第21回 子どもの成長に応じた「常識」について
皆さんこんにちは。今月中旬、幼稚園に登園途中の子どもが、付き添いの別の子どもの保護者に殺されるというショッキングな事件が起こりました。亡くなったお子さん、そして、ご遺族の方に心よりお悔やみ申し上げます。
事件を起こした容疑者は外国人だそうですが、私も改めて「外国人の保護者を持つ子ども、そして、その保護者」への日常のケアについて考えさせられました。外国人の保護者を持つ子どもは、私の幼稚園時代にも在籍していましたし、教員になってからも、何人も担当したことがありますが、子どもは基本的に順応性があるので(周りの大人や教員が差別的な扱いをしない限り)、特に大きな問題がなく育っていくものではないでしょうか。むしろ、保護者が日本語に不自由だったりすると、その保護者へのケアを手厚くしていかねばならないでしょう。
そして、行政や学校、周囲のケアが大事なのは言うまでもありませんが、何よりもまず、配偶者(パートナー)がいるのであれば、その、配偶者(パートナー)が先頭に立ってケアすることが重要ではないか、と感じました。今回は容疑者の性格もさることながら、さまざまな不幸が積み重なってしまったゆえの事件なのかもしれない、防ぐ手立てがなかったのか、と悔やまれてなりません。
さて、今回は、子どもの成長に応じた「常識」についてとりあげます。
塾で進んだ勉強をしていて、学校に対して評価が低くなっていることや、学校に対しての価値観の変化からでしょうか、「平日に子どもが学校を休み、保護者の休みに合わせて、東京ディズニーリゾートに行く」などのケースを見聞きすることがあります。
このようなケースも、次のようなケースに当てはまれば、やむをえないと私は考えます。
- 保護者の職業の性質上、土・日に休みがほとんどとれない=一家揃って出かけられる週末がほとんどない
- 子どもが小学校低学年で、一家で出かけたがっている
- オリンピック、万博などの特別なイベントが開催中で、子どもにぜひ見せたい。しかし、週末には保護者の仕事の都合などで行けそうもない
こういった場合なら、学校を休んで遊びに行く、ということも認められるかもしれまん。上に挙げた理由で学校を休むことを認める、公立小学校の教員も増えているようです。
もちろん、子どもには「今日は特別、学校は普通こんな理由で休んではいけない」と言って聞かせなければならないでしょう。
ただ、こういったことが認められるのは、公立校の場合、原則「小学校まで」だと考えるべきでしょう。
まず、中学校になると、勉強がハードになり、学校を一日休むことでの遅れが大きくなります。また、チームワークが重要な部活動に属していれば、簡単に休むと、周囲の生徒に迷惑をかけることにもつながります。部活動によっては、簡単に休むことを認めないため、「学校に登校したのに、(病気での通院、習い事などで)部活を休む」場合、「顧問教員、部長の生徒」などに申し出ることを義務付けている場合も珍しくありません。
「テスト中ではないからいいではないか」、「球技大会くらい休んだっていいだろう」と言う保護者の方もいるかもしれません。でも、学校は、学業以外の運動会(体育祭)、芸術鑑賞会など、「子どもが関わるもの全て」を通して、知識面でも精神面でも豊かな大人を育成することが目標になっています。ですから、学校の年間予定に書かれている全てが、「その学校の考える教育」なのです。こう考えれば、簡単に休んだ場合、学校から指導されることは容易に想像がつくのではないでしょうか。
私立校の場合ですと、小学校でも「遊びに行く、という理由で学校を休ませることはしないで下さい」という通達が出ているかもしれません。
私立中学・高校なら、まず、欠席は認められないでしょう。学校説明会・入学者説明会などで話が出ることもありますし、また、話が出ない場合は、保護者から質問をなさることをおすすめします。
また、これとは全く別の話ですが、「教室に行くと、いじめっ子がいるので、行きたくない。でも、そういう子がいない、保健室になら行ける」という、「保健室登校」を認めるケースがあります。
ですが、この場合も、保健室登校が認められるのは、小学校までというのが一般的ではないでしょうか。中学校以上は、授業ごとに担当者が変わるので、基本的に「保健室にいる=(教室で授業を聞いていないので)その授業を欠席した」という扱いになると考えていただいて良いと思います。(公立中学ですと、ごくまれに、保健室登校でも出席にして、高校入試の際に不利にならないように配慮している場合もあるようです)
これらのことを知らず、私立中学に子どもを行かせているのに、「保護者の自分が有休を取ったので、子どもも休ませて遊びに出かけます」という欠席の連絡をしたり、高校生のわが子を「保健室登校させて下さい」という保護者がいたりするのです。
ですが、こういったことは認められませんので、学校としては「今日は通常授業ですので、登校して下さい」、「保健室登校は認められません。欠席扱いです」という返事をするしかありません。そうすると、保護者によっては「ひどい学校ですね」、と毒づいてくる場合もあるのです!!
小学校の教員なら、「子どもを休ませて遊びに行っても構いません」と言うかもしれません。子どもが小さいうちに、家族での楽しい思い出を作ったり、さまざまな経験を積むことは、成長過程で非常に重要なことです。
なお、いくら公立小学校でも、「どの教員も、一律に子どもが平日に休む」ことを認めているわけではないはずです。ですので、「去年の担任が認めてくれた」からといって、「今年の担任も無条件で認めてくれる」とは限らないでしょう。
ですので、もしも保護者が週末に休みにくい職業に就いている場合、新年度になりましたら、学校側にあらかじめ申し出ておくと、話が早いのではないでしょうか(なお、「学校側への話の仕方」については、次回取り上げる予定です)。
そして、中学校以上の教員が、小学校の教員と同じことを言うとは限りません。この点については、今回書いたように、れっきとした理由がある、ということをご理解いただけたら、と思います。
当たり前のことですが、子どもは成長していきます。子どもを取り巻く大人は、子どもの成長に応じた勉強や、心身面でのケアが必要なように、成長に応じた「常識」を養うことも必要だと理解すべきではないでしょうか。
この連載の次回更新は3月の予定です。卒業など旅立ちの時期ですが、旅立ちは、同時に新たなステップへの入り口でもあります。新年度に向け、もちろん私ども教員も一層の研鑽を積み、「成長」しなければならないのは当然ですが、僭越ながら、保護者の皆さんも新たな知識を得て、お子さんと一緒に「成長」していただけたら、そう願っています。
2006.2.25 掲載
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