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第25回 「小・中学校連携の重要性について」


皆さんこんにちは。私立中学受験の盛んな東京を中心に、「公立校教員が、わが子を公立校に入れず、私立中学に行かせる」ことがもはや「公然の秘密」となっているこの頃ですが、最近は更にエスカレートし、「私立小学校に行かせる」ケースも出ているようです。

どの学校に子どもを入れたいか、というのは各家庭の方針によることだとは思いますが、それでも、「公立校の教育を担っている方が、公立校の教育を信用せず、わが子を私立校に入れる」というのは尋常ではない事態だと思います。携わる人が信頼できるような内容にできない限り、日本の公教育は良くなりません。また、未来の日本を担う人材を育てる柱であるはずの、「公教育」の質の低下が、ひいては日本の「人材」の質の低下につながるかもしれない、それは絶対に避けねばならない、私はそう考えます。

今回は、「小・中学校連携の重要性」について考えます。
  読者の皆さんに、ご自分の記憶を思い起こしていただきたいのですが、中学校に入った時、勉強が難しくなったり、部活動で忙しくなったり、と、小学校時代と環境が激変された方が多いのではないでしょうか。また、上級生に敬語を使わなくてはならなくなったりして、対人関係でも驚くことが多かった、という経験もされたかもしれません。

公立小学校から公・私立中学校に入る場合はもちろん、私立小学校から私立中学校に入る場合でも、これらのことは起こります。私立小学校の中には、「小学校時代は伸び伸びと」という方針のもと、厳しい勉強をまったく申し渡さず、そのまま中学に送り込んでしまうところがあるのです。私立中学では多くの課題を当然のように出しますので、結局、入学後に生徒・保護者ともども仰天してしまいます。「こんなことなら、小学校時代にもっと勉強させてほしかった」というご意見も聞いたことがありますし、どう勉強していいのかわからず、とまどっている生徒・保護者も多いのではないでしょうか。

この4/24にも、神奈川県内で中学1年生の男子生徒が母親を刺した、という事件が起こりました。息子の言い分は「勉強しろ、とうるさく言われていた」ということだそうです。原因はわかりませんので、憶測でこれ以上何かコメントをすることは差し控えますが、もしかしたら子どもが中学に入ってあせっている保護者と、まだ小学生気分の抜けない子どもの意識の落差が招いた悲劇かもしれません。怪我をされた保護者の方には、お見舞い申し上げます。

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また、小学校での英語教育導入が議論されていますが、小学校で楽しく英会話などを教えても、公立中学に進めば週3時間しか英語を学ばないですし、高校入試に対応させるためには文法や読解の勉強もしなくてはなりません。ということは、週3時間で「会話・文法」の全てを教えるのは不可能で、結局英会話はあまりできず、旧来型の授業が中心になるのではないでしょうか(私の個人的意見ですが、中学の英語の授業時間数を増やさない限り、英語を小学校で導入するのは反対です。また、英語だけ増やしても真の学力アップにはつながりませんから、国語・数学も増やさねばなりません)。

話を本題に戻します。小学校から中学校に進学すると、一気に上級生との上下関係が厳しくなったり、勉強が難しくなるので、心の悩みを抱えてしまうことも珍しくありません。そのまま放置しておいても、不登校などになるだけで、非常に危険です。このような観点から、この4月、東京・品川区では公立の「小・中一貫校」が誕生しました。

この15年ほど前までは、公立中学に進学した場合でも、今よりも授業時間数が多かったので、中学に入るとそれなりに忙しい毎日になったはずです。まじめに学校に行き、部活に出て、塾に行き…などという生活を送っていれば、コンピューターでゲームなどをする時間は次第に少なくなっていったはずなのです。私自身のことを考えても、小学生の時と異なり、中学生になってからは、忙しいのと、他に興味があることが山のように出てきたので、ゲームをする時間はほとんどなくなりました。

ですが、公立中学のカリキュラムが削減され、特に、この数年間は「英・数・国が週3時間」ですので、公立校に通い、部活もしていなければ、ひまな時間が結構あるのではないかと思います。つまり、小学生の時と同じように、ゲームを1日何時間もしてしまうようになるかもしれないのです。

いきなり取り上げると親子関係がこじれて、その後問題になることもあるので、保護者の方が中学生活の忙しさを説き、また、よく話し合って、「中学に入ったら平日はゲーム禁止、週末に○時間だけ」などと取り決めをなさっても良いのではないかと思います。「ゲームを作る側に回りたいから、ゲームをして研究したい」と子どもが言うのでもなければ、中学生で平日にゲームを数時間もしていたら、学校生活についていけなくなります。

また、中学生になると、友達同士で繁華街に遊びに出かけたがります。保護者の方もそれを許可する場合が多いようですが、保護者の方の思春期とは比較にならないほど危険な誘いが街に渦巻いています(キャッチセールス、偽スカウト、麻薬密売人などが毎日獲物を狙っています)。

ですので、たとえば、「渋谷に行きたい」などと言ったら、一度保護者の方も一緒に行き、「こういうところが危ない」、「あそこに立っている人は何をする人なのか」、などとお子さんと確認しながら歩かれると良いのではないでしょうか。

今、「お子さんにどう注意や指導をして良いのかわからない」という保護者の方が多くいるようです。ですが、小学校時代に甘いことしか言わず、中学生になっていきなり厳しくしても、決して子どもは言うことを聞きません。

また、学校でももちろんスムースな連携を心がけることは大事でしょうが、ご家庭でも「中学生になる」ことの重みを、ご自分の経験談を主に話をされてみるだけで、ずいぶん子どもの意識は違ってくるものです。

私立中学を受ける場合は、いやおうなしに勉強に追い立てられるので、遊んでばかりの生活のまま中学生になる、ということはありません。ですが、たとえ公立中学に通う場合でも、お子さんが小学校6年生になったら、「来年は中学生になる」ということで、じっくりと時間をかけ、家で親子揃ってNHKの英語講座に取り組んでみる、漢字の勉強を増やしてみる、などの取り組みをされると良いと思います。それだけでも、中学生活のスタートで「何もかも難しくなった」ということが避けられるかもしれません。

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また、私立中学の大半では、入学と同時に古典の勉強も始まります。「百人一首を中学3年間で全て覚える」というテストだって珍しくありません。小学生のうちに、カルタ取りなどで古典の響きに慣れておくことも良い取り組みなのではないでしょうか。

思春期の入り口、中学生活のスタートがスムースに行くような、実りある小学6年生の生活を過ごしていただけたら、と思います。

2006.4.30 掲載

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