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第14回 「国公立校と私立校の違い」について Part3


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皆さんこんにちは。私がリーダースとして参加している、ewomanというサイトがあります。このサイトで、社長の佐々木かをりさんと、「百ます計算」でおなじみの、陰山英男氏との対談が現在アップされています。他では読めない内容ですので、興味がある方はぜひご覧になってみて下さい。

なお、このサイトには、「ロゼッタストーン」の編集長さんも不定期に登場されています。トップページから「過去のサーベイ検索」で、「キャスター別」をクリックし、「弘中百合子」さんの項目をご覧になると、全て見られます。一番最近のテーマは「マスコミを信頼している?」でした。
ewoman(イーウーマン):http://www.ewoman.co.jp/

さて、今回も前回に引き続き、「国公立校と私立校の違い」について取り上げます。今回は特に、「国公立・私立校の学習内容格差」について考えます。

まず、次の表をご覧下さい。

  国公立中学 私立中学 公・私立高校
国語(古典文法)  
地理(都道府県名・
県庁所在地など)
 
数学・英語
(高校での内容)
 

☆は、それぞれ、「どの段階で習うか」というものです。これはあくまでも一般的な話で、中には私立中学でもむやみに高校の内容を「先取り」していないところもあります。

一目瞭然、国公立中学でまったく触れないことを、私立中学では習っています(国立中学は、一般的にその地域の進学校となっていますが、原則的に指導要領に従った授業をすることになっています。授業以外でハイレベルな補習をしているかもしれませんが、基本は「指導要領」です。生徒さんの大多数は、学費が安い分、塾・予備校で進んだ勉強をしているのではないでしょうか)。

国語の古典文法は、難関私立中学では、早い場合、1年生から習います。そのため、中1から「古典文法のため」家庭教師をつける場合もあります。古典文法は、教員・塾講師経験者でもない限り、保護者が教えるというのは難しいからでしょう。

また、地理の場合、私立中学で学ぶ、というより、「私立中学を受ける勉強の中で習う」ことがもはや常識になっています。つまり、小学生で習うわけです。私立小学校でも、小学生のうちに教えているところもあるようです。

英語・数学については、ご存知の方も多いでしょう。難関校では、一般の教科書をほとんど使わず、ハイレベルな教材を「教科書」として使用していることも珍しくありません。
これが、今の日本の教育の実態なのです。

現在、子どもが公立中学で学び、その後、勉強熱心な私立校や難関公立校に入るとどうなるのでしょう。中学で「ゆとり」と称して、内容が削減されている分、高校で覚えることが多すぎる、という感があります。公立校でも、土曜補習を必修としているところも珍しくありません。私立校は言うまでもないことです。土曜日が休みの学校では、その分平日が7時間授業になっていたり、宿題が多く出ていたりします。

また、高校で募集を行なう中・高一貫校の場合、中学から入った生徒と、高校からの生徒の間には学力差がありすぎるので、高校からの入学生には「夏休みをすべてつぶして、補習させる」ところもあります。

このような状況を詳しく考えてみます。勉強は、今までののんびりムードとは激変します。高校では、「あれも覚えなさい、これも覚えなさい」、と教員に言われ、毎週のように、数学・英単語・漢字・古典の文法テストなどに追い立てられることになります。こういったことを覚えていなければ、大学入試に対応できないからです。

ゆとりから一転して、この状況に放り込まれる生徒はかわいそうです。ですので、ペースについて行けずにパンクして、早い場合は4・5月のうちに不登校になり、極端な場合は、1度も定期試験を受けないまま、1学期のうちに退学する生徒も多く出ています。

つまり、現在のゆとり教育は、「高校で詰め込みしすぎる」結果を生んでいるに過ぎない、私はそう感じています。このような状況ですから、首都圏を中心に、私立中学ブームが加熱するのも無理はないと言えるでしょう。

でも、矛盾するようですが、「私立中学に通えばいいわけではない」、「私立中学に入れば幸せな人生が待っているわけではない」、教員としてしばしばそう感じます。生徒の立場になってみれば、厳しい入試が終わって、ようやく中学の門をくぐったら、またハイペースな勉強が待っているのです。自分で「しっかり勉強しよう」という意欲がない限り、このペースについていくことができなくなるのは当然のことではないでしょうか。

私が大学時代アルバイトをしていた塾で、「長時間残して特訓させる」方針の、ベテラン講師がいました。小学6年生なら授業は21時までのはずなのに、22時過ぎまでひんぱんに残すのです(中学生ですと、23時近くまで残すのが当たり前だと言っていました)。忙しい中迎えに来た保護者が「まだ終わらないんですか」と言うこともたびたびでした。

このような状況に慣れきった子どもは、もし希望の中学に合格しても、「誰かに強制されなければ勉強できない」ことになります。成績はあっという間に急下降、併設の高校に進学できないことだって充分考えられるのです。事実、その塾の卒業生から、そのような生徒が多く出ていました。でも、それは、果たして「本来の勉強のあり方」だと言えるのでしょうか。私には、とてもそう思えないのです。

教員として多くの子どもを見ていて感じるのは、「ひとつ好きなこと、興味があることが見つかると、それを糸口にして多くのことに関心を持つようになり、連動して成績があがることが多い」ということです。

もちろん学校でそのような意識を持って教員が指導することは大事ですが、「家庭では何もしない、ほったらかし」というのではなく、家庭でできることに取り組んでみるのも良いでしょう。

たとえば、これは私が小学生の時に実際、母が行なっていたことです(手前味噌の話で失礼します)。ダイニングテーブルに巨大な日本地図を敷き、その上に透明なビニールクロスをかけます。母は親戚の家でやっていたのを真似したそうです。そして、このような使い方をしていました。テレビのニュースで「●●県での事件です…」などとアナウンサーが言ったりした際に、このような形で母が質問します。

「●●県はどこにあるのかな?」
すると、私が一生懸命に探します。
「あった、ここだね!」
指を差して場所を示します。
「そう、当たり!!じゃぁ、県庁所在地はどこかな?」
じっと地図を私が見つめます。
「□□って書いてあるよ」
「そう、それでいいのよ」

クイズや、ゲーム感覚でいいのです。ただ、気づいた時にこのように問いかけることを繰り返していると、子どもが興味を持ちはじめれば、自然に自分ひとりで地図を見て覚えるようになります。私は、日本の地理や県庁所在地を、このように、全て楽しく覚えてしまいました。ぜひ皆さんも、真似されてみることをおすすめします。

子どもの成長にとって大事なことは、「自分から進んで物事に取り組む」、「世の中・周囲への関心を持つ」ことだと私は考えています。自分から積極的に物事に取り組める姿勢ができていると、大人になっても何事にも自主的に取り組んでいけますし、周囲へ関心を持っていれば、まわりの人に正しくあいさつができ、また、「自分はどのようにして周囲と関わっていけばいいのか=どのような仕事に就けばいいのか」と考えられるようになります。

これらは、「私立校に行けば必ず身に着く」ものでもありません。しっかり指導している学校もありますが、「家庭が基本です」と言って、ほぼ何もしていないところもあるからです。ただし、家庭のしつけの機能が落ちている以上、「家庭が基本」と言って何もしない学校は、単に「逃げている」に過ぎないのですが。

あいさつが重要なのは、「礼儀のなっていない人を採用したい会社があるか」、ということを考えれば明快です。礼儀のなさは、子どもの全てをだめな方向に導く、と言っても言い過ぎではありません。子どもだからいい、というのではないのです。年齢に応じたものの言い方を身につけることが重要なのです。

今は子どもが少ないので、保護者が全て代わりにやってしまい、「子どもは何もしなくていい」存在になっていたり、「大人の指示がなければ動けない」ケースも多く見られます。でも、このようなことは子どもをダメにこそしても、決して良くすることなどありません。

公立中学から私立高校に入っても、難関大学に受かる生徒はたくさんいます。それはほぼ全て、「意欲があり」、「目的意識を持って学んでいて」、「あいさつなどの礼儀ができている」生徒だと感じます。こういった生徒は詰め込みで勉強しても、その先の未来が見えていますので、懸命に夢に向かって努力するのです。

逆に言えば、有名私立小学校から一貫教育を受けていた、という子どもでも、これらに欠けているためにフリーターやニートになる場合だってあります。

お金を湯水のようにかけたからと言って、子どもに明るい未来が待っているわけではありません。ただ、現状の「ゆとり教育」では、公立校の勉強内容があまりにも少ないので、その中で子どもを放置することは、危険きわまりないのも事実です。ですので、「意欲ある子どもを育てる」ように、心ある教員のアドバイスや、家庭での工夫が欠かせないのではないでしょうか。そのためのお手伝いを、教室やこの連載で私もしていきたい、と考えています。

2005.10.25 掲載

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