小学生程度の語彙力や文章表現力しかない」ケースもあります。また、「日本語を話している途中に、英語になってしまったりする」という、「ジャパングリッシュ」(JapaneseとEnglishの造語)しか話せない、という深刻なケースもあります。私も、このようなケースで苦しんでいる生徒を、今まで何人も見てきました。

インターナショナルスクールに子どもを通わせている場合、通常は保護者が外国語に堪能なはずなのですが、中には、「親は外国語が苦手なので、せめて子どもには」ということもあるようです。

このようなケースが、実は大変危険だと私は心配しています。
  保護者は日本語が第一言語(最も良く使う言葉)、子どもは他の言語が第一言語、となると、成長していくに従って、「親子でコミュニケーションが取れない」ことになります。子どもは複雑な感情や思考を、その子にとっての第一言語で表せても、親がそれをわからないのでは意味がありません。

このようなことを防ぐには、「子どもが、日本語と他の言語を同等に使える」ように育てるしかありません。そうしなければ、思春期以降、深刻な親子間の断絶が起こるのは目に見えています。

そもそも、英語や外国語だけ堪能でも、日本語に置き換えられなければ、日本で仕事をしたり、日本人向けに仕事をすることはできません。私も、英語の教員から、「日本語の語彙力をつけてほしい」とか、「日本語の語彙力を高めることをしてくれて助かる」などの話が出ることがあります。日本の学校に勤務していても、このような話が出るのです。

もちろん、大人になって語彙力を磨くことはできますが、子ども時代に基本的な力をつけていないと、大人になっていくら磨こうと思ってもできないのではないでしょうか。

そして、インターナショナルスクールに通わせる資金の捻出は難しいので、外国留学を、と考える保護者も増えているようです。

一見すると良いことに見えますが、結局、これは「外国語を上達させるという、本人の強い意志」がないと、意味のないことです。外国に行き、結局外国語が上達しないまま帰国する、という話は山ほどあります。それならば日本にいて英会話の学校に通ったほうが、まだましかもしれません。

国際的な教育、という点で、最後にお伝えしたいことがあります。 私の小学校時代の同級生が、中学から、日本の学校法人が海外に開いた学校に進みました。現在、その人は国際結婚をして外国に住んでいます。もちろんその人が幸せならばそれで良いわけですが、「将来、日本で生活しない」可能性もある、ということも、保護者は頭の片隅に入れておいて良いと思います。

 そして、今回から連載の最後に、内容のまとめをつけることにしました。ぜひご覧下さい。

【今回のまとめ】
  1. インターナショナルスクールは、日本の学校法人ではないので、メリットもデメリットも存在する。
  2. 外国語に堪能になっても、気をつけないと、日本語が同レベルで使いこなせなくなる可能性がある。日本語の特訓や、日本史などについてもフォローが必要になる。
  3. 海外留学をする場合、本人の意欲がないと、行っても無駄になることもある。

2007.5.22 掲載

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