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第5回 「学校間格差」問題


皆さんこんにちは。先月からこの連載も今流行のblog形式になりました。皆さんのお住まいの地域の教育事情など、具体的なコメントをお待ちしています。

今回は「学校間格差」について取り上げます。今は学校選択制度を導入する自治体が増えていますが、学校の内部が見えにくいため、結局地域の風評が大きな基準になってしまったり、地域の中で雰囲気の良い住宅地にある学校に生徒が集中しているようです。

学校間格差、と一口に言いますが、これは学校の全ての面に及んでいると言っても過言ではありません。授業のレベル、質、そして学校の雰囲気全て。私が中学生だった頃も存在していましたが、最近はそれが更にひどくなっている感もあります。荒れている地域の学校では、校庭だけではなく、校舎内の廊下に自転車やバイクで乗り入れる(!!)在校生や卒業生がいるなど、まるで一昔前のドラマのワンシーンが「日常茶飯事」だと聞きます。一方で、落ち着いていて、勉強に集中できる学校もあり、同じ公立中学なのに、雲泥の差が起きているのです。

新聞記事

このような違いを生んでいるのは、一言で言えば、「親の職業と価値観」です。保護者の職業、学歴などが一定のレベル以上の地区では、子供にもレベルの高い教育をさせたい、と思う方が多いので、教育費への投資が多く、結果的に子供の学力や勉強への熱意を高めています。

首都圏の場合、そういった保護者がたまたま荒れている公立中学の学区に住んでいたりすると、早くから私立中学の受験を意識して子どもの塾通いも始めさせます。こういった子は、ほぼ全員私立中学に進学しますので、結局荒れている中学校には上位層の学力の子どもがごっそり抜けた、中間層以下の子どもが多く進学することになります。こうなるとリーダーシップをとる子がいなかったり、学校全体に気力のない雰囲気が蔓延してしまいがちになります。

また、荒れている中学校では、保護者が既に教育への投資をあきらめてしまっていたり、この先いくらかかるかわからないことに投資するのが面倒で、ブランド品のバッグなどを買い、結果として進路を決める三者面談で「我が家にはお金がありません、公立高校に行かせるのがやっとで、それ以降の進路のお金は払えません」と言う話もあるようです。

学校間格差は、子供の進路に確実に影響を及ぼします。今の成績評価は「絶対評価」。つまり、全員ががんばっていれば、学年全員に5をつけるのも理論上は可能です。このような評価方式では、私の個人的主観ですが、(特に受験学年の場合)公立中学では、成績や素行に大きな問題がなければ、3以上がついているようです。でも、雰囲気の悪い学校で暴れまわっていた子供や、素行の悪い子供は、2以下(つまり、2と1)しかつかないようです。

中3の2学期までの成績が受験に反映されるのですが、現在は公・私立とも、一定レベル以上の学校では、評定に2があると入学できません。となると、荒れている中学からは、公・私立とも、中間以下の高校にしか進めなくなり、進学した高校では似た者同士が集まるので更に無気力状態が強まり、卒業後はニートやフリーターという道が主流になっているのではないでしょうか。これはデフレスパイラルならぬ「人生の悪循環スパイラル」です。

昨年、神奈川県の公立中学校での評定の学校間格差が問題視されました。この数字からは、同じ市内でも荒れている中学と、そうでない中学とでは、5の人数に大きな差が生まれていることを示していました。つまり、親の意識の違いが子供の勉強への姿勢の差を生み、それが進路の差にまで及び、その後の人生設計への差まで生み出しつつあるのではないでしょうか。

このような状況が一層進めば、一定以上の層の家庭の子どもしか高いレベルの教育を受けられなくなり、日本社会の階層格差が進んでしまいます。子どもにとっては、生まれながらにしてある程度人生が見えてしまう、ということにもなりかねず、決して良いことではありません。このような状況を私は非常に危惧しています。

でも、奨学金も数多くある現在の社会ですし、たとえ家庭環境が恵まれなくても、意欲さえあれば本人の希望を叶えてやるのが大事なことです。また、子ども本人に働きかけるだけではなく、保護者にも「勉強して、一定の成績を修めることで、子どもの未来への道が開けます。勉強してよい大学に入れば人生安泰、という時代ではありませんが、基礎的な学力がなければ、子どもは進路を選ぶこともできず、明るい未来は決して訪れません」と、繰り返し、多くの者が説いて、気づきのきっかけを生むことが大事なのではないでしょうか。ですので、こういったことは、小学生段階から説いても遅くない、私はそう考えています。

子どもを取り巻く、一人でも多くの大人が、「お金がないからって勉強を諦めなくても、勉強できる方法があるよ」と声をかけていき、子どもの才能の芽を摘まない社会にしたいものです。

2005.6.12 掲載

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