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第38回 「大学入試で必要とされるもの」について


皆さんこんにちは。まず、能登半島地震で被害にあわれた皆さまに、心からお見舞い申し上げます。また、一日も早い復興をお祈り致します。

そして、読者の皆さんの中には、希望に胸をときめかせ、また、ちょっぴりほろ苦い気持ち、と、様々な思いで、新しい旅立ちの季節をお迎えの方もいることと思います。

新しい世界へのドアを開けることは、とても喜ばしいことです。心からお祝い申し上げます。その世界で活躍できるように、精一杯、できる限りのことをして下さい。
  そして、困った時には、私でよければ、いつでも話を聞かせて下さいね。

今回は、「大学入試で必要とされるもの」について考えます。
18歳人口が減り、大学入試のあり方も、十数年ほど前と比べると、大きく変化してきたように感じます。

今までの大学受験は、「とにかく暗記、速く正確に問題が解ける」ことだけが大事だった、と言っても言い過ぎではありません。その目的で塾や予備校の授業が展開されていました。

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今も、そのような「従来型の入試」も、もちろん、存在します。その一方、このような形式ではない、「本人の考えたり、発表する力量を見る」入試が明らかに増えています。

たとえば、入試当日より前に、課題を出してレポートにまとめさせ、当日はそのレポートに関して質問をし、更に、教科についての筆記試験や小論文を課す大学。
  あるいは、入試当日、制限時間内でパソコンや紙の資料を使って、調査・分析をさせ、その後、プレゼンテーションをさせて合格者を決める大学。

入学定員全体の一部を、このような形式で決める大学が増えつつあるのです。これは、18歳人口が減っているからできることでもあります。受験生が殺到する中で、このような入試をしていては、入試に何日もかかってしまいますので。

そして、大学がわの「単なる暗記人間は、社会に出てからは通用しない。自分の頭で判断でき、考えられる人が、社会に出て通用する。その可能性を持った人物が欲しい」という意味でもあります。

また、学力低下や少子化に伴い、「自分の頭で判断でき、考えられる学生」を確保し、その後の活躍を期待し、大学のイメージアップにもつなげたい、大学の思惑もあると思います。

このような「自分の頭で判断でき、考えられる人」の育成は、もちろん、大学で実施していくことでもあります。
  ですが、大学入学前に一定の水準に達した生徒を合格させれば、他の学生にも好影響になりますし、ひいては、大学の学生全体の質の向上にもつながります。

余談ですが、私のパートナーが、今年、ある私大の入学内定者に対し、レポート・論文の書き方の授業を行ないました。本来なら大学教員が教えるべきことですが、入試などで忙しいのか、また、きちんとノウハウを持った人に教えてもらうほうが早いということなのかもしれませんが、この仕事の依頼には、私も驚きました(ただ、これも、論文などの書き方で「大学入学前に一定の水準に達する」ことを大学が求めている、ひとつの証かもしれません)。

さて、このような現状から、私は、「大学入試で必要とされるもの」とは(もちろん、教科の勉強は言うまでもないことなのですが、他に)、「それまでの人生を、どのように充実させて生きてきたか」ということがあると思います。

スポーツ、習いごと、また、文化系の部活動…真剣に打ち込んできたことは、その生徒の財産になります。その際、指導者に、「ただ言いなりになる」のではなく、「自分で考える」ように指導されていれば、どのように好調な状態を維持するか、また、失敗や挫折をどのように乗り越えるか、自分の言葉で語れるはずです。

よく、私は、「入試で必要なので、小論文を見て下さい」と生徒に言われます。自己推薦、AO入試など、形式はさまざまですが、その時、受ける大学名と入試の形式、そして、生徒を見れば、ある程度の合否は判断できます。

その根拠となる大きなポイントは、「それまで、自分なりに考えて生活してきたか」という点と、「それを表現できる国語力があるか」です。
  自分なりに考えて問題を解決してこなかった生徒が、突然「考えなさい」と言われても、難しいものです。それまでに保護者や教員の言いなりだったり、暗記型の勉強にばかり力を入れてきた生徒にとっては、急に「自分で考えなさい」と言われても、方向転換は大変なことでしょう。

結局、こちらの指導することを消化し切れなかったり、あるいは、指導することを鵜呑みにしかできず、残念な結果になる生徒を多く見てきました。

国語力は、ずば抜けていなくても良いのですが、あまりにお粗末な表現しかできなかったり、また、こちらの指導することが自分なりに消化できないようでは、残酷ですが、受ける前から結果は見えています。学校で実施する漢字テストなど、日ごろすべき努力をおろそかにしていた場合、答案に誤字脱字が多すぎて、お話になりません。

昔から決められた形式のレールに乗っていても、未来はどうなるかわかりません。そのような時代だからこそ、子どもであっても「自分なりに考えて生きていくこと」は、大事な「大人への明るい未来」を切り開くのです。

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そして、「それまでの人生を、どのように充実させて生きてきたか」、これは、大学入試にだけ必要なことではないはずです。その後、就職活動など、さまざまな場面で、考えなくてはならない問題でしょう。

子ども自身に考えさせるということは、子どもの周囲の大人にとっても、根気と待つ時間が必要です。そのようなことが面倒だから、と、子どもに、大人の言いなりにさせてばかりいると、あとで「自分で考えられない大人」を育ててしまうことにつながるかもしれません。

もちろん、子どもに考えさせる時に、「どうしたら良いのか」、大人が一緒に考えることが、とても重要です。そして、子どもなりに根拠が示せるか、きちんと話を聞くことも大事です。

お悩みのある保護者の方は、私までメールをいただければ、一緒に考えます。
  また、小論文なども含め、指導の仕方に困っている現役教員の方には、私とパートナーの運営する【トト先生の国語教室】にお問い合わせをいただければ、お答え致します(プロフィールのページからリンクしています)。

さて、4月に入りますと、この連載も3年目に突入致します。これも、ひとえに皆さまのご支援のおかげです。あつくお礼申し上げます。
  また、これをご覧の出版関係の皆さま、仕事の依頼をぜひともお待ちしております。
  これからも、自分なりに感じた「現場からの問題点」を発信していこうと考えております。どうぞよろしくお願い致します。

2007.3.30 掲載

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