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第39回 「スポーツを習わせる時の注意」について


皆さんこんにちは。新年度になり、授業も始まって、お子さんたちは今の学年に慣れてきたでしょうか。
  春の遠足など、楽しい行事も多くあると思いますが、そういった際に、ささいなきっかけで友人とのトラブルに巻き込まれ、その後の学校生活に支障が出ることもあります。何かお困りのことがありましたら、いつでもメールをお待ちしております。

今回は、「スポーツを習わせる時の注意」について考えます。
このところ、プロ野球界で、「規定以上の契約金」、「禁止されている資金援助」などの報道があとを絶ちません。大学、高校にもその問題が及び、問題が長期化、また、複雑化しています。財団法人・日本高等学校野球連盟(通称・高野連)を除名される、つまり野球部の試合が一切できず、つまり、甲子園への予選にも参加できない学校が出る恐れもあり、前代未聞の事態に発展していて、私も心配しています。

これらで問題になっている生徒は、基本的にスポーツ推薦という形式で学校・会社に進んでいます。
  3年前、スポーツ推薦について、メールマガジンのVol.30と31で取り上げたこともあるのですが、スポーツ推薦をめぐる悪習は消えておらず、今、改めてまた考えてみたいと思います。その時の記事は、こちらのリンク先からご覧になることができます。2004/8/14、2004/8/22発行のものです。
 「週刊 みどりのひとりごと」http://blog.mag2.com/m/log/0000123512/

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スポーツ推薦、というのは、あるスポーツですぐれた才能を持ち、実績を残している生徒を、通常の入試とは別枠で入学を許可することです。学校によって呼び名が異なる場合もありますが、今回の記事では「スポーツ推薦」としておきます。

高校に入る際、スポーツ推薦で入学する生徒は、全国から集まっています。学校が用意している寮に入る場合もありますし、一人暮らし、また、きょうだいと共に生活、といった場合もあります。
  学費が免除されたり、また、強豪校ですと、試合・練習で着るユニフォームに、スポンサーがついている場合もあります。なお、野球の場合、「スポーツ推薦で学費を優遇する」ことは高野連によって禁止されているようですが、学校がそれを正しく認識していない場合も多い、という報道もあります。

他のスポーツでも問題は大なり小なりあると思いますが、野球をめぐってこれだけ巨額のお金が動いているのは、

  1. 学校側から見れば、甲子園に出場した場合、学校の知名度が飛躍的に上がるので、資金を注ぎこんでも、見合う成果が出やすい
  2. 生徒側から見れば、道具代、練習費用などで、他のスポーツよりも、費用が高額になり、保護者も負担が大変。なるべく負担を少なくしたい
  3. プロ野球チームから見れば、有望な選手は早く確保して、他の球団に奪われないようにしたい。そのためには巨額の投資もやむを得ない
といった理由が考えられます。強豪校にもなれば、遠征しての練習試合、また、休暇中の合宿などもあります。生徒は、練習を朝から晩までしているので、アルバイトする暇もありません。親元を離れていれば、学費以外に寮費などもかさみます。
(つい先日、大学で初勝利を挙げた早大の斉藤選手も、大学入学前、沖縄でのキャンプに参加していたのを覚えておいでの方も多いでしょう。この費用は通常、保護者の負担です)

スポーツに打ち込んでいる保護者の負担は大変で、特に強豪校でお子さんに野球を習わせている場合の負担は、並々ならぬものだと思います。野球ですと、金属バットや皮革製のグローブなどの道具が必要で、それらが基本的に、1点で1万円以上します。野球をやっている生徒は、サッカーをやっている生徒の道具代の少なさに驚いていたりするのです。
  ですので、極端な場合、「私立校に二人同時に通わせる」程度の学費がかかっていることもあります。

さて、スポーツ推薦の生徒は、一般的に、このような進路をたどっていきます。

  1. 中学の部活動や地元のチーム、スポーツクラブなどで活躍する
  2. スポーツ推薦で高校に入学、高校では次のようなクラスに所属(学校により異なる)
    A. 通常の入試で入った生徒と同じクラスに入る →勉強もしなければならない
    B. スポーツ推薦だけの生徒が集められたクラスに入る →勉強しなくても進級できる
  3. 高校卒業後は、おおむね次のような道に進む
    A. スポーツ推薦で大学・専門学校に進学。在学中、すぐれた実績を残せば、スポーツ推薦で大学卒業後の就職先も決まる
    B. スポーツ推薦で就職 、スポーツを続ける
    C. スポーツとは関係のないところに進学、就職

スポーツの才能を認めてもらえるのですから、素晴らしいと思い、保護者はなるべく利用したいと思われるのも無理はないと思います。
  ですが、実は、「スポーツ推薦で進学した場合、入学式の前から練習に参加する」ことは当然ですし、「スポーツを通じて学校を有名にしなくてはならない」から、「部活を退部すると、学校も退学しなくてはならない」というのが、暗黙の了解になっています。

上級生からの悪質ないじめ、顧問教員のセクハラなどがあっても、スポーツで有名な学校の大半は私立校ですので、教育委員会に報告義務はありません(この点は、第12回連載をご覧下さい)。入るまで実態がわからず、入ってみてショックを受け、精神的・身体的に深い傷を負う場合も多いと思います。

ですので、卒業するまで耐えて、卒業後に訴える、といった事例も出ています。本当は在学中に相談を受けられる機関があれば良いのですが、私立校の場合は学内で相談しても、最悪の場合、話をもみ消され、生徒は退学に追い込まれて終わり、です。
  お困りの場合は、私でよろしければお話を聞かせていただき、解決策を一緒に考えさせて下さい。

スポーツ推薦と言われると、わが子の活躍する姿や、スポーツが上達することはすぐ浮かぶと思うのですが、デメリットについては、直面するまで気づかず、うろたえたり途方に暮れる方も多いのではないでしょうか。

お子さんが幼い時、「何か将来役に立てば」と、スポーツを習わせる保護者の方は多いと思います。私は、その時、また、その後の保護者の方針、そして、スクール(団体)選び、ひいては指導者選びが、その後のお子さんのスポーツとの関わり方を大きく左右することになる、そう考えています。

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スポーツを習わせる時、お子さんが小さいのであれば、「将来はプロ選手」といった夢を抱かれることもあるでしょう。それ自体は大変ほほえましいものです。   ですが、スポーツとは「結果が全て」の世界です。たとえ、幼稚園から習っていても、高校でレギュラーをつかめるとは限りません。一般論ではこのことを分かっていても、今は、「うちの子は10年も野球をやっているのに、レギュラーになれないのはどういうことか」と、顧問やコーチに食ってかかる保護者もいます。

また、スポーツを通じて、何を身につけさせていきたいのか、ということを、意識していなくてはならないと思います。   指導者の中にも、長期的視点から、「運動を通じて、目標へ向かって努力することの素晴らしさを知ってほしい」、「協調性を身につけて欲しい」、「あきらめない気持ちを持って欲しい」などの目標を持ち、指導している方は多くいます。このような素晴らしい指導者のもと、心身ともに大変立派に成長して行く生徒を、私は今まで数多く見てきました。

一方、「勝ちさえすれば、どんなことをしても許される」、といった価値観を持って子どもを指導したり、また、「スポーツだけしていれば、学業はほとんど不要」という言葉で、生徒をスポーツ漬けにし、何も自分で考えられないようにしてしまい、そして、スポーツ推薦に誘う指導者もいるようです。

ですが、学校、しかも義務教育ではない高校に行っている以上、最低限の勉強をしなければ進級も卒業もできません。また、「スポーツ推薦だけの生徒のクラス」に在籍していると、その勉強も適当になってしまう恐れがありますので、スポーツで食べていくことができなかった場合、「何も出来ない」フリーターやニートになってしまう可能性が出ます。

スポーツで成功するかもしれませんが、思わぬケガ、アクシデントなどで、スポーツで成功できないことも考えられます。子どもはどうしても夢を見ますし、それ自体は悪くないと思いますが、周囲の大人が冷静に、さまざまなリスクを考えて、本人とよく相談しながら進路を選んでいくことが大事ではないでしょうか。

指導者には、さまざまな方がいます。大変立派で、見習いたいと思う方がいる一方、「育てたのだから、契約金などのお金をもらって当然」という人がいる可能性も否定できません。特に、お子さんが有望で、未成年のうちは、お金をめぐってさまざまな人が群がってきます(この点に関しては、メールマガジンでも触れました)。

その人の思惑や、他の方とのつながり、社会的地位で、お子さんの一生を左右されることもあるでしょう。「類は友を呼ぶ」ということわざがありますが、清廉で素晴らしい指導者には、似た方が、そして、「勝ちさえすれば、あとは何をしても許される」と思う指導者にも、似た考えの方のつながりがある、と私は感じています。

お子さんを行かせても良い、と思うチームや学校があるのでしたら、そこに通っているお子さんの練習風景、練習後の様子をじっくり観察したり、試合をお子さんと見に行き、お子さんを既に通わせている保護者の方のお話を聞くことをおすすめします。   お子さんはそのチームに、また、保護者は保護者の組織(父母会など)に入っていくわけですから、明らかに「そこの雰囲気が、自分とはなじめない」と思ったら、参加はおすすめできません。

スポーツを通じて、良い影響を子どもたちに与えられるよう、日々奮戦している指導者は多く存在します。ぜひとも読者の皆さんのお子さんたちが、そのような方にめぐり会えるように願っています。また、何かご相談がありましたら、いつでもメールをお待ちしております。

2007.4.17 掲載

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